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蠢き

内戦から解放戦争へと発展したブリテイン合衆国ジャパン州。

参加戦力は互いに拮抗し、東西戦争の火薬庫となってしまった扶桑は如何に

ついに緑の悪魔、、あの組織の全貌に迫る…

内戦が始まり戦雲が再び国を覆い隠す時代が到来した。ブリテイン侵略主義から解放せんと蹶起したパルチザン連合と同盟国の奮闘は凄まじく、すでに池野地区・歌舞伎地区・西歌舞伎地区・上袋地区が解放人民区域になっていた。

とりわけ赤色軍の計画性がある電撃戦はブリテイン軍や治安警察隊の脅威になっていた。


「負傷者救護急げぇ!」

「衛生班はまだか!」

ブリテイン軍は厳しい境地に立たされていた。

ロシア共和国や朝鮮人民共和国、中華民主主義人民共和国の蜂起により東アジアでの軍備配置が偏ってしまいパルチザン連合の戦力と拮抗できる手段がないのである。

唯一の望みである輸送船や空輸も中華人民軍海軍とロシア航空宇宙軍により遮断され、ジャパン州は完全に孤島と化していた。



しかし反動勢力がパルチザン連合の中で最も恐れていたのは単純に戦力が高い赤色軍ではない。人民解放戦線である。

ブリテイン総督ケイディと治安警察公安隊上層部に入った極秘情報にはこう書き記されていた。


「人民ニハ多分ニ武力ヲ行使シアジトヲ襲撃センコト、コレヲ第一目標トス」


人民解放戦線があたかもロシア共和国などの東側大国より重要敵視されているような書き方である。

ただ、実際に彼ら人民解放戦線は然るべき大軍事力増幅計画を実行していた




ー観音崎ー


現ブリテインジャパン州アジア方面海軍基地がある横須賀から少し太平洋に突出した岬、観音崎。横須賀が旧帝海軍基地があった場所に対し観音崎は陸軍が管理していた要塞基地であった。

