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あまりに自然に朝目覚めたものだから呆然としてしまったが、いつも起きる時間だったし、日付もしっかり翌日だった。
てっきりタイムリープでもしたのかと思ったが、俺の能力は「治癒」のままだったみたいです。
さて。学園に行く準備をするか。
あとは、家を出る前に厨房寄るのを忘れないようにしないと。
顔を洗い、制服に着替えてリビングに行くと、すでに姉様が座っていて、ちょうど朝食を食べ終わるというタイミングだった。
「おはよう、姉様」
「おはよう」
中等部の制服を着た姉様には、まだ慣れない。
初等部の制服よりも、よりモラトリアムという色の強い、白のブレザーだ。
それだけで、とても大人びて見える。何だか遠くに行ってしまったようで寂しいな。
とはいえ、二年後には俺も同じ制服を着ているわけで。時の流れというのは不思議だ。優しいんだか、残酷なんだか分かったものじゃない。
なんて考えていたら、朝の挨拶と共に料理人が朝食を持ってきてくれた。今日はオムレツとトーストだ。
「ありがとう。いただきます」
ナイフとフォークを使って、オムレツを切って口へ運ぶ。卵は半熟よりも、きちんと形を保っている方が俺は好きだ。
うーん、ちょっとケチャップが足りない。
俺は席を立ち、厨房に取りに行く。
そして、
「ふんふん〜」
「……いつも思っていたけど、あなたケチャップかけすぎよ」
「えーそうですか?」
「そうよ。もう卵の部分がほとんど見えないじゃない」
こんなものでは?
ちなみに俺は、卵には基本ケチャップをかけたい人だ。オムレツはもちろん、目玉焼きもゆで卵もケチャップ派である。
あれは神が作りたもうた調味料だ。
もはやケチャップだけでも飲める。
ジト目でこちらを見ている姉様を横目に、朝食をぺろりと完食し、食後のお茶を一口含む。
と、姉様が立ち上がった。俺が来た時点ですでに食後のお茶を飲んでいたからね。
それに、
「最近、姉様早いですね。そんなに生徒会は忙しいんですか?」
「そうね。今は仕事を覚えるので必死よ」
姉様は進学し、晴れて正式に中等部の生徒会メンバーとなったのだ。
しかも、メンバーの中でも優秀な人間しかなることが出来ない「役職付き」だ。
だから最近、姉様は朝も早いし、帰りも遅い日が増えた。
寂しいけれど、姉様の実力が周りに認められるのは喜ばしいことだ。
「大変ですね。応援しています。身体にはお気をつけて」
「ええ。ありがとう咲也。いってくるわね」
「いってらっしゃい」
だから、俺は姉様を応援することしか出来ない。
俺は姉様の背中を見つめながら、またお茶を一口啜った。
学園に着き、授業の準備をしていたら、教室が不意にざわめき立った。
何かと音の方を向くと、入口の辺りにいた希空と目があった。
「咲也様!」
「えっ」
俺?
どうしたんだろう。
目立ちたくないから躊躇うけど、俺が目的みたいなので立ち上がり、彼女の元へ行く。
「どうした?」
「亜梨沙様から聞きましたよ。何やら面白そうなことを企画してらっしゃるとか……」
まずい!
その話を、こんな人が多いところでするわけにはいかない。
「オホンオホン! 希空さん! お昼時間もらえるかな!?」
「え、ええ……大丈夫ですけれど」
「じゃあ、この話はお昼に!」
「……分かりました。では」
周りに人がたくさんいたこともあり、希空はすんなり引き下がってくれた。俺の剣幕に引いていたようにも見えたけど、そこは気にしないでおきましょう。
希空が戻って行ったので、場の空気は一気に元に戻っていくが、好奇の目線が痛い。
成り行きとはいえ、希空と昼を一緒に過ごすことになってしまった。
最近、希空や亜梨沙のような美少女と話していると、すごく恥ずかしい気持ちになることがある。
普段通り話せるかしら。
思春期って難しい。
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