第7話「恋と食の楽しみ」
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翌朝、城内3階ダンの寝室……
眠っていたダンは目をいつもの癖で覚ました。
セントヘレナの王宮に滞在していた時、いつも起きていた時間である。
改めて見やれば魔導時計はまだ午前3時過ぎ……
窓から見える外は、当然の事ながらまだ暗かった。
この時間では、夜はまだ明けていないのだ。
と、同時に。
やや低いが元気の良い、挨拶の声がかけられる。
「うふ、おはようございます! マスター」
「ああ、おは……よう、って……」
「うふふっ」
「ええっ!? 何で? スオメタルが、そんなカッコで俺のベッドに居るのぉ?」
何と!
ダンの傍らにスオメタルが居た。
白い肌が透けて見える艶っぽいレースの下着姿である。
驚くダンに対し、スオメタルは微笑みながら淡々と告げる。
昨夜の超が付く甘えん坊ぶりは影を潜めていた。
「何で? と仰られても困りますが……仕方ありません。私がここに居る正当な理由を、マスターにご説明致します」
「あ、ああ……頼む」
「はい! 私とマスターは夫婦……いえ、まだ夫婦になる予定の婚約者同士ではございますが、愛し愛される者同士、同衾するのは当然でございますゆえ」
「いや、婚約者同士とか、愛し愛される者同士、同衾するのは当然とか違うし……第一、お前の個室兼寝室は、同じ3階にちゃんと用意してたじゃないか?」
「昨夜、気が変わりましたゆえ、元の私の部屋は急きょ客室に変更致しました。寝室は、愛と効率を考え、私とマスターの共用に致しました。何か問題でも?」
「何か問題でもって……まあ、良いか」
「ノープロブレムという事で……OKでございますね。では、私スオメタルは、マスターより抱き枕としての任務も拝命致しましたので、粛々と務めさせて頂きます」
「分かった、分かったって、え? 抱き枕ぁ!? そんなの! め、め、命じてね~って!」
「華麗にスル~。はい、スオメタルは今後、マスター言いなりの抱き枕となり、より一層、甘えさせて頂きます。とりあえず今朝の分と致しまして、マスターが私の名を優しく呼び、ぎゅっとして頂ければ、任務完了でございます」
「…………」
ダンがすぐ返事をしなかったので、スオメタルは不安を感じたようだ。
「もしかして……お嫌ですか? 私を抱き枕にするのは……却下でしょうか? マスター」
スオメタルは切なそうにダンを見つめ……
寂しそうに俯いてしまった。
ダンは……もう、今迄の認識を捨てた。
やはりスオメタルは『妹』ではないのだ。
真摯に熱く自分を慕ってくれる素敵な可愛い恋人なのだ。
そんなスオメタルを愛しいと感じる。
「……分かった! スオメタル、おいでっ!」
「は~いっ! マスター、大好きっ!!」
『お許し』が出たスオメタルは元気に返事をし、嬉々として、
ダンに抱き着き、ぎゅっとして貰った。
やはり……
スオメタルは、ダンに対しては超が付く甘えん坊だったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
心の距離を、ぐっと縮めたふたりは……
仲良く一緒に着替え、厨房へ入り朝食の支度をした。
ダンは自給自足を目指しているが、まだまだこれから。
ちなみに農業を本業とするつもりはダンにはなく、
自分達が食べる分だけ収穫出来ればOKと考えている。
というか、ダンもスオメタルも農業のスキルを全く持ってはいない。
すべて書物や口頭の受け売りで知った知識である。
農業に限らず、ダンとスオメタルのモットーは、トライ&エラー。
試行錯誤しながら、進んでいけば良い。
失敗したら、すぐやり直す、他の方法を試してみる。
という肩肘張らない生き方をしようと決めていた。
さてさて!
