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第6話「勇者引退後の構想」

⛤特報! 『重版』決定!!


『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

《スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス》

☆最新刊『第3巻』大好評発売中!


皆様のご愛読と応援により

コミックス第3巻の『重版』が決定致しました!

ありがとうございます。

書店様で、ぜひお手にお取りください。

※宜しければ小説版《ホビージャパン様HJノベルス刊》第1巻~7巻もあわせてお読み下さい。

 勇者を引退した、元ジャンク屋のダンと、

 彼に救われた、失われた魔法帝国の自動人形オートマタのスオメタルは……

 共同生活を始めるにあたり、いろいろと話し合った。

 

 衣食住を中心に何が必要なのか、何をやるべきなのか、

 徹底的に話し合ったのだ。

 

 城に備蓄した食料、資財の在庫確認、新規追加の相談のやりとりは勿論、

 ダンがまめに作った『用途不明な小道具』について、

 スオメタルから、ガンガン問い合わせの質問が飛ぶ。


「マスター、一体これは何でしょう? 大きな壺に布やら、木炭やら、砂利が入っておりますが、下部には蛇口もついております。廃品寄せ集めのガラクタではないのですか?」


「失礼な! 上から水を入れると下から綺麗な水が出て来る……城の内部にもあるが、水のろ過装置だよ」


「ええっ? 水のろ過って……この壺の上から水を注ぐと、下から綺麗な水が出るのでございますか」


「ああ、綺麗な水になる。ゴミなどを取り除き……綺麗な水を飲む為に使うんだ。更に、ろ過した水を煮沸しゃふつすればリスクは軽減される。念の為、俺は必ず煮沸するし、毒物が含まれた水には無効だな……」


「成る程! それは面白いでございます。ではマスター、この、ふたまた棒の先ににシャツを取り付けたものは? これは確実にゴミでしょう?」


「いやいや違う! それは着古したシャツを有効に2次利用した魚をすくう網の代用品だ」


「ふ~ん、見た目は黄ばんで汚いシャツが付いたゴミなのに面白いでございます! ……このように意外なものが網の代わりになるとは」


「だろ! 俺は無駄なモノは拾って……いや、回収して来ないって!」


「駄目です、大好きなマスターでも、その件だけは信用出来ないし、容認出来ません。私はきちんと! びしっと! 整理整頓されていないと、気持ち悪くなるのでございます」


「気持ち悪くなるのでございますって……」


「肉体的にではなく! 精神的にでございます! それより! 以前収納の腕輪の棚卸をした際、半分以上捨てたじゃないですか? 99%ゴミばっかりでございましたよっ!」


「いや、あれは、まだ使えるし。スオメタルが無理やり捨てたというか……」


「私が何か?」


「い、いや! 何でもない!」


 子供はとても大事にしている宝物。

 対して母親には、全く不要で廃棄すべきガラクタに見える。

 例えれば、そんな攻防戦かもしれない。 

 

 そんなこんなで……

 とりあえず、ざっくり説明したが、数が多すぎてとても全部は無理。

 随時、実践にて教えるという事に相成った。 


 スオメタルと話しながら、ダンは軽く息を吐いた。

 今のところ、勇者引退後の『計画』は順調である。

 可愛いスオメタルというパートナーも得た。


 笑顔で話すスオメタルの顔を見ながら……

 ダンは記憶を手繰った……


 ……創世神の神託により勇者認定して、早くも1か月後に……

 ダンは引退後の事を考えていた。

 

 トンデモわがまま王女アンジェリーヌに日々ビシバシ鍛えられる、

 辛く慣れない王宮での暮らしも原因のひとつではあったのだが……

 

 最大の理由は……

 これまで勇者と名の付いた者の行く末を調べたら、

 彼等の身に降りかかった数多の悲惨な事実を改めて知ったからだ。


 王都の貧民街……

 地味なジャンク屋で生計を立てていた少年のダンは……

 創世神の神託で数千万人の中から勇者に選定され、周囲から大いに祝福されたのだが……あまり嬉しいとは思わなかった。

 

 何故なら、そもそもダンは『勇者』という言葉と響きに、

 あまり良いイメージを持っていなかったからである。


 様々ないにしえの伝承、実際に起きた悲惨な事件、

 厳しい事実、現実からダンは認識していた。


 最終的に人々は勇者の底知れぬ力を畏怖し、敬遠する。

 結果、勇者の行く末は、幸せとはほど遠いものが多い。

 命まで懸け、戦った代償を受け取るどころか……

 ある者は闇に葬られ、ある者は逃亡し、ある者は名と姿を変え、ある者は追放されて……誰もが二度と世の為に戦う事はなかった。


 丹念に歴史と資料を調べ、結論は出た。

 確率論ではあるが……

 勇者は世の為、命を懸けても、身を捨てて働いても、9割がた幸せになれない。

 

