警備のお仕事 2 12月24日。 終
整理整頓のため、「何でも屋の<俺>の四季」からこちらに移します。元のタイトルは「ある日の<俺> 12月24日。 警備のお仕事 2」です。全く同じ話なので、既読の方はスルーしてください。
本日は二話投稿です。
午前五時はまだ真っ暗だ。
眠い。普段、こんな時間<に>起きることはあるけど、こんな時間<まで>起きてることはないからな。
制服から自分の服に着替えて帰ろうとした時、社長から連絡が入った。何もなかったか、と聞かれたので、相方の兄ちゃん(磐田というらしい。社長の親戚だそうだ)と顔を見合わせ、何も異常は無かったです、と答えた。
そしたら。
「いやあ、慈恩堂の真久部さんに聞いた通りですねぇ。あなたなら大丈夫、と太鼓判押してくれましたから」
すごく嬉しそうな声で、それはいいんだけど。
何でここで真久部さん? あの古道具屋店主に何を聞いたんですか、社長!
問い詰めたけど、曖昧に誤魔化されたまま連絡は切られた。相方の磐田君も首を捻っている。彼はたまにバイトでどこかの警備に入るけど、このビルは初めてらしい。ただ――
「前に、ちらっと古株の人に聞いたことがあるんですけど・・・」
「え、何?」
「すごく<出る>現場があるって・・・」
出るって、これ? と、俺は前に出した両手をだらり、と下げてみた。磐田君は頷く。
「・・・」
「・・・」
無言で見詰め合う俺と磐田君。
「まっさか~! そんなはずないよ。ここに一晩いたけど、何にもなかったじゃないか!」
「そ、そうですよね~!」
二人で「あはははは」と笑いあう。
「だけど・・・」
ふと真顔になった磐田君が言う。
「どんなに<出る>とこでも、そこに居るだけで出なくなる、稀にそんな人が存在するって、聞いたことがあります。もしかして・・・」
じっと俺を見詰める磐田君。
「や、やだなー。気のせいだよ。テレビの心霊写真特集だってさ、嘘ばっかりだっていうじゃない。ダメだよ、暗示にかかっちゃ。怖いと思って見たら、どんなものでも怖いよ」
「気のせい、ですか?」
「そうだよ、そうに決まってる。気のせい気のせい! 考え込んだら負けだ。そんなことじゃ、いつか変な壷とか買わされちゃうぞ。なんだかよく分かんないけど、そういうのは全て気のせいと勘違いだよ」
磐田君は今までそういうの、見たことある? と訊ねてみたら、一度も無いです、と答えが返ってきた。
「ほらね。そんなもんだよ。社長も真久部さんもなんか勘違いしてるんだ、きっと。さ、もう帰って寝ようよ。お互い、徹夜には慣れないから辛いよね。今日なんかせっかくクリスマスイブなのにさ~」
そうですね、とようやく磐田君も笑ってくれた。ほんとに何だか分からないけど、考えないほうがいい。
数日後。慈恩堂の真久部さんとうっかり道で出会ってしまった。
「あなたと磐田君、二人揃えば最強。本当に、鬼に金棒ですよ」
どういう意味かはもう聞かなかった。聞いたら負けだと思った。っていうか磐田君、きみ、俺と同じカテゴリーらしいぞ?
「あなたたち二人揃ってのの宿直勤務以来、出なくなったそうですよ、あのビル。良かった良かった。紹介のし甲斐がありました」
そうかいそうかい、何だかよく分からないけど、あの警備会社から振り込まれた一回だけの警備料、思った以上に高額だったけど、出なくなったからだったのか~。
・・・
・・・
<何が>出なくなったかなんて、考えない。考えないんだったら!
自分メモ。
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