表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/415

双子のきょうだい 後日談5

俺の心の声が聞こえたんだろうか。百日紅氏は安心させるように俺の肩をぽん、と叩いて言った。


「怖がらなくても大丈夫です」


「はあ・・・」


そう言われても、なぁ。


「この家に来た人全員が迷うわけではありませんよ。迷わない人の方が多いです。迷ったといっても、この部屋にたどり着いた人の場合は、単に、呼ばれたというだけのことですし」


「だ、誰に?」


ここって、家族の誰かの部屋だったりするのか? ・・・まるで生活感がないけど。どっからどう見ても屋敷内神社。


「代々の言い伝えによると、この狛犬が呼ぶのだということです」


「狛犬が・・・」


むくむくの大型犬の仔犬のような大きさの、この阿吽たちが?


「・・・呼ばれると、どうなるんですか?」


「別段、悪いことは起こりません。特に良いことも起こらないということですがね」


百日紅氏は悪戯っぽく笑った。。


「ただ、この狛犬は甘えん坊で、気に入った人間が来ると自分たちのところに呼ぶのだそうです。そういう時は、頭を撫でてやると喜ぶのだと言い伝えられています。」


うーん。その行動は、まるきり遊んで欲しがりのわんこ。本当だとすれば。


「さ、せっかくだから、撫でていってください。そうそう、こちらの阿形がこの五月に盗まれましてね。あの時は慈恩堂さんにお世話になりました」


「ぬ、盗まれた?」


俺はまじまじと、ぱかっと口を開けている阿形の狛犬を見た。・・・俺の知ってる神社の狛犬の阿形と比べると、幾分のどかな顔をしているような。だけど、俺が慈恩堂で見たのは・・・


「盗まれたのは、吽形の方じゃないですか? おれ、いや、私、慈恩堂の店で見た覚えが」


見ただけじゃなくて、うっかり尻というか太腿に敷いてしまった覚えが。


えーと。そうだ、あの日。


あの日は、攫われたお兄ちゃんを探しに来たんだといって、どこかの子供が慈恩堂を訊ねてきたんだっけ。あの子、いつの間にか姿が見えなくなって・・・俺が心配してたら・・・




「大丈夫。僕の持ってるこれ」


そう言って、店主は懐をぽん、とたたいた。


「これの匂いに安心して、ちゃんと大人しくついて来るでしょう」




あの時の店主の言葉、思い出した。


これの匂い、と彼が言っていた<これ>というのが、今、目の前の阿形の狛犬が座ってる敷物で・・・たしか、この敷物は攫われた子のお気に入りだって聞いたような・・・


あれ、あれ、あれれ。だんだんわけが分からなくなってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、元はみんな同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』慈恩堂以外の<俺>の日常。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