双子のきょうだい 後日談10
「兄弟ですか・・・」
五月のあの日。店主の真久部さんに頼まれて、慈恩堂で店番してたあの時。
抗いがたい睡魔に負けた俺の、夢の中に出てきたあの子たちは、やっぱりこの百日紅家の神棚(というか、これだけ立派だと、屋敷内神社といっていいんじゃないだろうか)の狛犬の化身だったのかな。・・・そうなんだろうなぁ。
――ぼく、まくべのみせもおじさんもきにいったよ。おじさんのにおい、ちゃんとおぼえたから、また兄ちゃんとあそびにくるね
あの時と同じ幼い子供の声を、もう一度聞いたような気がした。
ああ、そうだった。あの子たちにお菓子あげたかったな。店の留守番を引き受けた時には、いつも店主がこれでもかってくらい菓子をいっぱい用意してくれてたから。双子はすぐ消えてしまったから、果たせなかったけれども。
いや、あれは夢だったんだっけ。だけど、とてもリアルだったから、もしかしたら現実だったのかもしれない。
そんなことを考えながら、俺はすっと誘われるように<アルファ>の頭を撫で、また、<オメガ>の頭を撫でていた。どこかから、子供のくすぐったそうな笑いが聞こえてくるような気がした。
「・・・ん・・・──さん・・・」
ん? んー? ふかふかの仔犬、可愛いなぁ。
「・・い・・・ょぶ・・・か? ・・・さん・・・」
ふふ、二匹とも固太りして。鼻もつやつや。よしよし、健康状態は大変よろしい。って、おい。お前たち、重いぞ。飛びつくな、かじるな。ちっとも痛くないけど、ダメ!
「・・・──さ・・・ん!」
こらこら、顔舐めるなって。
「──さん!」
「んー、もう、舐めるなってば、くすぐったいだろ・・・って、あれ?」
「大丈夫ですか?」
ぱちっと音がするほどの勢いで目を開けた。開けた、ということは、それまで目を閉じてたってことだ。目を開けた先には、百日紅氏の少し青ざめた顔があった。
「どうしたんですか、百日紅さん。顔色が良くないんじゃ・・・」
そこまで口にして、おかしなことに気づいた。
俺、寝てる? 畳の上に寝そべってる? 何で?




