第0話 こどもの国(上)
昔、人間はロボットを作りました、ロボットたちは人間が大好きだったので、たくさん、たくさん働きました。
やがて、戦争が始まりました・・・
錆びた鉄板の下、夏の緑に染まったセイタカアワダチソウの暗い影に小さな穴がある。
オレはゴクリと唾を飲んでから、振り返って言った。
「兄ちゃん、行ってくる。」
逆光で見えない顔色が、声に映る。
「いいか、無理すんなよ。今日は最初の角の手前迄だぞ、細い赤金でも、なんならアルミの空き缶でも・・・いや、何にも無くても良いからな?風が強くなったら、何にもいらないから・・・」
心配は嬉しい、けどされ過ぎるのはちょっとイヤだ。
「大丈夫だよ。ニッパで切れない物は選ばないし。モドキが来たら直ぐに帰ってくるよ。兄ちゃん心配しすぎ!何度も一緒に行ったじゃん。」
「ごめんな、一緒に行けなくて。」
「しょうがないよ、兄ちゃんもオトナになったんだから。」
「早くホントの大人になりたいよ。そんなに大喰らいだったかなぁ・・・」
「昨日からそればっかし、1メートル40センチ超えたらもうオトナなのは、むかしデシが決めたんだから、兄ちゃんは悪くない!」
「あ、そんな大声もダメだからな。もう今日は見てくるだけでいいから、な?」
「はいはい、耳タコありがと!・・・帰りにタコ焼き食べたいな!」
「わかったから、何にも採れなくてもおごってやるから、ちょっと行って見て、帰ってこい。」
「うん!」
穴を潜り抜ける、振り返ると穴の向こうに黒いシルエットになった頭が見える。嬉しい。
出口は入口と同じようにセイタカアワダチソウに埋もれていた。ゆっくりと進む。
期待に胸が膨らむのが分かる。この「新しい穴」は、「前の穴」や「前の前の穴」と違って、まだ「しゅうかく」が終わっていない。前に兄ちゃんと一緒に入った時は、赤金がいっぱいとれて、みんなでピザを食べたのだ。それも沢山。
今度は食べて無くなってしまうものじゃない、残るものはどうだろう?最近流行りのシェアードパスっていうのもみんな喜ぶかもしれない。ホントはイホーらしいけど。
繁みが終わると、夢を見る時間も終わる。アスファルトの道と左右には暗い穴を覗かせる低いビルが並んでいる。
路上には前に来た時に捨てた電線被膜がそのまま残っていた。よしよし、まだ荒らされてはいないようだ。路肩に積もった土にモドキの足跡が有るのと、デシの足跡が無いのも確認する。これも良し。・・・今回は小さいニッパーしか持ってこなかったし、モドキの足跡をたどって小部屋の一つも探検する位で十分だろう。
何となく、左側のビルの一番近い入口を選び、観察する。モドキの足跡がある、入っていくのと・・・出ていくのと、両方だ。昔、兄ちゃんが先輩の話として7型のモドキとばったり出会ってとても怖かったというのを怪談仕立てに話してくれた事がある。あんなのはゴメンだ。
入口を入れば、直ぐに階段の踊り場だ。徹底的にやるなら一番上の階から「しゅうかく」するのも良いが、今回は小手調べだから、入ってすぐの部屋にしよう。
鉄のドアは枠から外れて、すぐ手前に倒してあった。周りに赤い錆が大きく広がっているので、これはモドキがやった事じゃなくて、ずっと昔、戦争の頃に外れたのだと判る。ふふん兄ちゃんの英才教育の成果を見よ!ゆっくり暗闇に目を慣らしてから部屋に入る・・・と顔にむわっとイヤな感覚が・・・蜘蛛の巣だ!ぺっぺっ。
・・・そこで一瞬で血圧が下がるのを感じる。蜘蛛の巣が残っているという事は・・・この部屋はモドキが入ってない!ってことだ!デシが居るかもしれない、居ないかもしれない、居ても壊れているかもしれないし、きゅーみん状態で寝てるかもしれない、もしかしたらセンサーが壊れていて大人に間違われているかもしれない、もしかしたら今、毒ガスを吹き出すかもしれない、ヤバイ!死んじゃう!死んじゃう!兄ちゃん姉ちゃん助けて!!!
見切り発車ですのでのんびり行きたいと思っています。




