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空中散歩  作者: 雨咲はな
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2.夜のファミレス



 結局、立ち話もなんだし、ということで、二人で駅近くのファミレスに行くことになった。

 この青年が兄の友人ということなら、成海にまったく否はない。誠のことについて、きちんと話をしておくべきだと思ったし、自分もなんでもいいから情報を得たかったというのもある。制服姿のままなのはためらいもあったが、着替えるわけにもいかないので仕方ない。

「へえー、こんな時間でも、けっこうお客さんがいるものなんですねー」

 店に入ると、席に座るやいなや、きょろきょろと廻りを見回して、成海は感心するような声を上げた。

 午後十時閉店のル・クールでは、オーダーストップは九時半となっている。それくらいの時間に入ってくる人もいないではないが、かなり少数と言っていい。カフェというのは、ゆったり寛ぎたいという目的で入る人が大半なのか、閉店三十分前に慌ただしくお茶を飲みたいと思う人はあまりいないようだ。

 なので、すでに十時を廻ったこの時間でも、カップルや、やはり制服姿の高校生らしき客までがいて、それなりに賑わっているファミレスが、素直に珍しい。メニュー越しに他の客を観察しては、あの人、コーヒーのお替りしてる、こんな遅くにコーヒーを何杯も飲んだら目が冴えちゃうんじゃないのかな、と余計なことまで心配した。

「成海ちゃんは、あんまり夜遊びとかしないタイプなんだ?」

 向かいの席には、客ではなく成海のほうをまじまじと眺める晃星がいる。若干、怪訝そうな表情を浮かべているのは、高校三年生にもなって、ファミレスくらいで遠足に来た小学生のようにそわそわする成海の態度が、今ひとつ解せないためらしい。

「あ、うち、門限が七時で」

「は……?」

 ようやく周囲を見渡すのをやめて、今度はメニューを吟味するために視線を下に向けた成海は、その時の晃星がちょっと間抜けな顔をしたことに気づかなかった。

「七時までに家に戻るとなると、やっぱり六時には帰る準備をしないと間に合わないじゃないですか。だから友達と遊んでいても、それくらいには別れることになるんです。遅い時間に外に出る時は、必ず誠ちゃ……いえ兄が一緒だったし、ましてや夜のコンビニやファミレスなんて、不良のたまり場だから行っちゃいけないって禁止されてて」

「不良……?」

 晃星は、顔だけでなく声もどこか間抜けなものになった。

「でも、こうして見ると、特に不良の人って、いないような感じですよね。一歩お店に入ったら、そこは夜の別世界が展開されているのかと思って、私、実はちょっとドキドキだったんですけど」

 現在、店内にいるのは、どこからどう見ても、普通の一般人ばかりである。夜の住人たちの、危険で自堕落でめくるめく禁断の光景でも広がっているのかと想像していたのだが、そこにある空気は、窓の外が暗いだけで昼の健康的なファミレスと大差ない。幻想がひとつ崩れて、成海はまたちょっぴり大人になった。

「あのさ、成海ちゃん……」

「ところで八神さん、何を頼むのがいちばん安上がりだと思います? やっぱり単品よりはドリンクバーを注文すべきでしょうか。でも、そんなにたくさんの種類を飲む自信がないし、そうすると一杯だけ飲むのにドリンクバーは無駄ですよね。ううーん、でもコーヒー一杯よりも、ドリンクバーのほうが安いんだから……ううううーん……」