 だからダンは決断した。

 『救世の勇者』と、あがたてまつられているうちに、

 引退後の準備をしっかりしておこうと。


 決断後……

 ダンは魔王討伐行の傍ら、世界各地を広く探索し、本業以外に精を出し、

 金と資材を少しずつ貯めて行った。

 加えて……

 暇を見つけては、日常生活に使用する『小道具』をまめに作った。

 

 勿論、王家の面々には、特に王女アンジェリーヌには絶対に内緒だ。

 かといって、先に述べたように勇者法に基づく行いであり、

 けしてルール違反ではない。

 

 ちなみに、貯めた金と資財と小道具は収納の腕輪に放り込んだ。

 何でもかんでも入れて、腕輪がいっぱいにならないのか?

 そう聞かれそうだが、大型ドラゴンが10頭以上入る容量である。

 全くノープロブレムだ。


 ダンは、まずは衣食住の『住』を決める。

 準備に最も時間がかかるからである。


 ダンはヴァレンタイン王家に知られないよう、

 個人的に親しくなったドヴェルグ族をこっそり訪ね、特製の城をオーダーした。

 

 製作を頼んだ城は石造りの『うわもの』のみだが、土台さえ外せば、容易に移動が可能な優れもの。

 

 まあ移動が可能といっても、常人には困難を極める。

 だが、ダンは救世の勇者。

 

 巨大な建物さえ移動可能な転移魔法を習得していたから、

 小さな城館など全く問題はない。

  

 そして肝心の建設場所は……

 熟考の上で、『魔境』とした。


 魔境はこの大陸で唯一人間の手が届かない、文字通りの秘境である。

 人間が生きる環境としては、非常に厳しい。

 加えて、ダンがひとり住むならば、孤独感も半端ない。


 しかし人が居ない分、ほぼ干渉されず、お構いなしとなる。

 加えて……

 生まれた時から、家族が居らずひとりで生きて来て、

 コツコツとジャンク屋をやっていたダンは、

 ぼっち状態でも、あまり人恋しくはならないのが幸いでもあった。

 

 更に……

 衣と食、生活に必要な物資の問題も簡単に解決した。

 自給自足を模索しながら、しばしの間、ヴァレンタイン王国を含めた人間社会から仕入れる事に決めたのだ。


 人間社会――つまり町や村から仕入れるのはさして困難ではない。

 得意の変身魔法で容姿を変え、転移魔法でこっそり現れ、

 しれっと買い物をすればOK。

 現金を得る収入の面で具体的に答えは出なかったが、

 さして大きな問題ではない。

 金を稼ぐ手段の構想はいくつもあったから。 


 後は……

 どう生きて行くか……人生の指針をじっくり考える。

 問題は、波風立てず、どうスムーズに引退するかだけ……


 タイミングを計っているうちに、ダンは魔王を倒した。

 ダンはすぐリシャール王へ報告に行った。

 結果、ヴァレンタイン王国の窮乏を知り、

 一見追放の芝居を打ったのである。


 ……つらつら考えるダンへ、スオメタルが言う。 

 

「マスター、私はこのように考えますが、ご意見はいかがでしょう?」


 無事引退出来たので、うかれていたかもしれない。

 更に……

 少し上の空だったかもしれない。

 駄目だ!

 ……真面目にやらないと!


 ダンは自分の頬を両手で軽く、はたく。


「ああ、良いんじゃないか。とりあえずトライアンドエラーで行こう」


「御意でございます。どうしました? 何か考え事をされていたようですが……」


「いや、何でもないよ。それより……えっと、さっき言ってた話だけど……」


「さっきとは? 何でございましょう?」


「スオメタルの……本来の身体探しさ」


 ダンがシンプルに告げると、スオメタルは少し慌てて、固辞した。


「え? そ、それは急がずとも、……全然、後で構いません!」


「いやいや、大事な問題だから、先送りは良くない。早めに手を打っておきたい! ……実は、ちょっと考えている事があってさ」


 そうそう!

 スオメタル本来の身体を探す為の手立ても、ダンは考えていた……


 実は……

 王都に腕利きの『情報屋』が居り、既に手配済みなのだ。

 

 スオメタル本来の身体探し……

 その事実は……

 依頼の『真の内容』は情報屋へは告げられない。

 相手に、つけこまれるスキになりかねないからだ。


 しかしダンは、世界各地に点在するガルドルドの遺跡情報の収集依頼をした。

 

 「遺跡を探索すればきっと手掛かりが発見出来る!」ダンがそう力付けると、

 嬉しかったらしく、スオメタルはまたも涙ぐんだ。


 そんなこんなで、時間があっという間に過ぎた……

 頃合いを見て切り上げ、ふたりはそれぞれ自分の寝室へ……

 そしてぐっすりと眠ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。

※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


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