お化けの正体
小屋の中には、誰もいなかった。
中にあるのは壊れた舟の残骸、錨、ロープに、マストの切れ端などのガラクタばかり。人影すら見当たらない。
「な…なーんだ。何もいねぇじゃん。やっぱ、嘘だったんだよ。その話。早く帰ろうぜ。」
俺は、帰りたかった。とにかく、その場から立ち去りたい。その一心だった。
しかし、中川はその場を動かなかった。
「お…おい、中川?」
俺は怪訝におもい、中川の顔を覗き込んだ。その時の顔を、俺は一生忘れないだろう。
その時の中川は…笑っていた。屈託のない、とても無邪気な笑顔だった。まるでお使いを終えて無事に帰宅した子供が、
「偉かったね。」とお母さんに褒められたみたいに。とても嬉しそうな笑顔だ。
俺は、ゾッとした。
中川は、今までこんな笑顔をしたことがない。むしろ、無愛想なやつだからだ。
「おい、どうした中川!?」
俺は、肩を揺さぶりながらそう聞いたが何も答えない。こちらの事なんか気に求めていないようだ。
次に、中川の口からこんな言葉が飛びたした。
「連れて来ましたよ!先生!」
は?連れて来た?
俺はそう思いながら、中川の方を振り向いた。
すると、どこからともなく声がした。
「やれやれ、やっとですか。いつも君は遅いですよ。」
その声とともに、目の前の空間が歪み、人が現れた。その人に、俺は驚いてしまった。
その人は、海猫先生だったのである。