「…………」

 真剣に迷って唸っていると、ぱっとメニューが目の前から消えた。

 ん? と思って顔を上げる。成海の手からメニューを取り上げた晃星は、口をへの字にして、ぱたんとそれを閉じてしまった。まだ何を頼むか決めていないのに。

「お店に入って、お水だけっていうのは失礼じゃないでしょうか、八神さん」

「誰がそんなことを」

 晃星はひとつ、はあーっと溜め息をついてから、きっぱり言った。

「好きなもの頼みなよ。俺が奢るから」

「え、そういうわけには」

 成海が慌てて遠慮の言葉を出しかけるのを、広げた手の平を見せて遮る。

「なんでもいいからさ。メシは食ったんでしょ。だったらパンケーキ三段重ねとかパフェとかケーキとか」

「そんな贅沢はできません。だって八神さん、知ってます? パンケーキって、五百円以上もするんですよ。どう見ても、直径十センチくらいしかないのに。五百円あったら一食食べられるくらいだと思うんですけど。十センチっていったらこんなもんですよ八神さん」

「……頼むからさあ」

 両手の指で円を作って「直径十センチ五百円」を滔々と解説する成海に、晃星はなぜか呻くように言って、手で顔を覆って机に突っ伏した。

「これ以上、俺を居たたまれない気分にさせんのやめて。もうホントに可哀想で可哀想で、泣けてくる」



          ***



 遠慮する成海を強引に押し切って、晃星はスペシャルパフェを頼んでくれた。季節のフルーツがてんこもりに飾られた、スペシャルなパフェである。その豪華さに目が眩みそうになり、成海はスプーンを手に、しばしうっとりと見入った。

「こんなの食べるの、久しぶりだなあー」

 思わず独り言を漏らすと、注文したコーヒーのカップを持ち上げた晃星は、少しほっとしたような顔をした。

「あ、食べたことはあるんだね。こんなの見るのも食べるのも生まれてはじめてだって言われたら、どうしようかと思ったよ」

 なんだか、さりげなく失礼なことを言われている気がする。

「そんなわけないじゃないですか。私、こういうの昔から大好きで、両親が生きていた頃はよく食べさせてもらっていたんですよ。二人が亡くなってからは、誠ちゃんがボーナスの時とかに、大サービスしてご馳走してくれました」

「…………」

 晃星が無言になって、カップをソーサーに戻す。カチン、という音がした。

「……ご両親が亡くなったのは、成海ちゃんが中三の頃だったかな」

 テーブルに肘をつき、ほんの少し前のめりの体勢になる。そうすると、彼の顔がさらによく見えて、成海は今さらのようにもじもじした。考えてみれば、兄の誠以外の男性と、こうして差し向かいで話すという経験は、今までにほとんどない。

 晃星は明るい栗色の髪がよく目立つけれども、それ以外はさほど軽薄な感じはしない、明るく健康そうな青年だった。部品のひとつひとつが飛び抜けて整っているわけではないが、それが非常にバランスよく配置されているため、全体の印象をかなりぐぐっと良い方向に上げている。気安い話し方や態度だけでなく、わずかに垂れ気味な目が、なんとなく相手に安心感を与えて、彼と他の人間との距離を縮めるのに役立っているような気がした。

「はい、そうです。私が十五の時に」

 しかし今は晃星の顔ではなく、話が先だ。成海の意識は、パフェからも、目の前の青年からも離れ、自分の過去へと遡った。



 ──高校受験を間近に控えた冬のはじめ、両親の乗った車が後ろから来たトラックに追突されて、二人は帰らぬ人となった。

 あまりにも、突然の出来事だった。ただ単に買い物に行っただけ。家を出る時、二人していつものように成海に向かって、「お留守番お願いね」と笑いかけて言ったのに。

 衝撃と悲しみと混乱の中、なんとか成海が公立高校に合格できたのは、ひとえに兄が傍でしっかりと支えていてくれたからに他ならない。昔から妹には甘い兄であったけれど、めそめそと泣いてばかりの成海に、兄は何度も何度も、「俺がいるから大丈夫、成海のことは兄ちゃんがずっと守ってやるから、何も心配しなくていいんだ」と、頭に染み込むまで繰り返し、呪文のように言い聞かせてくれた。

