内戦開始
パルチザン連合対池野の暴力団
そして、治安警察、ブリテイン軍治安部隊
歴史的な内戦の火蓋が切られる
パルチザン連合会議により全組織総意の元にTOKYO台東地区池野の裏社会勢力を掃討することになった決死隊、、遂に決行の日がやって来た
湿気が多く、ジメジメした地下室から未明、ドタドタと重い長靴の足音と共に
暗視スコープ、銃火器であるAK12、RGD-5手榴弾、ダイナマイト、日本刀、鉄パイプなどが次々と最終確認と共にバンに積み込まれ、唸るエンジン音と共にゆっくりと発進した
バンは計十台からなり、決死隊隊員の服装は前席隊員は一般人を装う格好で後部座席に待機する突撃隊員は防弾チョッキとPLK拳銃を握りしめ
緊張し汗ばむ者もいれば、鼻唄を歌い落ち着く者、瞑想し決意する者と様々であった
その頃「大本営」となる地下室にはヨハン、リョウム、センリら幹部が残り「とある部隊」に秘密命令を発していた
ヨハン「お久しぶりです、、遂に我々が第一の戦線を築く刻が来ました。石原中尉殿」
そこには1人、年配の男がヨハンと対峙するように立っていた。彼こそが扶桑決死隊特別部隊を率いる元大扶桑帝國陸軍軍人石原英機中尉である
石原中尉「私はまた軍人として活躍できることを誇りに思うよ、ありがとうヨハン君。今回の作戦は承知している。親父さんの仇、それで君へ恩返しするからね」
ヨハン「恐縮であります。帝國の栄光の為に。大扶桑帝國万歳!!」
ヨハンの万歳の声に対し、暗闇からは数十名もの声が地下を反響した
「万歳!」
「万歳‼︎」
「万歳!!!」
彼らは石原帝國陸軍中尉率いる中隊の隊員とヨハンの父に恩がある帝國海軍陸戦隊隊員であった
格好は黒いキャップ帽、紺色の作業服にブーツという元軍人だと見分けがつかないものであった
しかし彼らは今尚、帝國に固く忠誠を誓っていたのだ
バンに飛び乗り石原が開口一番
「我ラハ官軍ナリ、我ガ敵ハ池野ニアリ、帝國ト我ガ使命ニ敬礼‼︎」
と隊員に向け敬礼し、隊員は顔を引き締め敬礼する
運転手を務めるリョウムにも緊張感が伝わってきた
そしてリョウムは感銘を受けたのだ
(これが本物の扶桑軍人か)
続けてヨハンは期日通り、録音した政治放送を扶桑改革党本部から動画配信サイトにおいて流し、治安警察特別捜査官キアの脱出に力を入れる
扶桑改革党綱領の中にあるハズのない一文を入れる
・改革党は平和主義を目指し、国体を堅持すべし
随時扶桑改革党のチャンネルをチェックしていたキアには一瞬で「今日である」ことがわかり、秘密任務という名目で治安警察特別捜査本部を後にする
キア(改革党が国体を維持するなどと、、バカしか騙されんぞそれじゃあ)
キアは内戦初日というヨハンの緊張を感じ取り、すぐに決死隊アジトに向かう
彼の後ろにはもう一人、同じ道をつけている者がいた。そう藤原絢音特別捜査官であった。
池野では繁華街にあるバーで革命派闘争委員会議長三上がとある暴力団と接触していた
三上「準備は万端ですか?奴らはそろそろ動き出すハズです。あー決死隊にスパイでも置いときゃよかったなぁ」
そう言いながら隣の女性にもたれかかる
女性「もう三上さんたら、酔っちゃって」
三上「杏奈ちゃん、今日も可愛いねェ〜。こんな可愛い子がいるならボクも吉住組に入りゃよかったなぁ」
そこで吉住組組員のバーテンダーが口を開く
組員のバーテンダー「杏奈、そろそろ寝なさいな。。」
そう言いながら困っている彼女を下げさせ、強い口調でこう続ける
