異変は突然に(5)
「ただいま。」
そう言った愛は暗い顔をしていた。俺は他の人たちと直接話をしていたわけではないが遠くから愛が話しているのを聞いていたため暗い理由は察しがついた。俺たちはまだマシな境遇だったようだ。俺たちは銃を突きつけられただけで使われもしなかったし、怪我もなくただここに連れてこられただけだ。
だが集められた人たちの中には親が逃がしてくれて親を置いてきてしまったもの。もっとひどい人は目の前で親を殺されてしまった人もいたみたいだ。それに比べれば自分たちはまだ幸運な方だと感じた。
そんなことを考えていると銃を持った奴らが体育館に入ってきた。
「大人しくしていたか。」そう言った「奴ら」の一人は、
「お前たちにはこれから俺たちの仲間になってもらう。」
と言い出した。俺は思わず、「はっ!?」と声を出してしまった。他の人も声には出していないものの同様の意見を持っている人がほとんどのようだ。
「従う従わないは自由だが従わないものには親しいものの死が待っている。親。友達を殺されたくなかったr大人しく従うんだ。」
「ここにいる者たちの中には気づいているものもいると思うがここには若者しかいない。それ以外の年代の人間は別の場所に隔離している。」
「従わなかったものがいた場合はその中から一人ずつ殺していく。親しいものといったがこれは正確ではなかったな。自分ではない人間の親しい人間を殺していく。自分のせいで人間が死ぬのが嫌なら俺たちに従うんだ。」
と「奴ら」は言った。俺たちはまったく現実を受け入れることが出来なかった。自分たちが従わなかったら人が死ぬということに現実味を感じられなかったのだ。これでもう俺たちは「奴ら」に逆らうことが出来なくなってしまった。
「食料は定期的に配給する。これで餓死することはないだろう。」
「もう少し大人しく待っていろ。」
「奴ら」のリーダーのような奴はそういって部屋から出ていった。それに続いてほかの「奴ら」も出ていった。
「どうしよう、何させられるかもわからないし従わなくちゃ人が死んじゃうし。」
そう言いながら愛は泣き始めてしまった。無理もない、すでに極限の緊張状態だったというのにそこから状況は更に悪くなってしまった。俺は愛の背中をさすりながら頭を冷静にさせていた。この状況は最悪だ、今すぐにも脱しなくてはならない。
そう決心し、愛を元気づけながら俺は脱出する方法を考えていた。




