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魔法

本部地下にて

「奴らは何者なんだ……、姫、心当たりは?」

「わからないわ、高位の魔法使いであるとしか」

 サザンカが本部に残り、アイリスが情報収集に出ていた。

「戦争、と言っていたな」

 と、ボスが地下から戻ってきた。

「ボス」

「お疲れさま、現状を報告してきたよ」

「それで、警察はなんて?」

「警戒を強化する、と」

「それだけですか?」

 と姫が不満げに言う。

「現状、動けるだけの証拠も何もないからな」

「まぁ、気を揉んでいたところでどうにもならんさ」

 とボスが続けて言った

「頼りにしているよ、奏、咲姫」

「はい、ボス」

 二人の声が重なった。


 今できる事、それは備える事だけだ、なら

「姫、僕に魔法を教えてよ。もっと強くならなくちゃ」

 今は魔装を扱うための魔法しか使えない。

「いいわよ、ふふっ、奏と勉強なんて久しぶりね」

「よろしくね、先生」

 姫に笑顔が戻った、今はそれだけでいい。

「それじゃあ、うちの工房にいきましょうか」

「じゃあ車を出してくるよ」

 二人で軽いドライブの後、姫の家に到着した。

 先に工房に通されて待っていると姫が注射器を持ってきた。

「それじゃあ、今日やる事を説明するわね」

 そういうとテーブルにスクロールを広げた。

「まずこのスクロールに魔法陣を描いてそこに術式を乗せるの」

「魔法陣の形は思った通りに描いてくれればいいわ、はい」

 と羽ペンを渡される。

 ペンを受け取った僕は丸を基調に魔法陣を描いていく。

「次に術式ね、私が描いたものを書き写してくれればいいわ」

 そういうと紙にサラサラと術式を描いていく。

 それをマネしてスクロールに描いていく。

「この術式は風属性魔法の術式よ、使い勝手が良くて目立たないから慣れれば一番使う魔法ね」

「風属性か、確かに便利そうだ」

 

「スクロールの次はこれね」

 姫が小さな宝石のついた指輪と注射器を取り出して続けて言う。

「この注射器でこれから奏の血を採取してスクロールに沁み込ませるの」

「魔法において血は命を象徴するの、血と魔法陣を使って昔で言う杖と呪文の代わりになるの」

 と姫が説明してくれる。

「なるほどね、この指輪は?」

 疑問を投げかける。

「宝石には魔力が宿っているの」

 続けて姫が言う。

「このスクロールを指輪に封じ込めることでもっと簡単に魔法を使えるようにするのよ」

「それじゃあ、血を抜くわね」

 慣れた手つきで姫が僕の腕から血を抜いていく。

 そしてスクロールの上に指輪を置き、スクロールに血を染み込ませていく。

 パチン、と姫が指をはじくとスクロールに火がつき勢いよく燃え尽きた。

「これでこの指輪に風属性魔法が封じ込められたわ、今と同じ手順でもうひとつ、今度は空間転移魔法を応用したものね」

「次の魔法は物を仕舞ったり取り出したり出来る便利な魔法よ、こんなふうに」

 といった姫が手をかざした所に魔法陣が展開され、中から銃を取り出した。

 バスッバスッっと模擬弾を壁に撃ちマガジンが空になる。

 マガジンを抜き、展開させた魔法陣にグリップを打ち付ける。

 一瞬のうちにリロードを完了させる。

「こんなふうに武器をしまったり予備の弾丸を補充するのに便利よ」

 姫が銃を魔法陣に仕舞いながら説明してくれた。

「ははっ、確かにこれは便利そうだ」

 少し圧倒されながら笑う。

 そして二枚目のスクロールも描き終える。

 一枚目と同じように姫がスクロールを燃やし、指輪に封じ込める。

「指輪のサイズ調整できるけど、どの指にする?」

 と姫の質問に対し少し笑いながら答える。

「姫が選んでくれるかな?」

 といたずらっぽく両手を差し出す。

「そうね」

 姫が僕の手を取りながら少し考えこむ。

【アジャスト】

 右手の小指と中指に小さな宝石のついた指輪が輝いている。

「小指も中指もお守りの力があるのよ」

 姫が凛と言う。

「それに」

 姫が左手の薬指を取りながら言う。

「ここは大事な時に大切な言葉と一緒に付けるものよ」

「ははっ、参ったね」

 指輪がはめられた右手を眺める。

「ありがとう、姫。うん、守られてる感じがするよ」

「ふふっ、それじゃこの後は実践訓練しましょうか」

「最初の内は指輪を意識して使うと安定するわよ」

 そうして魔法の練習をしながら二人の時間を過ごした。









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