今も当時のまま生々しい剥き出しのコンクリート戦争遺跡がある場所である。

そこにある地下へ続く一つのトンネルは心霊スポットとして有名であった。

「あそこへいくと黒い影に追われる」

「トンネルに入って出てきた者はいない」

「トンネルから叫び声が聞こえる」

これらの噂が飛び交い、いつしか夜な夜な若者が肝試しに来るようになったのだ。

しかしこの場所は現在治安警察により閉鎖されている。

とある事件が続出したからだ。行方不明事件である。

心霊スポット巡りに行った若者が帰ってこない。一カ月後変わり果てた姿で東京湾沖に浮いている。という事件が毎週のように起こった。

事態の掌握と解明に行った治安警察隊までもが同じ有様に見舞われる始末。ついに治安警察隊本庁のエリートが特別捜査班を組み、数日トンネルと出入り口を隈なく調べたが、


”その日には″何も起きなかった。

起きたのは一週間後からだ。


捜査班メンバーが1人残らず抹消されたのだ。大抵が行方不明で死体さえ上がっていない。

これを受け、ブリテイン総督府も尽力し、観音崎全力捜査を治安警察本庁機動特殊戦闘隊と共に敢行したが、全く手掛かりは掴めなかった。

それもそのはずである。ここは言わずもがな旧帝陸軍の要塞だ。地下塹壕はアリの巣のように張り巡らされており、地下トンネルはその一つにすぎない。

周辺は藪が酷く生い茂り、ヒルやハチなどの害虫被害も多発した。捜査班はやむなく引き返すことになった。


捜査班が引き返した翌日、一台のベンツが藪道をかき分けるようにトンネル前へ停車した。

降りてきたのは黒服の集団である。黒スーツ、黒ネクタイ、靴はブーツだ。青年か壮年の中、1人だけ少年がいた。

否、美少年のように顔立ちは良く、しかし振る舞いは頭領であった。

少年が手を上げて握り拳を作る。トンネル左藪、右藪、上からライトがピカピカと点滅しあたりは再び闇に飲まれた。

ライトの点滅を機に少年はトンネルへと入っていく、黒服も付随して入って行った。


カツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツン


コンクリートのトンネルにブーツの音が響き渡る。


カツンカツンカツンカツンカツンコツコツ


しばらく歩くとトンネル奥に突き当たった。少年は右壁に手をつくと、1人の黒服はトンネル奥に、もう1人は左壁に手をつける。


ピピッ


コンクリート製のトンネルに似つかわしくない電子音が鳴り渡りトンネル奥右側がゆっくりと地面に埋まっていく


ズズズ、、ズズ


ズン


トンネル奥右側は扉になり少年は何の驚きもなく入っていく。黒服の男はトンネル天井の一点を見つめてから入っていく。

扉の奥は蛍光灯が付いており壁も白く塗装され、通路には扉が多数あり、まるで病院施設のようだった。


カツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツン


少年1人と黒服が何人も並んで歩く姿はあまりに非日常を超しているがゆえに逆に自然な様相を呈していた。さながら医者団の院内行列である。


足音しかないシンとした空気を少年が切り裂く。


少年「H-145マルタの分析は終わったか」


黒服「終わりました。現在S-111の第一濾過作業を終えたところであります」


少年「カルテを見せよ」


少年が鋭い眼光で黒服を見つめる。

黒服がそそくさと「T141」と書かれた扉を開けるとホルマリンの臭いがあたりを充満する。人間のような″肉塊″の横のカルテを引っ張り出し、少年に渡す。


少年はカルテを見つめ


「うん、やり直しだ。神経麻痺の速度伝達が遅い、これでは動かれてしまう。さらに即効性に作り直す必要があろう」


そう言い放つと黒服は敬礼し、足早に別扉口へと向かって行った。


別の黒服が少年に言う


「ジーク様、遅効性の方がより苦しむ姿を見ることができますよ」


ジークと呼ばれた少年は黒服をキッと睨みつけ


「作戦と嗜好は別だ」


と言うと奥の「第一生態室」と書かれた場所に入って行った。

中では″マルタ″の解剖、分析が行われていた。


「ぐうぅうぅうぅうぅ」


″マルタ″が悲鳴をあげた。


解剖していた防護服、ガスマスクの物々しい連中はジークに対し


「ご実験なさいますか」


と問う


ジークは″マルタ″を見下ろし


「ああ、では早速S-622ペスターを頼む」


そう言うと、ジークはマスクと防護服を身につけ″マルタ″にメスを入れ、小型瓶に厳重保存されていた「細菌」を塗る


「んんん、ー ーん、あぎぎぎぎぎ」


″マルタ″は声にならない鳴き声を発し気絶した。


ジークは辺りの「部下」に


「H183の発症時間と致死時間を計測しろ。発症時間が24時間未満なら作り直す。理想は50時間後だ」


「致死時間は発症してから医療隊に治療を尽くさせて計算せよ、仮に治ったら医療隊の名誉になる。貴殿ら生研隊の健闘を祈る」


そう言い終わると扉に向かう。

ふと振り返り気を失う″マルタ″に対し


「治安警察エリートが今やモルモットか」


と一瞥しジークは去って行った。


医療隊に負けたくないと奮迅する生物研究第一解剖隊は手に汗握る細菌兵器研究作業を再開するのだった。


ジークは右側からB2へ大理石の階段を降りていく。階段正面は第二解剖室があり、右手には「B2会議室」と書かれた場所があった。

ジークがB2会議室のドアを開けると「戦略会議」が開かれていた。

観音崎は紛れもなく人民解放戦線の前哨基地であり、戦略会議ではロシア共和国との通信戦線とヨハンのパルチザン連合統一軍についてが議題に上がっていたのであった…

ありがとうございました!

長く着手できていませんでしたが、ようやく続編がかけました。

次回も出しますので読んでくだされば幸いです!

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