「おめぇじゃウチは無理だよ。大体政治運動なんざ金のためにやるやつばっかじゃねぇか。決死隊だかなんだか知らんがどーせこねぇだろ。死ににくるようなタマねぇよ」
店にいる客がドッと笑う
その店は深夜を過ぎるとcloseの札をかけ組員以外は入れないようにしている界隈では有名な吉住組事務所である。
バーテンダーの男は吉住組若頭蕪木次郎、吉住組幹部であった
組員「来ても叔父貴にゃ勝てねえよな。つか俺らチャカ持ってんだしいつ来ても怖くねぇよ。準備なんざいらんわ」
組員「サツにしかできんよ、あんなことはな、俺らにはビビってるわ」
組員「ボスは直系の組員と治安警察とも連携してます。心配ご無用。。。三上ィ、オメェ俺らが負けるわけねーだろーが、あぁ?」
三上は一瞬で酔いが冷め、冷や汗気味に失言を察知し
「あっはは、いえいえ、皆さまがより万全に勝つためですよ。気にしないでください」
いつもの弱腰口調で誤魔化す
蕪木若頭「おいおい、やめてやれよ。こいつの情報がなきゃ『準備』できなかったんだぜ?」
組員が再びドッと笑う
そこに突如店の奥の暖簾、闇の中から老人が現れる
黒いスーツに黒いネクタイ、一見硬派に見える老人はケラケラと渇いた笑いを響かせながら言う
「お前さん達、おはようさん。今日も元気だねぇ。若い衆が元気なのは良いことよなぁ、、な?」
そう言いながら蕪木若頭の肩に手をかける
その途端、店の雰囲気は一変した。組員は顔を引き締め立ち上がり一斉にその老人に頭を下げる
組員『おはよう御座います!!親分‼︎』
親分と呼ばれた老人は吉住組組長吉住邦夫であった
吉住組長「おうおう。躾がいいねえ。」
そう言いながら手をヒラヒラと振り
蕪木と三上に目配せをする。その目は一般組員を見る優しい目つきではなく、鋭い針のような深く突き刺さる目つきであった
咄嗟に蕪木若頭と革命派三上は店の奥に入る。老人の背中からは若い衆に遅れを取らない圧迫感が伝わる。
三上は思わず唾を飲む。蕪木は悪い胸騒ぎを感じた。
吉住組長は鋭い眼光で2人を睨み、こう続けた
「やつらがきとる。大出動らしい」
三上は内心情報が当たりホッとしたようで、大出動という単語に再び冷や汗をかく
蕪木が正座をし、こう切り出す
「親分、配備は済ませやした。警察とは連携しとります。裏に引き込み必ずや仕留めやす」
吉住組長「おう。おらぁ寝ずによ、直参の老人会率いて協議してたんだよ。この世界に来て久しぶりの戦だ。掟はわかるな?」
蕪木は溌剌と答える
「口は大きく、心は忠く決して敵を侮るなかれ。これ吉住の掟なり」
吉住組長「そうだ。蕪木、お前のことは信頼しとる。若い衆のタマ預けたぞ」
蕪木若頭「おす。我が命変えてでも部下と組を護ります。」
そこで吉住組長は蕪木の肩を一度叩くと蕪木はバーに戻って行った。
三上は心臓が張り裂けそうな緊張感の中で吉住組長と対面する。
切り口は吉住組長であった
「初めまして。私が組長をやっております吉住邦夫です。いつもお世話になっとります。まずは感謝の意を」
そう言いながら封筒を三上に両手で差し出す
三上は畳を滑らせ老人の手で自分に向けられる札束が見える厚い封筒を見ながら刹那固まっていた。大モノの組長が自分に対してこんな低姿勢だとは考えもしなかったのだ
それでも三上は気を引き締め、若干の緊張の解れを感じながら
「感謝の意を受け取ります。私の部下も奴ら決死隊に遅れを取らない精神鍛錬を欠かさぬ兵です。配備も万端です。御恩は忘れません。」
そう言い、深くお辞儀する
吉住組長はまたも手をヒラヒラしながら笑い
