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鏡の中の萩の枝 11

遅くなってすみません。

11で終わりたかったのですが、なかなか…。

「……」


俺が黙り込んでいると、自分の予想した反応と違ったのか、伯父さんはちょっと不思議そうな顔になる。


「何でも屋さん?」


「──意思の制御する思考実験と、その制御から外れた世界の進化は違うんじゃないでしょうか ……思いもつかない方向や次元に枝を伸ばす……それは残留思念ではなくて、似て非なる、意思のない空っぽのモンスター……」


話しているつもりが、途中から呟きになってしまっていたらしい。聞き返されて素直に答え、その反応に後悔する。


「モンスター? いいですね」


目を輝かせるスタイリッシュ仙人。俺はとっさにバタバタ手を振り否定する。


「えっと、あ……! いや、あの、そういうことではなく、」


じゃあどういうことなんだろう? ふと、動きを止めた。自分でもわからない。つい終末系の暗い方向に気持ちが向いてしまったのは、あの爆発する萩を見たとき、ウィンダムの『トリフィド時代』を思い出したせいだろうか。怪奇な三又植物に侵略されたあの世界は、結局どうなったんだっけ……。


そんな俺に、伯父さんはふっと笑った。


「ある意味怪物ではあるかもしれませんね。だけど、意思が無いということはないと思うなぁ。育つこと、よりたくさんの枝葉を伸ばすことが、萩の意思だ。そう思いませんか?」


生長することこそが意思であると言われて、俺はなんだか腑に落ちた気がした。生命の発生だって、そこに何かの意思があったわけじゃないもんな。ただ、増えて、増えて──ちょっとしたきっかけで変化していっただけなんだ、萩が枝分かれするみたいに。つまり──


「生長の果てに、進化がある」


「え?」


まるで俺の頭の中を覗いていたような言葉。ついマジマジとその甥っ子とお揃いの、薄いオッドアイを見つめてしまう。この人本当に仙人? つまり今のは人の心を読む仙術──?


「友人の言ってたことなんだが……、何でも屋さんがそんなに驚くとは、奇抜な発想ってことかな? 我が友人ながら、あいつは色々とトんでいたなぁ」


奇抜なんじゃなくて、シンクロに驚いたんだけど……。でも、くすくす笑う顔は懐かしそうだから──、言わずにおこう。


「彼らが出会ったとき、まだあやふやだった萩の意思の方向性を決めたのは、友人の<性格>だと思うよ。そうだねぇ……<色>のないところに<色>を付けた。例えるならそういうことだよ、それが友人の<性格>だ。

物事に出会ったとき、何を感じるか、何を考えるか──そういうことが、コレの抱えるたくさんの世界にも影響しているはずですよ」


友人がいなくなってから生じた<ruby>枝<rt>世界</rt></ruby>も、友人の色を纏っているはずだ、そんなふうに伯父さんは言う。


「ふむ、考えてみれば、残留思念ではなく、星を継ぐ者とでもいったほうがいいのかな? あれは継承者だ。星ではなく世界だが、萩と友人の世界はこれからも続く……。永遠に現在進行形だ。私たちのいるこの世界と、同じことなんでしょう」


遠ざかり続ける星々──赤方偏移を引いて、膨張する宇宙。その起源は諸説あってまだよくわかっていないというけど、膨張しつづけていることだけは確かな事実だと、研究者たちは言っていたはず。


「私たちの宇宙も、萩の宇宙も似たようなものだね。萩のほうは友人の色を纏っているけれど、さてさて、我々の宇宙は何の色を纏っているのやら」


神、というものなのかもしれないねぇ? どこの神かは知らないが。そう言ってニッタリ笑う。


「いずれにせよ、その二つは混ざりあってはいけないものだ。彼岸と此岸、あの世とこの世のように。ただ、始まりが人と物との出会いだからねぇ、理がどうなっているのかわからない。穴が開いたままだと、そこからぐるっと裏返るかもしれませんよ?」


「う、裏返る?」


俺の頭の中を、これまで読んだSFが走馬灯のように過ってゆく。そんな話、あったかな……? いや、俺が読んだことないだけかも……。


「伯父さん!」


真久部さんの低い声。俺のために伯父さんを諫めてくれてるんだな──。だけど真久部さん、SFだったらそういう話も有り得るというか、加速が過ぎて飛び続けて宇宙の果てを越えて別の宇宙に行く船の話もあったような……。


「揶揄ってばかりいないで、今回どうして何でも屋さんにお願いすることになったのか、それを教えてあげてください」


そのために今日はここにいるんでしょう、と伯父を睨む。


「……え?」


なんか、ガクッときた。俺、揶揄われてたの……。今までぐるぐる考えてたのは何だったんだろう? 伯父さんの本気とおふざけの違いがわからない、とまたぐるぐるしていると、甥っ子に叱られようがどこ吹く風の伯父さんが、「ああ、それね」とわざとらしく手を叩いてみせた。


「何でも屋さんが最適だったんだよ、あの“鳥居”を捕まえるには。アレの正体が何であるかを知っている我々では、上手くいかないどころか、失敗していたはずなんです」


「ど、どういうことですか?」


()()()()()()()()、アレが何であるかを。その設定、生い立ち、これまでのストーリー。何を望み、どうしたいかを」

次はもっと早く投稿できるよう、がんばります。

よろしくお願いします。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、元はみんな同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』慈恩堂以外の<俺>の日常。
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