37 後日談 山田さんの場合
――大学の学食から離れ、アタシは帰路についていた。
今日は二コマで終わりだったので、大村とお昼ご飯を食べて、今はその帰り。
わざわざまずい学食で食べる必要はないのだけれど、まぁそれはそれ。
アタシは静かな住宅地をてくてくと歩く。
昼間の住宅地は通行人も少なく、遠くから子供の笑い声が聞こえた。
歩いていると、手にぶら下げた袋が揺れる。
気になって、アタシはそれを覗き込んだ。
品の良い袋に入っている、可愛らしいハンドタオルとハンドクリーム。
無駄にならない、いいチョイスのプレゼントだ。
大村ひとりなら、きっとこれは選べなかったんじゃないかと思う。
彼といっしょにいた、幼馴染のおかげだ。
デート中に、ほかの女の話をしないほうがいい、というのは、いくら何でもわかっているはずなのに。
自分ひとりでは女が喜ぶものを選べない、ということもわかっていたんだろう。
だから、幼馴染に頼った。
自分の心証よりも優先して。
その不器用な姿勢と、自分より人を優先してしまうお人好しなところ。
大村って感じがした。
あぁ。
……あぁ。
思わず、息を吐く。
その息さえも、熱い。
ハンドタオルを取り出して、ぎゅうっと握ってしまう。
これも彼が選んだのだろうか。
アタシが好きそうな柄を、一生懸命選んでくれたのだろうか。
思わず、その場にしゃがみこむ。
アタシはキャップを深くかぶり、タオルを顔に押し付け、真っ赤になった頬を周りから隠した。
さっきからずっと――ずっと。
心臓が高鳴るのを抑えられない。
「あぁもう――、これ以上、好きにさせんなよ、ばか」




