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中学校の怪事件4





「小さすぎて写真では良く分からないが……」

「あ! ひょっとして、これかな?」

 ノートに挟んであった例のマニラ封筒。そこからてきぱきと紙片を取り出す若葉(わかば)だった。

 見た目に反してなかなか有能な助手のようだ。なるほど、英才の名をほしいままにする生徒会長・三宅貴士(みやけたかし)が選んだだけのことはある。チワワ君は可愛いだけではないのである。

「やっぱり! ここに入ってるのは写真に写っている紙片の実物ですよ。ほら、裏に数字と名前が記されている。どの襲撃現場にあったものか書き止めて取っておいてくれたんだ! 流石、我等が生徒会長だな!」

 机の上の犠牲者の写真の横に、若葉は順番を確認しながら紙片を置いて行った。


 





   挿絵(By みてみん)      挿絵(By みてみん)


   挿絵(By みてみん)      挿絵(By みてみん)


  挿絵(By みてみん)  挿絵(By みてみん)


   挿絵(By みてみん)      挿絵(By みてみん)






「うーーーむ」

 腕を組んで黙考する志儀。

 やや時間を置いて、若葉は訊ねた。

「何か、わかりましたか?」

「いや、まだだ。そういうことで――じゃ、ここはひとつ、襲われた本人たちに会いに行くとするか! やはり探偵は直接、関係者の生の声を聞くに限るものな!」

「え?」

 さっきは『何処へも行かない。ここでじっくりと事件の全容を精査する』と言ったのに?

 戸惑う若葉に生徒会室の鍵を掬い取って志儀が立ち上がった。 

「おい、何ボヤっとしてるんだ? いくぞ、チワワ君!」

「あ、は、はい……」





「あれえ?」

 K2中を揺るがす〈謎の襲撃者〉に襲われた4名が入院しているという病院の門前で志儀は立ち止まって首を傾げた。

 中学校からは徒歩で10分ほど。車なら3分とかからないその医院――


 《毛利医院》


「気がつきましたか?」

 傍らで囁く助手・内輪若葉(うちわわかば)

毛利(・・)って……第一番目の犠牲者・毛利天優(もうりてんゆう)と同じ苗字だけど?」

「ええ。ここ、その毛利天優さんのご実家です」

 淡々とした口調で若葉は説明した。

 もともと毛利天優の父もK2中の卒業生なのだ。

 その父、医院の院長でもある毛利天政(もうりてんせい)は現在K2中の理事も務めている。今回の連続した不幸な事故(と生徒会長の三浦貴士は伝えている)の負傷者も自分の病院へ入院させて責任を持って治療に当たっている。

「毛利医師の特別の配慮に校長以下、僕たち全生徒、心から感謝しています。負傷者全員、寂しくないようにと同室なんですよ!」

 陽当たりの良い2階の南側の6人部屋。

 若葉の後ろに続いて消毒薬の匂いの篭る階段を上りながら志儀はふと思った。

 丘の上のあの探偵社、元医院だったあそこも往時はこんなだったのだろうか? 

 踊り場には探偵事務所の窓にあるのとよく似たステンドグラスが嵌め込まれていて秋の夕日を煌めかせている。

 今は探偵と黒猫しかいない、あの寂しい廃屋のような洋館だけど……


「どうぞ、こちらです!」 


 清潔で広々とした病室。

 正面の壁いっぱいに大きな2つの窓があって、その窓に平行して3つずつ寝台が並んでいる。

 左右2つ、合計4つの寝台が現在塞がっていた。

 それら4つに向かって内輪若葉が厳粛な声で言った。

「紹介します。こちらが、今回、我等が生徒会長・三宅さんに指名されて探偵役を引き受けてくれた海府志儀(かいふしぎ)君です」

「初めまして」

 ペコリと頭を下げる志儀。

 一斉に3つの声が交錯した。

「おお!」

「君か?」

「君が我々を傷つけた悪辣な襲撃者の正体を暴いてくれるんだな!」

「!」

 

 3つ(・・)?――

 

 左の窓際の一人は動く気配がない。ぐるぐる巻きに包帯を巻いた痛々しい顔を天井に向けたままだ。

 立ち竦む志儀に若葉が低い声で、

「三宅さんが言っていたでしょう? 〝意識のある3人〟って。そうです、1番目の犠牲者の毛利天優さんは未だ意識が回復していません。昏睡状態なんです」

「天優のためにもどうか、1日も早く〈謎の襲撃者〉を見つけてくれ、海府君!」

「その通りだ!」

「頼んだよ! K2中の探偵・海府君!」

 ベッドに起き直った3人――その3人も頭や肩、腰に包帯を巻いている――が悲痛な声を漏らす。

 志儀はキュッと唇を噛んだ。

(これは……僕が思った以上に深刻な案件だ……!)




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