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美少女桜井日向との始まり

 5月、入学式からまだたったの一ヶ月しか経っていないというのにやたらとモテている学年トップクラス美少女である桜井日向に俺、大崎大和は学校裏の川辺に呼び出されてかれこれ10分対峙していた。呼び出されて来てみたは良いものの、一向に桜井は口を開かずに難しい顔で俺のことを見ているだけである状況に耐えかねた俺はこちらから話しかけてみようと思いこう尋ねた。

 「何か用があるんじゃないのか?」

 すると、はっとした様に桜井も口を開いた。

 「あ〜。うん。…あのさ、大和くん。」

 しょっぱなからの下の名前呼びに驚く俺。少し間を開けて答える。

 「…なんだ?」

 「大和くん優しいから…」

 そこまで難しい顔をしていたのに、口角を少し上げて俺にビシッと指を刺して言い放った。

 「あなたを、私の彼氏(仮)に任命します!」

 俺は何を言われたのかわからずフリーズしてしまった。少し考えてから桜井の言葉を理解しかけたがやはり意味がわからなかった。

 「桜井は何を言っているんだ?」

 「何って、言った通りだよ?」

 なぜか俺よりも意味がわからないというような顔で可愛くキョトンとしていた。

 「俺に桜井の彼氏になれと言ったような気がするが…」

 「だから、そう言ってるの!」

 今度は少し怒ったように言われた。なんだか、ころころと表情の変わるやつだな。やはりモテているだけあって可愛いな。うん、可愛い。

 だが、俺は恋愛に興味あるわけでもないから

 「うん。無理。断る。話はそれだけか?」

と桜井に伝えると、今にも泣きそうな顔で

 「…やだ。大和君断らないで!」

うるうるした目でじっと見つめながら、そう言ってきた。

 やめて、そんな顔されると強く断れないじゃんか。俺は、亡くなった母に言われた「大和は優しい人でいてね。女の子は泣かせてはダメよ。」と言われたことを思い出していた。悩んでいる間も桜井は、うるうるした目で見つめてきている。

 悩んだ結果俺は

「…わかったよ。やるよ。」

そう言っていた。

 すると、さっきまでの泣きそうな顔が嘘だったかのような満面の笑顔で

「ありがとう!大和くんならそう言ってくれると思ってたよ!」

 そう言って、その場でぴょんぴょん飛び跳ねていた。

 だが、すぐに疑問も浮かんで来た。

 「でも、なんで俺なんだ?モテるんだしもっと他にもいただろ?」

 そんな俺の疑問も、なんでわからないんだろう?というように首を可愛く曲げていた。

 「さっきも言ったよね?大和くんが優しいからって」

 あー確かに言ってたな。それより、行動がいちいち可愛いな。

 だが、なんで俺が優しいなんて言うんだろうか。高校入学してから一ヶ月の間に、一度も話したこともないにに。桜井と違って俺は別段イケメンで有名でもないしな。

 あれこれ考えていると、桜井はかなり近い距離にいたことに遅れて気づく。そんな顔のよく見える距離で、

「大和くん!これから、よろしくね!じゃあ、連絡先交換しよ」

そう言ってきた。

 うわ、ちかっ!近くで見ると本当に可愛いな。なんかいい匂いもするし、何を言っているんだ変態か俺は!

 そんなどうでもいいことを考えていると桜井が顔を覗き込んできた。近い近い近い。とりあえず桜井の言う通りにしよう。

 「おう、これが俺のIDだ。」

と顔を逸らしてLINEのIDを櫻井に見せた。こんなに可愛い子が近くにいるというだけで、俺はとてもドキドキしてしまう。学校内でも有名な美少女の彼氏役とはいえ俺に務まるのかものすごく不安でいっぱいだった。

 連絡先の交換を終え少々雑談をしお互い帰路についた。


 翌日学校の玄関で

 「おっは〜やーまと。」

そう声をかけてきたのは、中学からの友人杉浦太一だ。

 「おはよう。」

とだけ返すと、ニヤつきながら

 「ついに、大和にも彼女ができるなんてな〜」

突然のことで驚いていると続けて

 「しかも、相手があの桜井ひなただもんな〜。羨ましいですな〜」

などと相手までバレていて俺は

 「どうしてそのことを知っているんだ?」

 「そりゃ、日向ちゃんがツイートしてたから」

 だからか、なぜか今日は俺に向けられる視線が殺気立っているのか。男子からの視線がめちゃくちゃ痛い。

 「しかも、ひなたちゃんから告白してきたんだろ?」

 「それもツイートしてたのか?」

 「ああ、てか彼氏なのにTwitterの垢知らねーの?」

 うっ、痛いところを突かれたな。さすがに太一に仮の彼氏だなんて言えなしな。

 「まぁ、プライベートの監視は俺の趣味じゃないからな。」

 「確かに、大和だもんな。」

 苦しい言い訳でも受け入れてくれる太一に感謝です。ありがとう。

 色々と雑談しながら教室へ向かうと

「おはよー!大和くーん!」

教室の前で友達と会話していた桜井が、手をぶんぶん振りながら走ってきた。

 「じゃ、ここからは二人の時間だな。」

それだけ言い残し太一は一人教室へ向かった。

 「おはよう桜井」

 「うん!おはよ。昨日のこと、ツイートしたら告白とか呼び出しなくなったんだよ!」

 なんか嬉しそうだな。もしかして俺を彼氏役にした理由って、告白や呼び出しをされないようになのか?告白されたくない奴もいるのか。まぁ、いいか。彼氏役を受けたからには、しっかりとこなしていくしかないんだしな。教室に入ると、みんなから

 「なんで、大崎くんなの!?」「桜井さんなんでなんだー」「俺も日向ちゃんと付き合いてー」やらなんやらとお祭り騒ぎとなっていた。

 お、おう。昨日まで、俺の存在知らなかったような人たちから話しかけられる。これが、有名人の力か。

 桜井は、はいっ!と元気よく手をあげて

「みんな、おはよう!よく聞いてね。私は、ツイートした通り大和くんと付き合うことになったので温かい目で見守ってもらえると嬉しいのであります!」

そう報告した。桜井が手をあげてから静かになった教室に再びわーと歓声や応援の声で大盛り上がりを見せることになった。さすが、有名人と感心してしまった。それからしばらくして、始業を知らせるチャイムが鳴り担任が着席を促して朝の大騒ぎはひと段落した。

 こうして、俺の静かな高校生活は壊れ賑やかになっていった。俺はうまくやっていけるのだろうか。

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