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 初等部の入学式はまだ終わらないようで、まだ新入生は入ってこない。

 ふと、真冬に渡すために用意したお祝いの品のことを思い出し、希空に話しかける。


「そうだ、希空さん。歓迎会の後、真冬さんの予定は大丈夫そうかな」

「ええ、大丈夫だと思います。きっと真冬も喜びますよ」


 それではと、歓迎会の後に少しサロンに残ってもらうことにした。

 さすがに、姉であり友達でもある希空にも渡すタイミングは相談しておくべきかと思ったので、お詫びと称したお祝いの花を歓迎会の後に贈りたい旨を朝の内に伝えていたのだ。


「あら、咲也さんは本当に真冬にお熱ですのね」

「それとなく、希空さんに真冬さんのことを聞いてたもんねえ。なんとも微笑ましいなあ」


 双子がニヤニヤと笑っている。

 命がかかっていたらそれくらいやるわ。たとえ、側から見て俺が、真冬のことを好ましく思っているように見えたとしてもだ。

 むしろ、承認欲求の強い彼女には、露骨にそう見えるよう動いた方がいい可能性すらある。


「そうですわ。希空、今度真冬も入れて五人でお茶会をするのはいかがかしら。咲也さんたっての希望でもありますのよ。だって、あの咲也さんが自分から幹事をやると言い出したんですもの」

 

 亜梨沙が、さらに含み笑いを浮かべながら言う。

 いや、たしかにそんな感じのことは話したけどさ。

 希空は両手を合わせて微笑む。


「素敵な案ですね、亜梨沙様、咲也様。引っ込み思案な子で習い事以外に外にもあまり出ませんし、きっと喜びます」

「決まりですわね! 咲也さんもそれでよろしいかしら?」

「はいはい、仰せのままに」

「何ですの、その態度は。照れ隠しでも可愛げがありませんわよ」

「放っといて」


 彼女と学校以外でも接点を持つ機会なので、喜ばしいことではあるが、亜梨沙のからかいを含んだ顔にムッとする。

 というか、知ってるんだぞ。一般生徒への口調のキツさも相まって、亜梨沙が、俺たち以外に友達がいないの。真冬や俺のどうこうよりも、自分の友達作りのことを考えた方がよろしくてよ。


「あら、何か失礼なことを考えていません?」

「いや、何にも〜」


 俺? もちろん友達くらいいるよ。義弥とか。

 あと、運動会で他のクラスメイトとも少し仲良くなったもの。なぜか時間が経つごとに遠巻きに戻って行ったけど。

 まあ、たとえあっちがそういう風に思っていなくても、俺は友達だと思ってるから。

 つい溜息が漏れ出た。

 と、その時。

 生徒会室の扉が開き、今日の主役が入ってきた。

 今年の新入生で将来的に生徒会に入るメンバーとして選別されたのは、男子が二人に真冬を加えた三人だ。少ないなあ……。

 それでも、やはり選別されるだけあり、少人数ながらも華がある。真冬は、言わずもがな、さすがに希空の妹だけあって顔が整っているし、他の二人もいかにも名家の息子といった所作である。

 彼女らは、去年の俺たちと同様、上級生に席へ案内され、すぐに高学年や中等部、高等部の先輩方に囲まれていった。

 不意に、人混みの隙間から見えた真冬と目が合った。

 目を細めて、微かに微笑んだような……気がした。

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