 兄の誠はその時まだ就職したばかりで、給料もそんなに貰えているわけではなかったが、両親の保険金と事故の賠償金とで、兄妹二人の生活自体はなんとかなった。家を処分して、アパートに引っ越ししたのだって、困窮のためではなく、たった二人には広すぎたからだ。

 それでも、なるべく贅沢はしないでおこうねと兄と約束し合ったのは、これから何が起こるか判らないから、という不安の混じった前提があったのは否定しない。突然の両親の事故死により、成海と兄は、未来には確実なものなど何もない、という人生の教訓を得てしまっていた。

 ……その教訓が、ほんの数年で、また活かされることになろうとは、さすがに想定してはいなかったのだが。



「半年前、ま……兄が」

「誠ちゃんでいいよ」

 表情を改め、口調も少し固くなった成海に、晃星はさらりと言った。その声に含まれる優しさに、ほっとして頷く。

 両親の死はもうずいぶんと受け入れられるようになったが、この話になってしまうと、成海はまだ平常心ではいられない。

「……半年前、誠ちゃんが、ふらりと家を出て行ったきり、帰ってこなくなりました」

 それは本当に、「ふらりと」としか言いようのない、日常的なひとコマでしかなかった。まだ桜の咲く春の日曜日、ちょっと出てくるな、と妹に向けた兄の顔にも声にも態度にも、取り立てておかしなところはなかった。警察にも、兄の友人たちにも、何度も訊ねられたけれど、成海はどうしても、そうとしか思えなかった。

 今も記憶にあるのは、その時の兄の笑顔。夕飯までには戻るよ、と落ち着いた口調で残していった言葉だけだ。

「てっきり、本屋に行くとか、ちょっとした買い物をしてくるとか、そういうことかと思って、私、ちっとも気にしなかったんです」

 だから、いってらっしゃい、という自分の言葉だって、布団を干しながらのおざなりなものだったのだ。すぐに帰ってくるだろうと信じて疑っていなかったからこそ。

 いつがその人の「最後の瞬間」になるかなんて判らない。両親を亡くした時、成海はそう思い知ったはずなのに。

「でも、夕方になっても、誠ちゃん、戻って来ませんでした。夜になっても……何度も誠ちゃんのケータイに電話してみたけど、それも繋がらなくて。何も連絡なく帰らないなんて、両親が亡くなってからは初めてだったから、私、すっかり頭に血が昇って」

 テーブルの上では、兄と自分のために用意した夕飯が、すっかり冷えて固くなりはじめていた。いてもたってもいられなくなり、家中をひっくり返して手帳や年賀状の束を見つけ、電話番号の載っている誠の友人知人に片っ端から電話をかけまくった。

 ……でも、誰も、誠の行方を知っている人はいなかった。

「その晩は一睡もしないで待ってたんですけど、誠ちゃんは帰って来ませんでした。ですから、朝になってすぐ、警察に行ったんです」

「……警察は、ちゃんと話を聞いてくれた?」

 晃星の問いに、成海はこっくりと頷いた。口許に拳を当てて、こちらをじっと見つめる晃星の顔つきは、どこか無表情に近い。けれど大げさに驚かれたり、同情されたりするよりは、そのほうがよほどよかった。

「事故に遭ったのかもしれないし、何か事件に巻き込まれた可能性もある、って。行方不明届も出しました。よく調べてみましょうって、警察の人も言ってくれたんですけど──」

 そう、確かに、警察は親身になって調べてくれた。その時点で、多分、可能性リストのいちばん上にあったのが、「事件」であったからなのかもしれない。誠の足取りを追って、駅でそれらしい人を見たという目撃証言までとってくれたし、誠が勤めていた会社にも行って、いろいろと事情を訊ねるということもしてくれた。

