表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほこりを被った花瓶  作者: 逆さのカカシ
3/4

研修会と駄犬


今日は店舗での仕事ではなく

半年に一度の本社での研修会に来ている。

各店舗、県内、県外の社員が集まる。


社員のお客様に対する心構えやサービスの向上

などを図るためのものだ。

挨拶やお客様への対応の所作を

確認する場でもある。


うちの店舗は私や笹木、田端に善岡

もちろん、田城聡美も一緒に来ている。


田城聡美が神妙に言ってくる。

「涼子ちゃん、今回も頑張れ」


困ったように返す。

「田城さん、見放さないで下さいよぉ」


田城聡美がこう言う理由がある。



私はあまりこの研修会に気が乗らない。


いつからだったか忘れてしまったが

別店舗の複数の男性に

「うちの店舗に来ないか?」としつこく言われるようになった。


中にはチーフリーダーや支店長もいる。

お誘いの話はとても光栄だが

今の店舗から離れると実家に住んでいる両親の

様子を見に行けなくなるので

今、離れる事になってしまうのは大変困る。


なので丁重にお断りしてきたのだが

1人だけ未だに諦めていない男性がいる。


隣県の店舗のチーフリーダーの男性だ。


そこの店舗の社員の方に聞いた話では

若いのに

仕事が出来るかなりやり手の男性なのだという。


昔は話しかけられていなかったが

ここ最近、研修会がある度にお誘いの話をしてくる。

失礼の無いように断っているのだが

なかなか諦めてくれない。


今の私の悩みの種はその男性である。


午前中の全体ミーティングが終わり、昼食の時間になる。

本社の食堂で食べるのが定石だ。

外で食べる人もいる。


五人で食堂に行く。


かなりの人数が先に席に着いて

食べ始めている。


私たちもそそくさと食券を買い

トレイを受け取り席を確保しに向かう。

私は焼き魚の定食、田城聡美はラーメン

笹木はシチューとパン、田端は焼き肉定食、善岡はオムライスを頼んだ。


真ん中辺りが空いているようなので

そこに座る。


焼き魚の骨を弾きながら周りを見渡しいると

田城聡美が話しかけてくる。


「涼子ちゃん、もしかしてあの男の人を探してるんでしょ」


ビクッとし体を低くして田城聡美に顔を近づけて言う。

「だ、だって!ここにいるかもしれないじゃないですか!正直、困っているんですよ?」


パンを手で千切りながら笹木が言ってくる。

「彼の事?あんな男、気に留めるだけ時間の無駄よ。

ああいう男は無視するのが一番」


善岡が会話に入ってくる。

「でも、悪い人には見えませんけど」


「沙希ちゃんはまだ若いはね。そう見えるなら男を見る目がないわね」


笹木は自分が過去に似たような男を体験したことがあるかのように言ってくる。


こちらで話がどんどん膨らんでいるのを一切気にせずに食事を進めていた田端も参戦してくる。


「涼子さんは嫌いという訳ではないんですよね?私も少し強引かもしれないですけれど悪い人には感じないんですよね」




無神経な田城が追い打ちをかけてくる。

「ご愁傷様です」


「ちょっとぉ!もう!」



後ろから肩を叩かれる。


振り向くと厄介事の権化が現れた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