幕間 ゼロアワー:-5
『ロボット』
人々の仕事を代替する各種機械のこと。
近年は、戦域監視や自動狙撃の機能を持つ無差別攻撃機械を指す事が多い。
地雷駆除の現場では移動能力があるものは大型を「ボット」小型を「デシ」と呼び、移動能力の無いものは「ポスト」と呼ばれている。
トンネルは暗かったが、手の中の温もりだけは確かだった。マスクでの呼吸は苦しい、背負った圧縮空気の残りはあと5分程度か。
自分の呼吸音以外、何も聞こえない。それでも進まなくてはならない。
まだか、迎えに来る者達はまだ見えないのか、膝が砕けそうだ、それでも進まなくてはならない。
最後の気象予報によれば、風は海から内陸に向かっている。海に向かうこの方向ならば風上だ、ガスは流れて来ないだろう。
苦しい、体だけではない、心も苦しい、あんなに沢山居たのに、自分はこの両手で抱えられるたった一人しか助けられなかった。
この子の両親はあの最後の瞬間に我が子に微笑んでいた、あの微笑みを無意味にしてはいけない。進もう、一歩でも前に。
突然、体が何かに衝突した。柔らかいものだ。この音は声?人の声なのか?
手の中の子供が体を包む梱包用の袋ごと持ち上げられていく、自分の体も何人もの人に持ち上げられていくのが分かる。
こんなに暗いのによく見つけてくれたものだ。
誰かがマスクを外してくれる。仄かな明かりが見える。助かったのだ。
外気を吸う。まだ生きている。あんなに沢山死んでしまったのに。
「ありがとう・・・暗い、暗いですね・・・」
後で自分はそう言ったのだと聞いたが、思い出すことはできなかった。
多分、この先もこれ以上酷い直接的な描写は無い・・・と思います。