表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/417

双子のきょうだい 後日談14

「弟は、そのまま神職になるための修行をすることになりそうです」


三日三晩もうなされるって、どんな怖い目みせたんだよ、狛犬! と一人慄いていた俺は、百日紅氏のその言葉にびっくりして、思わず聞き返した。


「修行? 神職って・・・そこの神社のですか?」


「そうです」


「でも、お話を聞いていると、その、失礼ながら、あまりそういった職に向いていらっしゃらないような」


俗塵にまみれてるというか、娑婆っ気(っていうのも変かな)たっぷりっていうか、罰当たりで、とても神社だの寺だので大人しくしてそうに思えないんだが。


「向いていなくても、弟はそこで頑張るしかないんですよ」


百日紅氏は、何かを諦めるように深い息を漏らした。


「先ほど、当家の狛犬は弟のことを『怒ってはいるが、見捨ててはいない』と申し上げましたが、今後、もし弟が勝手にその神社から出て元の生活に戻ろうとすれば、確実に見捨てられ、命を取られるでしょう。それだけのことを弟はしてしまいました」


「う・・・」


この百日紅家に代々伝わる、家宝のような狛犬を売り飛ばそうとしたんだもんなぁ。子供の頃、遊んでもらった(?)恩も忘れて。


「狛犬は、弟を座敷牢から連れ出し、縁の神社に置き去りにしました。つまり、そこで心を入れ替え修行をして、生涯御祭神に仕えよ、という意味です。狛犬のくれた、それが最後のチャンスだということでしょう」


「そうですか・・・」


何て言ったらいいのか分からない。だけど──


「赤の他人の、おれ、いえ、私が言うのもおかしなことだとは思いますが、狛犬は弟さんのこと、本当に気に入ってるんでしょうね。そうでなければ、見捨てるも何も、まず許してはくれないような気がします。更正する機会を与えてくれるなんて、破格の扱いのような・・・」


一週間ものあいだ、彼らの領域(?)に閉じ込めて、こちらの世界に戻してからは三日も高熱で苦しめて。怖い考えだけど、殺そうと思えば、いつでも殺せた、はず。それをしなかったというのは、狛犬兄弟は百日紅氏の末弟のこと、そうとう気に入ってるってことだと思うんだ。


そこまで考えた時、突然耳鳴りがして、俺は座ったまま頭を抱えこんだ。




──この子は、このまま俗世間に置いておくと、身を持ち崩してしまうから。

──自分で命を縮めてしまうから。

──僕たちが保護することにするよ。

──そのためには、死ぬほど怖がらせておかないとね。




くすくす、くすくす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、元はみんな同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』慈恩堂以外の<俺>の日常。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