表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/57

55

 大変なことになった。

 俺は、自室のベッドで考えを巡らせている。

 今日、学園で亜梨沙から庶民ツアーはいつやるのかと、強めの口調で言われたのだ。

 以前、駄菓子の一件で母様にやんわりと釘を刺されてしまい、目立った行動は取れなくなってしまったので、少し様子見をしていたのだが、銀水兄妹からそろそろ二回目をやりたいとせっつかれ始めているのである。

 そう、亜梨沙だけでなく義弥からも、次はいつになるのかなと、まるで真綿を締めるような口調で聞かれている。

 何とかうまくかわしていたのだが、さすがに一年以上も間を開けてしまい、亜梨沙の追及も強くなってきた。結果、いよいよ逃げに逃げられなくなってしまったのだ。

 さすがに、冷気漂わせながら「まだですの……?」って迫られたら、もう何も言えないよね。というか、この世界が特殊能力あるってこと忘れてたわ。

 そんなの抜きにして、亜梨沙は怒らせると怖いのだ。

 てなわけで、何かしら用意して二回目を決行しなければならない。

 でもお菓子系は、前回のこともあり厳しそうだ。

 何を紹介するか、レパートリーはあるのだが、その材料とかが今の俺ではまだ満足に手に入れることが出来ない。


「……」


 そこで、俺が出来ることを考えた結果、もう開き直ることにした。

 もうバレてるんだったら、年一回とかならギリギリ許してくれるんじゃないだろうか。

 だから、聞いてみた。


「母様! カップラーメン買ってもいいですか?」

「ダメです」


 即答された。

 調理場で使用人と一緒にご飯を作っていた母様は、にこりと微笑んだ。

 理由は単純。「味が濃すぎるから」だそうだ。

 小学生の内からこの味になれると、他の味を食べても物足りなくなってしまうから、せめて中等部に上がるまではきちんと栄養を考えて作られた家のご飯を食べて欲しいと、正論が返ってきた。

 尤もな理由なので、カップラーメンは諦めよう。

 ならばと、俺はもう一つの案を話してみた。


「うーん、……まあいいかしら。でも、あまり無理なことはやらないようにするのよ?」

「はい!」


 母様のお許しが何とか出たので、俺は早速そのまま厨房で作業をしている料理人に、ある食べ物の材料があるかを尋ねた。

 業務用の冷蔵庫を開けてみてもらったところ、全て必要なものは揃っているようだったので、明日学園に持っていきたい旨をお願いしたところ、保冷バックに入れて渡せるよう準備してくれるとのことだった。

 料理人に礼を告げて、部屋に戻る。

 次は、銀水家に連絡だ。

 メールで亜梨沙と義弥に「明日庶民ツアー二回目を行う」こと、放課後に前回と同じ中央棟の空き教室を借りる予定の二点を伝えた。

 あ、忘れてた。

 明日の夜ご飯は、あらかじめ少なくしてもらうよう言っておいた方がいいかもしれないことを、追加でメールしておく。

 明日体験してもらうものは、主食にもおやつにもなる食べ物だから、亜梨沙には、量が多いと感じるかもしれないからだ。

 なお、俺達はサロンでお茶会をする時に軽食を頂くこともあるから、夕食を少なくしてもらうよう家に連絡することは、そこまで珍しいことではなかったりする。

 ふと、携帯が鳴ったので、見ると銀水兄妹から早くも返信がきた。

 どちらも明日は問題ないとの内容だった。二人とも同じ家にいるんだから、そもそも俺がどちらか片方に送って聞いてもらえばいいんだけど、なんだかそれも角が立つかもしれないじゃない?

 とにかく、二人とも大丈夫とのことだったので、これで準備は完了した。

 しかし、駄菓子の時にも同じことを思ったんだけど、明日紹介するものが二人のお気に召すかどうか不安になってきた。

 大丈夫かしら。

 「変なもの食わせやがって」とか言われないよね……。

 それが原因で敵対することになんてーー

 と思っていたら、気づくと朝だった。

 ……あれ?

 シリアスなこと考えてる途中に寝たの?

 え? やばくない?

 疲れてるのかな……。

いつもありがとうございます。評価やブックマークいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