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永遠に繋がる愛と呪い  作者: ゆゆゆのゆ
3/3

なまえ

ふと公園の時計を見るともう18時だった。

そろそろ帰らないと親に怒られてしまいそうだ。

ああ、帰りたくない。


「それじゃあ、私はもう帰るね。

 また明日。」

「ええ、また明日。」


___


「...咲、か。」

___




気がつけばもう家のドアの前で気が重くなった。

ドアを開ける。すると毎度母が玄関に立っている。

鍵を開ける音で分かるのだろう。


「ただいま、お母さん」

「おかえり。今日も学校でお勉強していたの?」

「うん、そうだよ。学校だと捗るんだ」

「そう、その調子で頑張るのよ。信じてるからね」

「...うん」


またこれだ。

信じてるからね。期待してるからね。あなたにならできるから。

呪いの言葉のように感じる。母からの大きすぎる期待と、期待を裏切るなと言っているような眼差し。


「なんだ、またそんな事言っているのか。」

「ただいま。お父さん」

「あなた...。またってなによ」


階段から降りてきたのは父。

父は母とは違くあんなことは言わない。

学生のうちは思い切り遊んで思い出を作れという。

母とはあまりにも逆なので、何故2人が結婚できたのかが謎だ。どこか惹かれるところがあったのだろうか。


「とにかく、夕飯が冷めちゃうから食べましょう」

「うん、そうだね」

「...あまり溜め込むなよ、咲」

「溜め込むだなんてそんな事しないよ。」

「そうか。ならいいんだが。」


呪いのような言葉を吐いてくる母でも、

母の作るご飯はいつも優しく美味しかった。


_それから数週間。

私は放課後毎日、土日はたまにあの公園へ行っていた。そしてあの幽霊と他愛のない会話をしていた。

幽霊との話は結構楽しかったし、彼女もよく話すようになった。

例えば、あのスーパーにいる霊は実は殺されてしまったんだとか、あそこにいる霊は憎い相手を探して呪殺する気なんだとか、物騒な内容ではあるが中々面白かった。

何度も会話はしているけど、自分の話をする気は全くないようだった。


「幽霊も大変なんだね。死んでるから楽なんだとばかり思ってた。」

「死んでるからこそ辛いこともあるのよ。」

「ふーん。...ねぇ、そういえばさ」

「なぁに?」

「名前、思い出した?」


まだこの幽霊から名前を教えてもらっていなく、彼女のことは 君 と、二人称で読んでいたのだ。


「...まだ思い出せないの。ごめんなさいね」

「別に謝らなくていいよ。で、なんて呼べばいいの?」

「そうねぇ.....」


手を顎に当て、考える素振りを見せる。

改めて顔を見る。彼女は本当に人間のようで、綺麗な顔立ちだった。長めの横髪に、長い髪を赤い紐のようなもので高く1つ結びをしている。幽霊でも、首筋も綺麗だ。

よく考えてみると、最初の頃のようなドス黒さと醜さはすっかり消えていたし初めの頃より表情も柔らかくなってきている。理由は分からない。

幽霊とは、不思議なものだ。


「...思いつかないわ。咲、決めてくれる?」

「そんなに考えて結局...。うーん」


なんと呼ぼうか。

幽霊だからゆうちゃん?いや見た目に合わない。

ちゃん無しで ゆう ?いや、なんだかyouと呼んでいるみたいで嫌だ。

人の名前や呼び名を考えるのはどうも苦手だ。

彼女の容姿から考えよう。彼女はとても綺麗だ。

綺麗な黒の艶髪、光の宿っていない黒い瞳。来ている制服も黒。

大体8割黒系だけれど、白い肌がいい感じに映える。

死んでるから肌白いのだろうか。

そうだ、それなら_。


「...ゆき。」

「...ゆき?いい呼び名だけれど、どうして?髪も制服も黒色よ?」

「うん、だからだよ」

「???」


そう言うとゆきは 訳が分からない という顔をして、頭にハテナを浮かべていた。


「黒い綺麗な髪で、制服も黒色。黒づくしだけど、その白い肌がいい感じに映えてるからね。雪みたいに綺麗な白い肌だから、ゆき。」

「......素敵ね。私には勿体ないくらいに素敵。嬉しいわ。」

「そんなに喜んでくれるとは思わなかったけど良かったよ」

「なんだか、前にもそんなようなことを言ってくれた人がいた気がする。」


「ふーん。そんなことあるんだね。なんかすごい」

「ふふ、そうね。」


ゆきは悲しそうな、嬉しそうな顔でそう言った。

その相手はずっと言っている大事な人なのだろうか。

時計を見るともう18時。

楽しい時間ももう終わりだ。また明日来よう。


「もう帰るね。また明日」

「...まって!」


いつも通り帰ろうとすると裾を捕まれて、待ったをかけられた。


「なに?どうかした?」

「......その、ダメ元ではあるんだけれどね、その..」

「うん、なに?」

「...ずっと咲についていちゃ、ダメかしら?」

「それって、ずっと私と一緒にってこと?」

「そう、ダメかしら」


まさかこんなことを頼まれるとは。

よく考えよう。

ゆきといるのも話すのも楽しい。けれど他の人には見えないし私にしか見えない。しかもゆきは結構ヤバい系の幽霊だった。というかついていちゃとはどういう意味なんだろうか。憑くなの?わからない。


_数分後


「...ねえ、ダメならダメって言っていいのよ?」

「決めた。ついてても良いよ。」

「っ!!本当?嬉しいわ...ありがとう」

「でも条件がある」

「条件?」

「そう、条件。」


ゆきは一応ヤバい系幽霊だ。

だから他の人へ危害があるかもしれないしなにか悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。

平和にするための条件である。



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