捧げた
この作品はフィクションです。現実になれば
いいのに。あぁ…世界滅亡しろ。
または宝くじ当たれ。
「早く世界が滅びればいいのに」
私の呟きが暗い路地に響く。何のためにこんなことを願っていたのかは忘れてしまったが、ふとした時には必ず口から飛び出る願い事。
きっと私以外にも数えるのも馬鹿らしい位に同じ呟きをしている人々がいる。それなのに何時までも叶わない願い事。
私が死ねば私の世界は終わる。だが、心底求めたのはこの世の終焉だった。煩わしいものも気にくわないものも、全部置き去りに飛び立つことが出来るのにそうしなかった。
死ぬ勇気がないからか、それとも諦めがつかないからか。腐った世界に鉄槌を等と考えられる正義感もないのだから、どちらかだったとは思う。
既に意味の無くなった思考が虚無へと滑り、視界が現状を写した。私の呟きに答えたのか、予想より少し早く変化は訪れる。
呼吸が白く凍った。路地に差す光は段々と弱く儚くなっていく。音が消え、触れれば簡単に壊れてしまいそうな世界が目の前にあった。
灰色と硝子の透明、その奥に見える細々とした文明が小さい粒子となって空に帰る。思い出が脳裏を駆けるが、何をどうといった感想は浮かばない。
形を変えても全てはそこにあり続ける。だからこそ、これは滅びではないのかもしれないが、私の心に映る世界は終わるのだ。
目の前の光景を改めて見る。これが念願の世界滅亡だ。本当に望んでいたのか、今更な疑問に指先が崩壊するコンクリートの地面を撫でた。
頭を横に振り瞳を閉じる。正解でなくて良い、私の選択であればそれで。
生命は数十年前に絶えている。最期くらい派手なのが良い。手向けの花はあげられなかったが、君にこの世界の終わりを捧げる。
どうして求めるのに与えられないのか。
世界は理不尽だ。滅びてしまえ。