まんなか
あれから1ヶ月が過ぎた。
ひよどりは僕と会話しなくなった。朝起きて、ふらっと出かけては夜遅くに戻ってきて寝る、その繰り返し。何をしているのかわからないが、段々とひよどりの顔色が悪くなってきているのはよく分かった。
最初の1週間は僕も黙って見ていたけれど、我慢できずに一度聞いた事がある。
「ひよどり………いつも何してるの?」
朝またふらっと出かけようとするひよどりの背に声をかける。その背は一瞬びくっとしたものの、こちらを振り向くことはなかった。
「べつに……」
ただ、それだけだった。これ以上話しかけるな、と言うようにひよどりは足早にドアの向こうへと出て行った。
「………さみしいなあ」
ぽつりと呟く。
ひよどりがこうなったのは僕のせいだ。受験前日にあんなものを見せられて、平静でいられる方がおかしい。僕が受験失敗させたようなものだ。
でも辞められなかった。ひよどりを養っていかなくてはいけないっていうこともあるし———何よりも、僕はこの仕事が嫌いではなかった。
気持ち良いのだ。
相手のおじさんは決して綺麗とは言えないけれど、いやむしろ綺麗とは言えないからこそ、その汚れた存在と交わる倒錯感は悪いものではなかった。
おじさんはおじさんで僕と「愛人契約」を結んでからと言うものの、毎日毎日僕と遊ぶものだから、僕の悦ぶところをどんどん覚えていって、どんどん上手くなる。
歯止めが効かない。
特に、おじさんの口が好みだった。
口を使って僕に奉仕させるのだが、最初からめちゃくちゃ上手かった。歯が当たるとかとんでもない、正直「下」に挿れるより気持ちよかった。しかもやればやるほどうまくなるものだから、歯止めが効くわけもない。
おじさんはおじさんで僕のような若い男に「使われる」のが好みらしく、奉仕の際は決まって蕩けきった顔をしていた。
……この話はもう良いか。とにかく、僕はこの仕事が嫌いではなかったのだ。
だから、ひよどりにバレた後も仕事を辞めるつもりはなかった。
そして僕は、後日それを後悔することになる。