「……でも、その途中で、判ったことがあったんです」

「判ったこと?」

 晃星が真っ直ぐに成海を見据えて問いかける。その顔からすっかり笑みを消し去った彼は、どこか少し怖いような雰囲気もあった。


「──誠ちゃん、出て行く時、家の貯金を大半持っていってました」


 両親の保険金を預けておいた通帳とカードがなくなっていた。調べてみると、そこからは、引き出しの限度額いっぱいの金額が減っていたことが判った。

 警察に言われ、近所のATMに取り付けられた防犯カメラの映像を、成海も確認した。お金を下ろしていたのは、間違いなく、誠本人だった。

「…………」

 晃星は黙って何かを考えている。口の近くにあった右手の長い中指が動いて、無意識のようにするりと唇を撫ぜた。

「会社の人の話では、誠ちゃん、ずっと何かを悩んでいた様子だったらしいんです」

 少々真面目すぎて融通の利かない部分はあるが、誠は基本、人に好かれる性質だった。両親の葬式の時だって、会社の人がたくさん来て手伝ってくれたし、残された兄妹のことを、心から心配して気遣ってくれた。だから誠が何かを考え込んでいるようなのを見かねて、同僚の何人かは、直接本人に向かって問いかけてもみたらしい。

 どうしたの、なにかあった? と。

 それに対する誠の返事はいつも同じ。いや、なんでもないんだ。苦笑しながらそう応えて、ふっと虚空に視線を飛ばす。


 ちょっとね……俺って、もしかしたらダメな兄ちゃんかもしれないなあ、と思ってさ。


「私はちっとも、気づかなかったんですけど」

 成海はぽつりと呟いて、たまらず目を伏せる。押し寄せてくるのは後悔ばかりだ。

 いつも頼ってばかりだった兄。何があっても陽気に接してくれていた兄。勉強のことや学校のことで愚痴を言っても、彼のほうに悩みがあるなどとは、まったく考えもしなかった。

 誠は何を悩んでいたのか。

 ダメな兄ちゃん、だなんて、そんなことは決してなかったのに。成海にはいつも優しい、本当に優しい、かけがえのないたった一人の大事な兄だったのに。

「どうも、これは事故や事件じゃなくって、本人の意思による、蒸発なんじゃないかって、警察のほうで言われました。特に揉めていた相手もいなかったようだし、自分でどこか目的地を定めて行動しているようにしか思えない。それらの状況を考えると、そういう結論しか出てこないって」

 「そういう結論」を出したのは、成海ではなく警察だ。そして一旦そういう結論を出してしまうと、警察というのは途端に動きが鈍くなる。成海がどれほど頼んでも、それ以上は民事不介入だからと言われるようになった。

 お嬢さんも大変だろうけど、いつか連絡が来るかもしれないから、待っててごらん、と年配の警察官に諭された時には本当に泣けた。まだ高校生の妹を残してどこかに行ってしまうなんて無責任な男だ、という非難が、その目にはっきりと出ていたからだ。

 誠は絶対にそんな人間ではない、成海のその懸命な言葉は、警察の人たちの耳には、まったく届かなかった。

 ──そこまでに、三カ月かかった。


「それから自分でもなんとか調べてはみたんですけど、手がかりがなくて」

 恥ずかしい話だが、年齢の離れた兄のプライベートを、成海はほとんど把握していなかった。誠には友人も多くいたようだが、そのほぼ全てが、調べる過程ではじめて知った人たちばかりだった。兄にしてみても、わざわざ妹に友人を会わせる必要なんて、まったく感じなかったのだろう。

「もっといろいろと調べたい気持ちはあるんですけど、学校もあるし、それ以前に……あの……」

 少し口ごもる。目の前のパフェを見ながら、ちょっと顔を赤くした。

「……資金が、底をついたこともあって」

 晃星が、ぱちりと目を瞬く。

「今、生活費はどうしてるの」

「誠ちゃんが持っていったのは、保険金が入ったほうの通帳だったんです。それとは別に、お給料が振り込まれていた普段使いの口座もあって、そこには事故の賠償金と、いくらかの貯金くらいは残っていたので、今のところはそれでなんとかやっていけています。でもちょっと、先のことも考えると、ギリギリかなと」

