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超えても超えても

作者: クロ

この小説を開いてくださってありがとうございます。

趣味程度に書いてます。

よろしくお願いします。

生きたくても生きられない人がいる


神様は越えられる人にだけ壁を与える


がんばれ


負けるな


努力希望未来


こんな言葉が私は大嫌いだった。


死んだように毎日を生きる独身アラサーOLのお話。



コツコツコツ


2月の静かな夜の道に鈴のヒールの音が響く。

脚が痛い。東京はまだまだ凍えるほど寒く、帰宅を急いでいた。

早く家につかないかな。

しかし脚が痛い。このヒールのせいだ。

鈴「こんなのなんの意味があって履くんだろ。」

人なんてほとんど通らない、いつもの帰り道。鈴のぼやきは夜空に消えていった。


ガチャ


鈴「ただいまー」


まあ誰もいないのだけど。

帰宅すると真っ先に服を脱ぎジャージに着替える。


鈴「はぁー。疲れたな…。」


鈴28歳独身

好きなことは酒を飲むことだけ。


プシュッ!

帰宅早々1本目のビールを開ける。


鈴「あーー。美味しい。酒は私を裏切らない。」


同年代の女性はジムに通ったり、半身浴したり、彼氏とデートしたりしてるのだろうか。


私には無縁だなーー。

なんてことを思いながら見てもいないテレビの音をなんとなく聞いていた。


鈴「んーーー」


気づいたら寝ていたみたいだ。

時刻は午前5時。

鈴「あーー、お風呂入らなきゃ」


7時には仕事に向かわなくてはいけない。テーブルの上の空き缶を見るとなんだか虚しい気持ちになるが、とぼとぼシャワーに向かう。


シャワーを終え部屋に戻るとLINEが1件。

鈴「滅多に人から連絡なんか来ないのに」


母親からだ。


母「久しぶり。変わりないですか??」


たまに心配してLINEをくれる。嬉しいのだが、今更どんな会話をしたらいいのかわからない。


鈴「大丈夫だよ。ありがとう、仕事に行ってきます。」


我ながらなんて可愛げのない娘なんだろう。


母親にLINEを返し、朝のお薬を飲み仕事へ向かう。


駅に近づくと電車の音、踏切の音、改札を抜けるSuicaの音、急ぎ足で歩く人達。

心臓がバクバクしてきた、呼吸も少し荒くなる。

大丈夫。大丈夫。

自分に言い聞かせる。


職場は家の最寄り駅から1駅先にある。いざとなったらタクシーでも行ける。それだけの理由で決めたようなもの。

とにかく電車が苦手だ。


鈴「あーーー…しんどい。」


1駅先、そして車内も超満員というわけではない。

しかしこの毎朝の5分ちょいの時間が本当に辛いのだ。


ため息をつきながら会社へと向かう。

途中コンビニで昼食の調達をする。

おにぎり2つとホット烏龍茶。


ガチャッ


鈴「おはようございます。」


まばらに挨拶が返ってくる。

「おはようございますー」

「おはよー」

「おはようございまーす」


仲がいいわけでも悪いわけでもない。

他人に興味が持てない。


鈴「早く帰りたい…。」


キンコンカンコーン


始業のチャイムが鳴る。

朝礼を終え自分のデスクにつき作業に取り掛かる。


入社して1年。元々仕事はできる方である。

というか1人でやれるので話しかけないでくれ。

という気持ちで働いている。


キンコンカンコーン


鈴「ふぅ…ねっむい」


お昼休み。

おにぎりを5分で食べ終えネットサーフィンをし、15分間昼寝をする。

それが鈴のお昼休みのルーティン。


早く帰りたい…。

キーボードを叩く音、ファックスが流れてくる音、周りの話し声。

全てが不快だ。

私の世界に早く帰りたい…。


鈴は1人拳をぎゅっと握った。


鈴「お先に失礼しまーす。」


退勤する時は少し元気になる。

当たり前だ、この地獄から抜け出せるのだから。


さっさと帰って酒を飲もう。


ぶーぶーぶー


ぶーぶーぶー


鈴「ん?」


スマホが鳴っている。


誰だよもう…。


鈴「!!」


母親だ。珍しい。なにかあったのかな。


鈴「もしもし??」


会社から出つつ電話に出る。


母「あっ鈴ー??元気?どうしてるのかと思って」


鈴「LINE返したでしょ。元気だよ。」


またこんな返事しかできない。


母「まあそうだけど…今度久々にご飯でも食べに行かない??」


鈴「えっ…!ご飯ってなに食べんの。」


母「なんでもいいわよ。鈴の好きな物。」


鈴「うーーん。また連絡する。仕事帰りだからまたね。」


電話を切る。

動揺していた。母から食事の誘いがあるとは。

あんなに酷いこと言ったのにな…。。。


3年前


鈴「なんで私なんか産んだんだよ!!!!ざけんじゃねえよ!!!!」


母「ごめんね…ごめんね」


がしゃん!

がしゃん!


鈴の怒鳴り声と窓ガラス、食器が割れる音が響く。


母親は泣いていた。

父親は気づいたらどこかに行っていた。

残ったのは母と私だけ。


こんな事が言いたいんじゃない。

助けてほしい、少しでもわかってほしい。

うまく言葉にできなかった。


女手1つで育ててくれた母。

「いい大学に入りなさい」

「きちんと勉強しなさい」

「どうしてできないの??」

「〇〇ちゃんはもうできるのに」


母がよく私に言った言葉。もう限界だった。


この頃からだろうか。

眠れなくなった。主治医に言われたのは

「うつ病ですね」の一言。

後々発達障害を持って産まれたこともわかった。


今更食事って言われてもな…。


鈴「なんなんだよ…。。」


なんで心配なんかするんだよ。


どうしたらいいかわからなかった。


とりあえず酒を買い家に帰ることにした。


ガチャ


「ただいま。」


いつも通り誰もいない。


いつも通りジャージに着替え酒を空ける。
























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