水面
内戦開始から1週間、、快進撃を続ける決死隊の裏には人民解放戦線の影
遂に大国が動き出す
歴史の転換点となる火薬庫に火がつく瞬間であった
ブリテイン合衆国ジャパン州での内戦が始まり、1週間が経過していた
革命派闘争委員会議長三上はパルチザン連合を裏切り、池野の暴力団吉住組と密約を交わし、決死隊を迎え撃つ作戦であったが、決死隊の戦力を甘く観ていた三上派と吉住組は敗退していた。
そんな中、彼は池野のバーを出た瞬間、突如訪れたゲリラに拉致され、牢獄で拷問を受けていたのだった。
そのゲリラの正体こそパルチザン連合の幹部組織一角「人民解放戦線」である。
三上の顔に生気は無く、爪は全て剥がされていた。
地下牢の鍵が開く
入ってきたのは人民解放戦線指導者ジークと側近部下三人である
人民解放戦線の幹部はジーク親衛隊と呼ばれ主に、諜報、拷問、粛正を統括するリーダー格である
幹部の一人、ハイドリヒが三上に水をかける
無表情、機械のような抑揚の無い声でジークが切り出す
ジーク「そろそろ吐いたらいかがかな、三上君。すでに君の味方はこの世にいないのだから、構う必要あるまい」
三上「、、、、」
ジーク「一つ君にとって重大な情報をやろう」
ジークはそう言いながら手で部下にジェスチャーをする
部下が連れてきたのは口にガムテープ、手足に錠が付けられた女性であった。
その途端、三上の顔は一変し青ざめ、冷や汗をかきながら目を見開く
三上「な、、佳子!!まさか、、やめろォ!!」
ジーク「ふむ、君達が家族なのは本当のようだ。では話す気になったかな?」
ジークは微笑みながら目を細め、三上を睨みつけながら続ける
ジーク「質問を繰り返す。革命派闘争委員会の謀反者は他に誰がいる。二つ目、吉住邦夫はどこにいる」
三上は眼から涙が落ち、椅子に縛られた手を固く握りしめ
三上「うぐゥ、、、せ、戦闘に参加した奴が全てだ!組長は知らない!本当に知らないんだ!!許してくれェッ!!!」
ジークは側近に対し
「あとは任せたぞ、思う存分楽しめ。Sieg Heil」
と言い残し、地下牢から姿を消した
残ったジーク親衛隊三人は三上の親族である佳子を反対側にある地下牢に投げ捨てる。三上はその瞬間ハイドリヒに猿轡をはめられ、叫ぶことすら叶わなかった
側近幹部三人はパルチザン連合でも過激活動家としても有名だ。
人民解放戦線ジーク親衛隊諜報部長官ハイドリヒ、、
彼は密偵の洗い出しやブリテイン政府機関への潜入などを指導する。ジークに忠誠を誓い、普段の振る舞いから「悪逆非道の暴れ馬」と恐れられる長身の最高幹部だ
三上の牢獄と通路挟んで、対面の牢獄に入れられた三上の親族佳子を三上に見せつけるかの如くもう一人の幹部が暴行する。
彼の名はヘルマン、親衛隊特殊作戦群総指揮官であり、主に隊員の訓練や武器密輸。ロシア社会主義共和国連邦筆頭に国交がない反ブリテイン国との裏外交をする組織のパイプ役でもあった
もう一人の幹部が三上の眼を後ろから固定し、見開かせる。ただ涙を流し、親族が暴行され死にゆく様を最後まで見せつけるのが狙いだった。
ハイドリヒ「、、、ネズミの家族もネズミだ。お前の身勝手な快楽の代償は重い。これより粛正する。まだガキもいたな、全員粛正だ」
ハイドリヒは三上を睨みつけ、通る声でそう言い放つ。
その頃には佳子の身体はピクリとも動かず、目を見開いたまま死んでいた、。
三上は舌を噛むことも出来ず、既に廃人と化していた。
ハイドリヒは続けて拘束椅子の後ろにいる幹部に首を横に振りジェスチャーを送る
その瞬間
パァンッッ
地下牢に爆音が響き渡り、床には鮮血が飛び散った
三上は頭を撃ち抜かれ即死
撃ち抜いたのは親衛隊情報戦指導者ルドルフであった
彼はクラッキング攻撃を実行する情報部隊の隊長であり、パルチザン連合での情報収集にも抜け目がないエリート隊員である。
情報戦部隊将校でありながら、狙撃の腕は一流で、その正確射撃は決死隊の狙撃兵スワロフと並ぶと言われている