今朝の朝食は前日大量に買ってあったライ麦パンをふたつ、ダンの収納腕輪から出して温め、大好きなジャムを塗る。
そして、熱い紅茶を併せて飲むシンプルなモノ。
ダンとスオメタルが特に好きなのは、
果肉たっぷりなアップルシナモンジャムとアプリコットジャム。
当然ながら……
その大好物ふたつは大量に買って、城の倉庫に備蓄していた。
「スオメタル、一番大事な水はどうかな? 井戸は?」
「はい! ノープロブレム! 準備は万全です! 井戸はふた付き、魔導ポンプ付きの強力なモノを既に私が作っておきました」
「お~、よくやった!」
「うふふ、バックアップもバッチリですよね? 万が一、井戸が使用不能な際は、私もマスターも水属性の魔法が使えますもの」
「よっし、完璧だ! 昨夜説明したろ過装置も予備があるから、井戸の脇に置こう」
「バッチリでございます。外でも美味しい紅茶が飲めるでございます」
「だな! 水がOKならば、とりあえず畑を作ろう。まずは土を起こして肥料を入れようか。いわゆる土作りだ。腐葉土と石灰が良いだろう」
「腐葉土? 石灰? 聞いた事はありますが……いまいち分からないので、詳しく教えてください!」
「了解!」
「でも畑って! わお! いよいよ開拓の第一歩ですねっ!」
「だな! 畑に植える作物はいろいろと考えようか。保存食を備蓄する事を想定し、何を栽培して行くか考えるのが賢明だろう」
「保存食?」
「おう! 長期保存が可能で、いつでも食べられるモノを作り備蓄しておく。冬季など食べ物が手に入り難い時期の対策だ」
「成る程!」
「良いかい? 常に最悪のケースを考えておくんだ。魔法が使えなくなる。活動不能になる。そして食べ物が採取出来なくなるとかな」
「そうなると、マスターも私も、とっても困りますね」
「うん! というわけで、保存食の備蓄は必須というロジックが成立するのさ。保存食は、俺達の命を支えてくれるからな」
「な、成る程!」
「具体的に言えば、まず野菜は、いろいろな素材をはちみつ漬け、もしくは酢漬け――ピクルスにしたり、魔導暖炉で乾燥させたり、天日干しも良いな。今、食べてるジャムだって、そうだ! いずれは自作したい」
「あはは、私もマスターもジャム大好きでっすもの! 美味しそ~、面白そ~」
「おう! 野菜だけじゃないぞ、塩漬け肉や燻製肉も俺は大好きだ。魚を釣って干物にしても美味い!」
食べ物の話が異様に盛り上がる。
時間があっという間に過ぎて行く。
「な、成る程! いろいろありますね~。マスターが恋と食の楽しみを与えてくれましたから、復活してからのスオメタルは、壊される以前よりも人生が何億倍も楽しいです」
「お、おう! 恋と食の楽しみで、何億倍も楽しい人生か! うん! 成る程な!」
「いえ~す! ところで、マスター。具体的には畑に何を植えますか?」
「ああ、カブ、ダイコン、ニンジン、キュウリ、キャベツ、あと豆類も良いかもしれないな! 種や苗も既に王都でめぼしいモノは購入済み、収納の腕輪へ入れてあるぞ」
「わお! やった~! そういう大事なものなら私も文句は言いませぬ」
「ええっと……畑を開いた後は、天気も良さそうだし、野外での採取も兼ねて、城の周囲を探索しようか? 天然の腐葉土も探してみよう。見つけたら、転移魔法で畑へ送ってしまえば良い! ちなみに投入は腐葉土、石灰の順番だな」
「了解でっす! でもでも! マスターと野外デートなんて、本当に素敵でございます。嬉しいです! 王都買い物デートより、全然先になりましたねっ!」
「ははは、だな! さあ、ひと休みしたら、早速戦闘開始だ! レッツラゴー!」
「お~!」
ダンとスオメタルは決意を確認するが如く、軽く互いの拳を合わせた。
こうして……
ジャンク屋経験がある追放された元勇者と、
旧き時代の戦闘用自動人形の奇妙な……否、素敵な共同生活が……
人外が跋扈する魔境での、波乱万丈な辺境開拓が……
いよいよ始まったのである。
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