とある青年ととある家族—その②
「お久しぶりで御座います、ソウル様」
「急で悪い。学校の寮合宿で服を何着か見繕いたいんだ。後ろに居る彼女と一緒に」
「お願いします」
ある日、父さんの知り合いのお孫さんが経営している衣類店に足を運んで来た。
この人たちは元は奴隷商で父さんみたいな精霊魔導皇が来るまで保護目的でこっそりと部下を使って活動してたんだとか。
今では貴族御用達の衣服を扱う店に来た。
「レディ、ルツェル。こちらのお客様が気に入った衣類を幾つか手取りでやってくれ」
「畏まりました。オーナー」
「それじゃ。いくつか見て来るね」
「あぁ、行ってらっしゃい」
女性陣がその場を捌けると―――
「それで・・・あのご令嬢が噂の?」
「あぁ、本人から聞いた所―――ご両親が事故で亡くなったみたいでね。頼れる親戚が居ない時にこの世界に来たらしい」
話をしながら色んな服を物色する。
「成程・・・あぁ、そうだ。リンド様方々の三名用に頼まれた衣類があるんで持って行って貰っても宜しいですかな?」
「あぁ、良いよ」
決めた服を数着程手に取り、義姉さん達の分の予約されていた衣類を含めて父さんから貰ったお金を渡す。
「あっ、後・・・シヴァ様が『ソウル(様)が来た時に出来上がったヤツを渡しとけ』と・・・これをどうぞ」
「フルメタルカード?」
超合金メタルと幾つかの世界一堅い鉱石を幾つか合わせて出来上がったのがフルメタルカード。
俺はそれを受け取り、専用のカード入れ紐付きポーチに仕舞って首に掛けた。
「来週辺りお誕生日でしょう?前祝いとして差し上げます」
「マジか・・・ありがとう」
すると―――女性用コーナーから女性店員さんとシオリさんが戻って来た。
「すっごいどれも品質高かったんだけど、あれ一体どんな魔物から採取したの?」
「あー、そう言えば言って無かったっけか・・・ウチに居るメイドのシエルと従者のトールから抜け落ちた毛が結構ごっそりあってね。それを提供したらマダムらに人気の衣類になったんだよ~、後、グリモの羽から出来た羽ペンとか」
「そうなの?!」
実は・・・自宅の地下保冷倉庫にまだいくつか大量の毛が置いてある。
一度この店に仕入れておかないと
「彼女達から抜け落ちた毛はちょっとした耐性や属性の付与が備わっててね。防寒着にも役に立つ一着なんだ」
「へぇ~・・・だから金貨50枚なんだ」
話をしながら会計を済ませて店を出る。
「またのご来店を!」
「お待ちしております!」
「あぁ、またね」
因みに学園の寮合宿では主に部活動毎に部屋分けされている特別な屋敷がある。
俺の場合―――
「よっ、どんなの買った?」
「いつもの店だよ」
「シオリさんの衣服どれも可愛い~♥」
「でしょ~♥」
因みにディーノの隣に居る子はミッシェル=レイド、ディーノの彼女である。
母親が元魔王で父親がハイエルフになったばかりの現公王。
実は母親より胸が大きいらしい。
「ミッシェルちゃんのは・・・際どくない?」
「そうかな?私のはスタイルは母親譲りなのよ。だから胸囲が大きめの服しか無くてさ~」
二人の会話でディーノと余所を向く。
「お前まさか――――」
「至って健全だよ。俺を何だと思ってんだお前は・・・」
話の途中で―――――後ろに下がる。
「~~~~ウルゥ~~ァァァァァアアアッ?!」
抱き付こうとして来たコタツ姉さんからいいタイミングで避けれた。
「も~、姉さん合宿なんだから落ち着いてよ~」
「そうですよ、先生」
後から小走りでリンド姉さんと先輩が来て壁に衝突したコタツ姉さんを回収する。
「リンド姉さん、この後何か集会かなんかある?」
「ないよ~」
「・・・そう言えば、今更気付いたんだがよ。この屋敷って元は学園長達の屋敷じゃ・・・?」
そう、ディーノが言った通り――――姉さん達が自分達の為に広い宿舎を買い取って住み着いている。
因みにリンド姉さんは仕事の都合上、後から合流予定になっている。
「普通、母さんが言ってたログハウスかテントとかでキャンプとかを想像したんだけど・・・」
「あ、それ秋にやろうって職員会議で話しに出たわよ」
「あら、そーなの?コタツ姉さん」
あらっ、意外と話は出てるのな?
「・・・あぁ、そうそう。姉さん達暫くお酒禁止ね」
「「何でッ?!」」
ストレスの捌け口対策として酒類全てメイド達が来て掻っ攫って行ったからである。
因みに三人にはその時は知らせてない。
今回の話はここまで。
当作品以外の四作品もお勧めです。
是非ご覧ください