報われなさすぎる主人公。ここに誕生。
会社が入っている雑居ビルを一歩出ると、色とりどりのイルミネーションと何処かの赤い服のプレゼントを配る爺さんの音楽が俺に襲い掛かってきた。
おまけにビルが面している大通りには見せつけるかのように幸せそうなカップルどもが溢れかえっていて、もうすでにゼロだった俺のライフを削り取る。
「今年もか……」
俺は深いため息をつき涙をこらえながら、いつもと同じように家路についた。
俺がこの12月25日という日を嫌いになったのは15の時だった。当時、まだ今ほど擦れていなかった俺は好きだったクラスメイトをクリスマスデートに誘ったんだ。
それでな、その子はこう答えたんだ
「ごめんね。私、クリスマスは家族と過ごすんだ。」と。
純粋だった俺は愚かにもその言葉を信じていた。だが見てしまったんだ。
隣のクラスのイケメンと手をつないで町を歩くその子を……
あれからかれこれ24年もたつ。あれ以来俺はすっかりDTをこじらせた救えないやつになってしまった。
何度か抜け出そうとして、会社の後輩を誘ってみたが、返事は彼女からではなく人事部から来たよ。
次に問題起こしたら遠方に飛ばしますよっていう内容のメールがね。まあ、俺が悪いんだよ。ははは……
もはや恒例化し始めた回想を終わらせ、スマホを見るとちょうど日付が変わるところだった。
「今年も何もなかった、去年も、一昨年も。ついでに言うと一生そうだろう……
このまま一生DTなら、せめて魔法の一つや二つ使わせてくれりゃいいのに……」
と、テンプレじみた一言を最後に、俺の意識は飛んだ。
なんとも情けないことに、最後まで俺はDT。そうDTだったのだ。