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 教室に入ると、これまで同じクラスだったことがある人達がおずおずと挨拶をしてくれた。それだけでも、とても嬉しい。

 思わず、少し元気に「おはよう!」と返したら、ビクッとされた。

 嫌われてはいないみたいだけど、怖がられてはいるんだよね。

 反省して、怖がらせないよう意識しながらクラスメイトに返事をしつつ、自分の席を探す。……あったあった。

 まずはパーソナルスペース確保である。

 ふう。

 椅子に腰掛け、カバンを机の横のフックに引っ掛ける。

 今日は、始業式とロングホームルームがあるだけで、昼頃には終わるはずだから気が楽だ。

 息をついていると、

 入り口の辺りがにわかに騒がしくなってきた。見ると、クラスの女子達がこぞって入り口の方に集まり始めているので、すぐに理由が分かってしまう。

 義弥だ。

 予想通り、「おはよう」と爽やかに言いながら義弥が教室に入ってきた。

 彼は、元々の顔立ちも整っていたが、年々背が伸びて、顔つきも精悍になっており、俺達の学年における女子の人気を一人総なめにしていた。

 しかし、義弥自身はあまり色恋沙汰に興味がないのか、女子に言い寄られてもうまくかわしているし、普段は俺や他の男子と共に行動しているのだ。全く、勿体ねえな!

 と、


「よう、義弥」


 前を通ろうとした義弥に声をかける。


「おはよう、咲也。同じクラスになるのは二年ぶりだね」


 彼は、同じクラスになれたことが嬉しそうな様子だった。俺の方が嬉しいわ。


「そうだな。お前がいてくれるから俺はクラスで一人にならなくて済みそうだ」

「大袈裟だなあ」

「実はここだけの話、俺は周りの一般生徒から怖がられている」

「ここだけの話でも何でもないんだよなあ」


 まあね。

 明前家のネームバリューもあるが、それ以前に俺のコミュ力が低く、口数の少ないせいもあってか、本当に友達が出来る気配がない。

 桜川? そんな友達はいません。

 だから、生徒会選別メンバーで仲良くなれたことは、本当に奇跡だったと言えよう。


「義弥、友達ってどうしたら出来るだろうか」

「難しい質問をするなあ」

「聞いてみただけだ」

「まあ、一つアドバイスするとすれば、咲也は周りに嫌われているわけではないから、それは救いなんじゃないかな」


 それはそうだけどさ。いつものことだけど、結局は俺が何とかするしかないしね。

 対人コミュニケーションの本とか読んで勉強はしてはいるんだけど、中々上手くいかないんだよなあ。


「後は、咲也って自分で思っているよりも多くの周りの関心を買ってるから、変な噂がすぐ出回るよね」

「……思い当たることはあるよ」


 そして、その噂に尾ひれがつきやすい。

 何せ、桜川との話を断片的に聞かれていたというだけで、俺には「聖ディーテ学園のクリスティーナ」という許嫁がいることになってしまったんだからな!

 「聖ディーテ学園」って何だよ!

 大変だったなあ。

 何より、どういうことかと詰問してきた真冬と亜梨沙が本当に怖かった。


「最近だと、卒業式での様子を見て、咲也がシスコンという噂が流れ始めているね」

「何ですって!?」


 シスコンだと!?

 姉の卒業だぞ、感極まって泣くだろ!


「口調がおかしくなってるよ、咲也。まあ、いつもなら微笑ましいで終わったと思うけどね。咲也はほら、今ギャル好きって噂もあるから、話の種になりやすいんだよ」

「だとしてもさ、姉様の卒業だったら普通泣くだろ」

「僕は、亜梨沙の卒業式で泣くことはないかな」

「亜梨沙さんの卒業式って、それお前の卒業式でもあるだろ」

「バレたか」


 義弥が爽やかに笑う。

 周りにキシリトール撒いてるのかコイツ。金髪でイケメンだし、これもう義弥が主人公だろ。

 ……って、あれ?

 だとしたら、彼にとってのヒロインって誰になるんだ?

 あんなにモテるのに、浮いた話があるわけではないんだよな。許嫁がいるなんて話も聞いたことがない。というか、いたら亜梨沙がもっと周りの女子に牽制をかけているだろうし。

 

「なあ、義弥」

「ん? どうしたの?」

「お前の性癖って何?」

「本当にどうしたの」


 真面目な顔で聞き返されたので、正直に思ったことを話す。


「はあ。僕にだって、言わないだけで好きな子のタイプくらいあるよ」

「へえ。どんなの?」

「言わないよ。少なくとも、ギャル好きのシスコンでないことは確かだけどね」

「…………」


 ギャル好きのシスコンって誰だよ。

 あ、俺ね。

 にしても、食い合わせが悪すぎる。パン好きのケチャラーみたいな。違うかな?

 それからは、話題も変えられてしまい、結局義弥のことは聞けずじまいだった。

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