「ハッハッハ、まあ、そう固くなりなさんな。お前さんのことは蕪木からよー聞いとる。信頼しとるでな。さ、戻りなされ」
吉住組長はそう言いながら立ち上がり、襖の奥、寝室に戻って行った。
三上が信頼という言葉を人生で一番重く受け止めた瞬間であった
それから数分後である。パトカーの急発進したサイレン音が鳴り響き、組員が一斉に事務所から出動する。
場所は池野駅西口であった
女性の悲鳴と死体の山があった
西口で待ち構えていた革命派のパルチザン連合謀反分子は決死隊隊員により制圧、射殺され見るも無惨な姿に変わり果て。治安警察の怒号と共に様々な銃声が鳴り響く
シュタタタタ パンッ パシュッ ドンッ シュタタタ
時折爆発音も混ざっていた
池野駅周辺は鉄条網が敷かれ、平和ボケと揶揄される扶桑人には受け止め難い内戦が始まったのだ
内戦が始まって1時間、ブリテイン総督府からは戒厳令が出され、遂にブリテイン軍治安部隊が出動した。
その頃決死隊大本営であるアジト地下室ではヨハンと
実戦部隊の多数である狼班
援護部隊である烏班
小隊規模で暗躍する鼠班
そして戦闘の要である決死隊特別部隊石原中尉
と度々信号で連絡を取り合っていた
狼班『トラ トラ トラ』
(ワレ 奇襲ニ 成功 セリ)
ヨハン『シグレ ワケフウメル』
(連続シ 撃滅セヨ)
烏班『ワタリオエ』
(支援完了セリ)
ヨハン『ワタレ』
(続ケ)
鼠班『ネコ ヒナタ』
(敵影ナシ)
ヨハン『ネコ シッポ』
(ミツカルナ)
特別部隊石原中尉『3333 1529』
(順調ナリ 革命派五名制圧ソノ他九名制圧)
ヨハン『1111』
(了解)
この通信でヨハンは形勢が優勢だと知って一先ず息を吐く
ヨハン「キア、引き続きGPSと解放戦線からの通信を監視しろ」
キア「了解、、、隊長、表の小鳥、処分しますか?」
ヨハン「任せる、敵意はないようだ。しかしいつでも射殺できる、合図しろよ」
キア「了解」
キアは会釈し、再び決死隊の後ろ盾でもある隣国朝鮮人民共和国やロシア社会主義共和国連邦の高精度GPSによる治安警察行動ジャックと
解放戦線からの通信符号を待機しながらふと考えていた
(何故やつは公安隊を連れておらんのだ)
そう、大本営にまで藤原絢音特別捜査官は尾行しながら、近くの公園のベンチに座ったまま動かない
その異変は常に彼女の顳顬に銃口を向けていたスワロフにも感じ取られた
同時刻、打電と同時に戦線を拡大していたのは決死隊最大勢力部隊である狼班である
狼班隊員「残弾少ないぞ!烏は何している‼︎」
そこに狼班のリーダーである屈強な大男、コードネーム大道寺が叫ぶ
「霧霧時計を使え‼︎定時間脚を止めることができる!」
霧霧時計、狼班が作成した爆弾の異名で、治安警察本庁爆破に使われたものである
大道寺「投擲ッ!!」
シュンー 、、、 ズドン
物々しいロケットランチャーから発射された霧霧時計は治安警察特殊戦闘車に直撃し大炎上
反撃にブリテイン治安部隊と共に治安警察からも弾丸の雨が降り注ぐ
パパパパパパ シュタタタタタ タンッ タンッ
狼班は必死に制圧した敵装甲車両や花壇、あらゆる遮蔽物を利用し身を隠し抗戦していた
ブリテイン治安部隊、治安警察特殊戦闘員も必死である
ブリテイン軍治安部隊隊員
「GO!GO!GO!」
「Oo-rah!!!」
治安警察特殊戦闘員
「増援はまだかッ!!」
「鎮圧急げェ!!!」
治安部隊と治安警察特殊戦闘部隊は劣勢の中、ヘリコプターからのレーダー掃射も実行
