表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/56

ざまぁみろ


「あのな、アドルファス」


 本日、何度目かの頭痛をこらえながら、ルードヴィヒ王弟殿下が口を開く。


「君、ほんとに気をつけなさいよ。さっきも注意したけれど、物事は伝え方が重要だからね!」


「お言葉ですが、叔父上――『目は口ほどにものを言う』――あれですよ」


「何が『あれ』なんだ」


「僕の目を見てもらえれば、ディーナに対する好意は明白でしょう? 上辺の言葉なんて、さして意味を持たない」


「え……なんなの君、羞恥心は持ってないの? 元々ないの? それともどこかでなくしたの? どっち? 小さい時から勉強させすぎて、情緒がおかしくなっちゃったのかな」


 ふたりがやり取りしているのを聞き、私は照れて顔が熱くなってきた。


 ええ、本当に……アドルファス王太子殿下って羞恥心がないのかしら?


 チラリと彼を見ると、アドルファス王太子殿下は端正な顔で考え込んでいる。


「情緒は正常だと思いますよ。だってディーナと一緒にいると、ちゃんと心が揺れますし。そうだ……僕はディーナの話し方も好きだな。テンポが合う気がする」


「あ、ああ、うん……」


「この短時間で、彼女に対する好意は、叔父上に対する好意を超えました」


 話のついで、みたいな感じで、アドルファス王太子殿下がとんでもないことを言い出した。


 ルードヴィヒ王弟殿下がぎょっとして、


「え、嘘だろう?」


 素っ頓狂な声を出した。驚きすぎて、若干前のめりになっている。


「待て待て待て――君と私、何年の付き合いだい? このたった数時間で、私はディーナさんに負けたっていうの?」


「ええ、残念ながら」


「ひどくないか?」


「ひどくないです――妬かない、妬かない」


「いや、絶対ひどいよ。いくらなんでも薄情すぎる」


「ごめんなさい……もうあなたは過去の人です」


 聞いていた私は『確かにひどいな』と思った。なんだかルードヴィヒ王弟殿下が可哀想になってきた。


 アドルファス王太子殿下が美しい顔をこちらに向ける。


「それでディーナはどう?」


「え? どうって……」


「僕への愛情が、家族への愛情を超えた?」


 ええ? 私は呆気に取られた。


 呆気に取られ……そして正直に答えた。


「あの、いえ……まだ父母と弟のほうが好きですね」


 ガーン――……ショックを受けた様子で固まるアドルファス王太子殿下。


 それを見て、父ご乱心。


「当たり前だろ! たった数時間で、なんで私に勝てると思ったんだ、図々しすぎるだろ」


「お、お父様、言葉遣い」


「ざまぁみろ」


「お、お父様!」


 それは言っちゃだめ!


 ブフゥ……! 盛大に吹き出す音がして、見たら秘書のユリアが円卓に突っ伏し、なぜか悶絶している。


 泣き上戸じょうごで、笑い上戸なのだろうか……と私は思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この前の会話はいいと思うんですけど この回の会話はお父様の前でしちゃダメじゃんw あそこで終わってればお父様の印象がプラスで終われたかもしれないのに。
[一言] ユリアさんは何も悪くないと思います! こんな幸せ空間そうそうお目にかかれないと思うので、反応した者勝ちだと思うw
[良い点] ユリアさんもお父様もめっちゃ好きw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