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 三年生になると、初めてのクラス替えがある。前日の夜からあまり眠れず、ドキドキしながら登校すると、すでにクラス表が昇降口に張り出されていた。

 近づくと、俺の存在に気づいた生徒たちがさっと横にずれる。

 俺はモーゼか何か?

 いや、横に退いてくれるのはありがたいんだけど、そんな怖いものを見る目で見ないでほしい。何もしませんて。

 まあ、今更かと思い直し、目を細めて恐る恐る自分の名前を探す。苗字の頭文字が「め」なので、下の方から見て行った方が早いよね。

 め、め、め……っと。

 見つけた。

 次に、同じクラスの面子はどんな人がいるか、さっと流し見る。知っている人、というか希空か亜梨沙か義弥は……いない。

 なんてことだ。知っている人がいない。

 そもそも、どうしてクラス替えなんて制度があるんだ。せっかく仲良くなったんだし、ずっと同じクラスのままいけばいいのに。

 前世では学校もあまり通えず、当然仲の良い友達なんていなかった。だから、クラス替えに興味なんてなかったのだけど、まさかここまで残酷なシステムとは。こうして定期的に交友関係をリセットするシステムだったというわけだ。

 でも、待てよ。クラス替えで亜梨沙たちと少し疎遠になれば、生徒会とは関係のない友達を作り、本来の目的である生徒会とは関係のない平穏な生活を送ることが出来るのでは?

 今でも、クラスの違う希空とはあまり交流が多くない。会うのは、せいぜい放課後のサロンくらいだ。

 と、思ったけど、そんなに甘くないな。

 結局、サロンで会うなら交流は避けられないということでもあるわけだからね。

 それに、今のところ彼女らとはなし崩し的に良好な関係を築いてしまっているので、これを壊すのも角が立ちそうで怖い。

 むしろ、疎遠になった方が、敵対した時に遠慮なくぶっ殺されるまである。

 そんな気がする。

 決まりだ。同学年の希空たちとの交流は避けられないのだから、宥和路線継続に切り替えていきましょう。

 もしもの時は、奴らの情に訴えれば、殺すのだけは勘弁してもらえるかもしれないし。

 というか、社交界とか会社同士の繋がりとか、諸々を考えると、疎遠であり続けるのは無理かもしれない。


「おはよう、咲也」

「ああ」


 頭を捻っていると、最強の双子がやってきた。俺の時同様に、人の波が左右に割れて、彼らの通り道を開けていく。

 けど、生徒達は憧れや羨望の眼差しを向けている。

 俺の時と違いすぎないか。何でだよ。


「クラス替え、どうでしたの?」

「残念だけど、二人とは別のクラスになったみたいだ」

「あら、そうですか」

「生徒会選別メンバーを何人も同じクラスにはしないよね。僕たちが同じクラスだったこれまでが、おかしかったんだと思うよ」


 あれ。何か二人ともあっさりしてますね。

 俺なんて友達一から作るのかと心配しているというのに。


「だって、咲也や希空さんとは放課後サロンで会えるからね」

「そうですわ。クラスが離れたくらいでは疎遠になんてなりようがありませんもの」


 あ、そっか……。

 こんな風に思ってくれていたなんて、少し感動した。


「さ、教室へ行こうよ」

「そうだな」


 そういえば、希空はもう教室なのだろうか。

 さっきも思ったけど、クラスの違う彼女とは、サロン以外での関わりが少ない。

 サロンでも、彼女は一歩引いて俺たちのことを見ていて、あまり会話に自分から入ってこない。

 だから、一般生徒に親衛隊もいるくらい学園では存在感があるけど、俺たちの中では、意外と目立たないことが多い。

 無理とか、してないかな。

 ゲームでは完璧超人だったけど、この世界でも同じとは限らないからね。

 そういえば、原作のメインキャラが闇落ちすることってあるのかしら。もし、そんなことがあったら、それこそヤバくない?

 今度、希空と話をしてみようか。

 廊下で二人と別れ、教室に入ると、ザワつきが一気になくなり、しーんと静まり返った。

 え、俺?

 皆、畏敬のような視線を俺に向けている。

 姉様の言葉が頭の中にリフレインする。

 明前家の名前が持つ重みを再認識するとともに、これは生徒会以外の友達は出来ないかもしれないと、思わず肩を落とした。

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