謀略
戦争の最中、水面下では熾烈な情報戦が行われている
それは東京戦争も同じであった
パルチザン連合で最も危険な組織…
西側諸国が第一警戒対象にするあの地下組織とついに衝突
神奈川県観音崎 23:54 分
「敵影なし、2時の方向に建造物あり。どうぞ」
「了解、α、β両隊その場待機せよ。」
真っ暗な薮の中でひそひそと無線交信する人影が一人、二人、三人…
物々しい暗視スコープに小銃を構え、静かに薮に身を潜める
無線通信が入る
「σ隊突入せよ、会敵次第発砲を許可する。」
物騒な機関銃まで抱えるβ隊とは違い、σ隊と呼ばれた部隊は軽装備かつ拳銃で敵を哨戒する斥候兵であった。
少人数部隊ゆえに1%以下の精鋭しか成れないエリート部隊である
シュボンッ プシューーー
σ先遣隊が赤いフレア弾で建造物内の反応を確認する
キーッキーッキーッ
寝ていたコウモリが大量に飛び立つ
コウモリがいなくなりフレア弾が消える前に目標建造物内を視認する
σ隊隊員「入り口D異常なし、コウモリ多数。敵影なし。どうぞ」
通信本部「了解。作戦開始」
次の瞬間
ズガガガガ ズガガガ ズガガガガガガガガガ
目標建造物の上から嵐のようにゲリラが襲いかかる
けたたましい銃声が鳴り響く
「ワッタ ファック」
たまらずブリテイン軍α隊が応戦する
シュタタタ シュタタタタタ
ズガガガガガ ズガガガガガガガ
σ隊隊員「建造物上から敵奇襲あり!」
通信本部「了解。至急航空部隊により制圧する。座標を」
σ隊隊員「了解。134…」
通信本部「至急応答されたし、至急応答されたし」
σ隊通信斥候兵は息絶えていた
狙撃である
弾丸はこめかみを見事に貫通。寸分の狂いもない狙撃であった
β隊は重い機関銃を夜間設置できず無惨にも射殺されていく
ズガガガガガガ ズガガガガガ パスッ ズガガガ
闇夜にトレーサーが発光し、さながら無作為な花火のように爆音を鳴らす
敵の正確射撃が頬をかすめ、練度を物語る
「こちらα、敵影複数。敵の小銃射撃で多数消耗」
「こちらβ、機関銃隊大部分死傷!」
通信本部「撤退せよ」
α隊隊長が叫ぶ
「撤退だ!撤退!」
ピーッ
警笛音と共にα、β両隊は撤収するのだった
実際ブリテイン軍はこの戦闘で敵の技量や陣形を記録。
前提任務は達成されていたのだ。
しかし敵兵の特殊部隊以上の技量には圧巻、脅威と認める他なかった
「戦死6、重症12か」
「直ぐに地下壕治療室へ」
硝煙と火薬の匂いに鼻をつく死臭。
場所に似合わぬ白衣の男が担架で負傷兵をそそくさと地下に運ぶ
「今回の敵はブリテイン夜間哨戒部隊でしょう」
「ふむ、我が陣地のレーダー網を広げねばならぬな」
B2地下会議室で大男2人と容姿淡麗、幼くも見える青年1人が作戦会議を遅滞なく進める
「総攻撃を仕掛けられる前に東京戦争に介入し、赤軍どもより成果を上げねばならぬ」
「奥平の顔もこの戦争で仏にしてあげんとな」
ガチャ ギィィーーー
カツンッ
見るからに屈強そうな大男が踵を整え背を伸ばし敬礼する
「ハイル・ジーク ただ今戻りました。後片付けを済ませた次第であります」
幼年に見える青年に敬礼しながら襟を整える
「お疲れ様、ルドルフ。夜間狙撃、素晴らしい。近衛警備隊の実力はいかほどか」
ジークと呼ばれた青年は新設した門番部隊の実績を問う
「指揮系統、連帯力、制圧技術に問題はありませんが、まだ若く精神面で数人鍛え直す必要がございましょう」
ジークはフフフと不気味なえみを浮かべ
「情報戦隊に入れる若手なんだ。可愛がってやれよ」
そうルドルフに告げると
「ハイドリヒは残れ、ヘルマンとルドルフは兵器を全て緊急搬出口へ」
「「ハッ!」」
ルドルフとヘルマンは重い鉄のドアを急ぎ開け走って保管庫方面に向かう
ハイドリヒは制帽を被り直し静かに切り出す
「東京からは赤色の損害多数と報告があります」
一呼吸置き
「閣下。ロシア、中国の空挺部隊を東京に派遣し、朝鮮特務工作隊を送り込めばブリテインは壊滅です」
ジークはハイドリヒをキッと睨みつけ
「ハイドリヒ、、いつも言っているが、目先の勝利よりも大義を勝ち得るのだ。」
ハイドリヒは叱責された意味がわからず表情を曇らせる
青年は続けて
「今他国の援助をもらっているのはパルチザン連合であり我々ではない…」
「とりわけ赤軍や決死隊は頼り切っているともいえよう」
ジークの刺すような眼光にハイドリヒは一瞬目を背ける
「今ぞ我々のみが戦果を上げる絶好の機会である」
「ハイドリヒ、彼らと連携は」
ハイドリヒがスッと背を伸ばし眦高く返事する
「滞りなく行われております。閣下」
ジークは立ち上がり、強く言い放つ
「赤軍を排除しろ。信頼しているぞ」
「では…sieg heil」
そう言うとハイドリヒも敬礼で返し、ジークは返礼した後緊急搬出口へ向かうのであった
ハイドリヒは“とある機関“に連絡を取る
ハイドリヒ「こちらP。賊軍の損害は」
???「赤軍も撤退気味にある。決死隊は未知数だ」
ハイドリヒ「赤軍に集中砲火しろ。決死隊は籠絡できる」
???「了解。閣下の安全と国家の繁栄を」
通信は途切れた
ハイドリヒ「たかが素人のギャングもどきにこのような時間をかけるとは」
そう言いながら彼もまた保管庫方面へと向かうのであった
???「PHより命。赤軍を集中砲火。決死隊は無視だ」
???「了解いたしました。」
見た目は作業着、一見普通の工場員に見える2人は千葉県木更津市の工場地帯からとある場所に電文を送る
ブリテイン総督府である
彼らは旧帝陸軍中野学校卒業生である。
諜報、防諜、謀略のプロであった。
現在は“工務機関“という名称で動く諜報機関であり、反ブリテインの元特別高等警察官も多く在籍していた
総督ケイディに治安警察公安隊から赤軍殲滅作戦の命令許可が圧力としてのしかかるには時間を要さなかった
ありがとうございました。
久しぶりに続編書きました!
継続がムズイ(>_<)