「誠が持っていった口座からは、それ以降、金が引き出された形跡はあるわけ?」

 成海は黙って首を横に振った。

 その口座からお金が引き出されたのは一回きり。いっそ、全額でもいいからどこかで引き出してくれないか、と成海は祈るように思っていたが、誠の消息と同様、お金の動きもぱったりと途絶えている。

「だから、そこにはまだお金が残っているはずです。でも、通帳とカードがないから引き出せないし、再発行するには名義人本人じゃないとダメだっていうし……」

 とにかく、本人が行方不明、という曖昧な状況のままではどうにもならない、ということだ。いや、どうにかする手段はあるのかもしれないが、高校生で未成年の成海には、そのすべが思いつかないし、相手にもしてもらえなかった。

 肉親に縁の薄かった両親には親兄弟がいない。親戚と名のつく人間がいない。従って、兄のいない成海は、天涯孤独の身の上だ。こいう時、相談できる大人といったら、学校の教師くらいしかいない、という我が身の不安定さを、この時になって成海は芯から実感した。

 口座には、高校卒業まではなんとかなるくらいのお金はある。しかし、これからの不透明さを思うと、一円だって節制するに越したことはない。兄の友人の間を訪ねて廻るのだって、いちいち交通費などの諸経費がかかってしまうのだ。

 兄の行方を探すのは、とりあえず今は棚上げ、という状態にするしかなかった。

「いっそ高校を辞めて、働こうかなとも思ったんです。でも、それを見かねた常陸さんが、じゃあせめてうちの店でバイトするといい、って言ってくれて。とにかく高校は卒業しなさい、就職するにしてもそのほうがいいってアドバイスされて、私もそうかなと納得したので、お願いすることにしました。そもそも私、働いた経験って、一度もないし」

 兄と妹の二人暮らしだったというのに、それまで成海はバイトの経験が一切なかった。バイト禁止の校則に加えて、兄にも禁止されていたからだ。

 みんなもそうだとばかり思っていたのに、こうして実際に働いてみたら、同じ学校でもこっそりバイトをしてる子はたくさんいると知って驚いた。なるほど、事情を話して正式にバイトをする許可を得ようとした時に、担任にまで「天野は真面目だな」と言われたわけだ。

 どうやら自分は、兄に過保護にされるあまり、少々世間とズレているらしい。最近になって、成海はそのことにようやく気づいた次第である。

「常陸さんて、あのカフェの店長?」

「はい、そうです。誠ちゃんの大学の先輩で、私があれこれ聞き回っている時に、ものすごく心配してくれた人でもあるんです。とっても優しい、いい人なんですよ」

「ふうん」

 力を込めて言うと、晃星は少し面白くなさそうな相槌を打って、口を曲げた。

 テーブルに頬杖をついて、成海を見る。

「あのさ、俺だって、友達の妹が困ってるって知ったら、力になってやろうとしたと思うよ」

「そうですか」

「相手が可愛い女の子だったら、なおさらだね」

「そうですか」

「たまたま日本にいなかったから出遅れたけど、そのセンパイにばっかり肩入れするのはどうかなあ。それくらいのことは普通だよ、普通」

「そうですか」

「俺も優しくていい男なんだぜ、成海ちゃん」

「そうですか。あの八神さん、アイスが溶けてきたので、そろそろパフェを食べてもいいですか。さっきから、気になって気になって」

「聞いてねえし!」

 晃星は憮然として、どうぞ、と投げやりに言った。やっと重苦しい報告作業が終了し、成海はほっとして目の前のパフェに手をつける。白い生クリームをスプーンで掬って、ぱくっと口に入れた。

 久しぶりに食べる甘さは、胃と胸にしみじみと沁みた。

「美味しい」

 笑みを零してそう言うと、晃星は「そりゃよかった」と目を柔らかく緩めた。




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