ハイドリヒは口角を曲げ、目を瞑り感心する
「やはりスワロフを超えているのでは無いか?後頭部から眉間を狙い即死させるとは。」
ヘルマンは暴行した際についた血を水で洗いながら続けて言う
「同じくそう思いますねェ。ふゥ、資本主義者の汚い血を洗うのにまた時間がかかりますな。」
ルドルフは黒のキャップの鍔を少し下げてから敬礼すると
地下からツカツカと軍用ブーツで歩き、出ていった
ハイドリヒは大口を開けて笑い
「実に個性豊かな組織だな。」
そう言うと、ヘルマンも笑いながら頷き、帽子を整えてから二人とも地下牢を出ていった
地下牢には洗ってもなお血生臭い死臭が立ち込めていた
人民解放戦線の地下では毎年何百人という反対勢力の人間がこのように抹殺される。
臓器売買をするための解剖室や細菌兵器開発研究室などあらゆる〝血〝が流れる場所であった。
人民解放戦線は本部を観音崎に置き、旧扶桑帝國陸軍の要塞を使っていた。
司令室からは常時、情報戦隊隊員が朝鮮やロシア共和国の工作隊と電文を送りコンタクトを取っていた
池野での内戦状態も傍受しており、決死隊が特にブリテイン治安部隊や海兵隊に足止めされていることを知る
ジークはとある〝大国〝に応援を呼ぶ
そうロシア共和国である
ロシア社会主義共和国連邦は既にブリテイン合衆国ジャパン州での紛争激化を予測し、扶桑海に東洋艦隊、中華民主主義人民共和国東側国境付近に航空宇宙軍空挺部隊、MiG航空戦隊、陸軍二個師団を配備し、支援の要請を待っていたところであった
ジークはとある曲を無線通信で流す、その曲は
Прощание славянки=スラヴ娘の別れである
突如扶桑ブリテイン総督府内に最悪の情報が入る
ロシア共和国フルシェンコ第一書記による警告である
『我々は強国による途上国支配をいかなる時代も許さない。今すぐに内戦をやめ、扶桑の独立を承認せよ。でなければ我々は直ちに軍事的抗議をするだろう』
決死隊は情報傍受のためにテレビ局には攻撃せず、また大海の波班が常に圧力をかけていた
大海の波班は人民解放戦線情報戦隊とも連携を取り、圧力に反発するテレビ局をジャックし前回決死隊連続テロのような「決死隊放送」を流していた。それゆえに大半の局は圧力に屈し、全国放送では内戦の情報やロシア共和国宣戦布告を放送したのだ
ブリテイン本国では軍派遣と共に、太平洋平和条約機構(PPTO)による緊急会議が開かれた
しかしブリテイン合衆国の扶桑統合をよく思ってない貧困国やロシア共和国とのパイプラインに頼った親ロ派はこの期に会議をボイコットし、ついにはPPTO加盟国の6割超がブリテイン合衆国の手法をバッシング。
最大ブリテイン派であったオースランド連邦やフランク共和国でさえ
『懐古的すぎるブリテイン合衆国の統合支配に我々は反対する』
と表明。これによりブリテインは完全に孤立してしまったのだった。
しかし唯一、ブリテイン合衆国の統合支配や内戦鎮圧を強く主張する国があった。
大韓民主主義人民国である
李正煕大統領はPPTO国際緊急会議において
『過去の扶帝体制による虐殺を肯定することになる。我々韓民国はブリテイン合衆国と共同で世界秩序安寧に貢献する用意がある』
と弁舌した
ブリテイン合衆国のレーソン大統領はこれに強く同意
加盟国の承認がほぼ得られないままブリテイン、韓民国両軍を派遣をするという異例の判断になり、世界にブリテイン合衆国の権威が知れ渡る結果となる
その結果を芳しく思ったのは社会主義陣営である
特にワルシャワ安全保障条約機構(WSTO)加盟国は全面的に決死隊を支援することを表明したのだった
その頃池野は激しい市街戦により街が半壊、中でも商店街と駅構内は複雑な地形故に膠着状態にあった
シュダダダダダン パパパパ ズダン
激しい銃声が商店街に鳴り響く、時折爆発音も混ざっていた
治安警察特殊戦闘部隊将校「催涙ガスを使いまくれ!このままでは戦線が広がるだけだ!!」