周囲に弾丸の雨ならぬ弾丸のスコールが狼班目掛けて降りかかる
ズダダダダダダダダダダダダダダ
ヘリコプターが旋回し、再び
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダ
狼班も負けじとロケットランチャーや閃光弾で墜落させるも、無事ではない
狼班はこの一時間で十四名の死者を出していた
死にゆく隊員の目には涙と、その奥には故郷の家族との記憶があった。
「いてぇぇよぉ」
「ぐぐっうっ」
彼らもまた地獄の渦中にあったのだ
遡ること三十分、石原特殊部隊は吉住組随一の腕利きヒットマンと対峙していた。
吉住組は勢力が関東地区で最もでかく、それだけ精鋭部隊も所持していた為苦戦を強いられていたのだ
石原中尉「狙撃兵の射線ルートはここだッ!配備よろし!撃てッッ‼︎」
シュババババババババ タタタタタタタタタタ
そこが普段、平穏な街だとは微塵も感じさせない機関銃の音だった
負けじと撃ち返すヒットマン
パンッ パンッ
しかし音でも差がついていた
ヒットマンは拳銃だけで装備はなし、決着は目に見えていた
路地裏の攻防戦、たちまちヒットマンの半数は射殺又は重症を負い制圧され、残るヒットマンはあの蕪木若頭部隊だけになった
蕪木若頭は組員に喝を入れる
蕪木若頭「お前ら、親父への恩、忘れてねぇな?」
組員一同の眼は寧ろ輝いていた
そしてはっきりとこう答える
「おす!!!」
蕪木若頭「よっしゃア、行くぞォ!オラァァァァァ‼︎」
そう言いながら道のど真ん中を日本刀握りしめ突撃する
組員もそれに続けてナイフやバットで突撃
流石に唐突な無防備突撃に石原中尉も驚くが、冷静に旧扶桑帝國軍人一同にこう命令する
「打電をしろ、我らの扶桑魂を賊軍に再び見せる時が来たのだ。。」
石原中尉は一呼吸置き、軍刀を前にかざしながら
ヤクザに負けぬ大声で
「突撃ィィィ!!!」
そう叫ぶと、扶桑陸海両軍の機関銃隊員も狙撃隊員も軍刀を引き抜き突撃するのだった
ある元陸軍軍人にはとある歌詞が脳裏によぎった
『真っ先駆けて突っ込めば なんと脆いぞ敵の陣』
懐かしく、哀しい、苦い記憶を噛み締め、突撃に全神経を集中し、また叫ぶ
「天皇陛下万歳!!!!」
刹那、辺りに鮮血が飛び散る
この一戦はやはり元軍人、戦死者零の圧勝であった
蕪木若頭は辛うじて一命を取り留めるも、重傷。絶えるのは時間の問題であった。
蕪木若頭「ぐぐゥ、、フフ、やるのぉおんどれら、、、じゃがな、最期はお互い漢やったのぅ」
石原中尉「その意気、道を外してなければ酒が弾む仲だったろうに」
蕪木若頭「そう、、か、、も、、し、、、、、、、、」
最後まで言葉を紡ぐことなく絶命した
石原中尉は彼ら吉住組組員の忠誠心を昔の戦友と重ね合わせてしまい、つい敬礼すると
それに続き、石原部隊隊員は全員で敬礼
敵に対する仁義もやはり扶桑軍人精神健在であった
同時刻、不穏な動きを見せていたのは人民解放戦線、ジークであった
なんと三上を密かに監禁していたのだ
ジーク「どうも三上『元』議長、人民解放戦線へようこそ」
そう言いながら笑いかける
しかしその笑いに感情は無く、明らかに吉住組長とは違う冷酷無比で不気味なモノであった
ブリテイン合衆国ジャパン州での決死隊内戦が再び世界大戦に繋がるとはこの時誰も予想していなかった
その火薬庫になってしまったのである
読んでくださりありがとうございます。
かなり詰め込みました、、色々修正するかもですが、暖かく見守ってください(汗)