大隊長「了解 十二時の方向に催涙弾発射せよ!!」
隊員「「了解!!!」」
パシュー パシュ パシュー シュファァァァ
軽い音と共に煙が上がる
しかし決死隊狼班に向けて撃った催涙ガスは全く効かなかった
市街戦を予測していた決死隊は防毒マスクを常備しており、最前線で戦う狼班には全員に配布されていた
狼班リーダー大道寺は的確な指示を出す
「奴らは非致死兵器による拘束を狙っている!今のうちに前進し制圧するぞ、良いか」
狼班大道寺部隊はパルチザン連合の中でも民兵最高峰と言われる連携技術、射撃技術があったが、大道寺の判断能力が最も実績を残す要であった。
大道寺は腕を横に振り前進の合図をする
一人が閃光弾を放つ
治安警察特殊戦闘部隊のど真ん中に命中、閃光で戦闘隊員が咄嗟に腕で眼を守る
大道寺部隊隊員はライフルで牽制、電柱や建物に身を隠しながら前進を繰り返していた
バババババ シュダダダダダ バララララ
大道寺「霧霧時計投擲ッ!!」
シュンーー、、、ズドンン
爆音がし、特殊戦闘部隊がいた建物は一瞬で瓦礫になる
即座に大道寺部隊が四方を包囲、瓦礫の中を索敵する
特殊戦闘部隊は瓦礫に埋まり、生き残りは一人いたが投降、これにより商店街から治安警察特殊戦闘部隊は全て制圧された。
捕虜となった特殊戦闘部隊隊員は致死率が低い足を撃たれ、装備を全て没収、口はベルトで縛られた
止血と共にとある〝同盟組織〝に身柄は引き渡された。
そう、人民解放戦線である
密かに決死隊に混ざり、後方支援していた彼らは捕虜の拷問を任されていたのだ
人民解放戦線特殊作戦群隊員「素晴らしい制圧技術でありますな同志、それでは」
大道寺は敬礼し見送ってから呟く
「、、、俺は君達とだけはやり合いたくないよ」
狼班は次にブリテイン治安部隊、海兵隊を制圧する旨を大本営なる決死隊地下に送る
狼班『イヌ ワケフウメル バイウ ヌシ ワケフウメル セントス 』
(治安警察 撃滅セリ 継続シ ブリテイン撃滅ス)
ヨハン『ヤドリ』
(了解)
決死隊アジトを無線傍受により突き止めようとしている治安警察緊急事態対策本部には旧扶桑軍人公職追放による弊害から旧軍暗号を読み取れる隊員が居らず、捜査が難航していた
またブリテイン暗号解読隊も決死隊暗号に難航、、
その間に池野商店街は決死隊占領区域になってしまったのだった
時は少し遡り、PPTO国際緊急会議直後である
ジャパン州北部上空に突如未確認機の大編隊が現れた
ブリテイン合衆国は情勢から直ぐにロシア共和国航空宇宙軍だと判断し、警告なしにスクランブル発進で撃墜を図る
対空ミサイルも発射した
ジャパン州北部新潟地区では轟音が鳴り響く
ブォォオォンンー ブィィイィィンンンンー キイィイィン
超音速戦闘機が市街地上空を一瞬で通り抜ける
ズドドドン
爆発音もハッキリ聞き取れる距離だった
ブリテイン軍航空部隊とロシア共和国航空戦隊が遂に交戦状態にあった
ロシア社会主義共和国連邦と同盟国である朝鮮人民共和国、中華民主主義人民共和国やその他衛星国は大韓民主主義人民国にも進軍。
四方から首都プーザンにミサイルの雨が降り注ぐ
空襲警報により市民は退避するも、プーザン市街は一瞬にして廃墟と化した
李正煕大統領も負けじと大韓国防軍を全軍交戦状態にするも、軍事大国に囲まれ防戦一方状態であった
こうして遂に決死隊内戦は世界的な軍事介入による紛争に発展したのだった
決死隊アジトではヨハンと藤原絢音特別捜査官による秘密協定が結ばれていた
それは現在の治安警察を無力化する協定であり、彼女が治安警察を裏切ったことはまだ決死隊上層部しか知らなかった
ヨハンは司令室で薄ら笑いを浮かべながらセンリに
「飛車が落ちた」
そう言ったのだった
この作品はフィクションです。実際の国や団体、問題には一切関係ありません
複雑になればなるほど書いてる側は楽しいことがわかりました笑
また書きます