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双子のきょうだい 後日談2

遠くから見ると、甍の波。近くから見ると、横たわる巨大クジラ。ぐるりを取り囲む白壁が柔らかく太陽を弾くさまは、まるで豪華客船のよう。


てかさ。


こんなでかい純和風建築の民家、見たことない。まるで、何階建てかのビルを横倒しに置いたような、圧倒的な存在感。鬼瓦、凄かったな・・・玄関もやたらに広かったし。


「す、すごいお屋敷ですねぇ・・・」


風通しの良い明るい座敷で、俺はこの屋敷の主人、百日紅五十五郎さるすべりいそごろう氏と対面していた。


「いえいえ、先祖代々の家を守っているだけでねぇ」


にこにこ笑う百日紅氏。いや、その<守ってるいるだけ>でもすごいと思います。年間どれくらい維持費いるんだろう・・・うーん、想像出来ない。


「あの、こちらが慈恩堂から預かってきたものです。ご確認ください」


さっさと用事を済ませて帰ろう。あんまり居心地良すぎて落ち着けないっていうか。矛盾してるけど。別世界だしなぁ。


「ほうほう、これはこれは」


包みを開き、箱の中から仏像を取り出した百日紅氏は、口元を綻ばせた。


「とてもありがたい、ありがたい仏様ですよ。ここまで運んできてくださったあなたにも、分かるでしょう?」


うれしそうに同意を求められたけど・・・うーん。俺には何とも答えようがなかった。


にこにこしながら、俺が何か言うのを待ってる百日紅氏。


こ、これはあれか? 列車内の冷房で冷えた身体に仏像が暖かくてありがたかったとか、そういう実際(?)の体験を伝えるべきなんだろうか? いや、いやいやいや。そんなこと、言えるわけないだろ。頭が気の毒な人だと思われるじゃないか。


「そ、そうですね。お姿を拝見するだけで、自然に両手を合わせてしまいます」


とりあえずそう答えておいて、俺は仏像に向かい、眼をつむって両手を合わせてみた。手と手の皺を合わせて、しあわせ。なむー・・・けど、次の百日紅氏の言葉を聞いて、俺は思わずぱちりと眼を開いてしまった。


「本当に、慈恩堂さんはいつも良いご縁を運んでくださるものです。この仏様も、私がこれと指定して手に入れて頂いたものではないのですよ」


え? こんな高そうなもの(もの、と言っては失礼かもしれないけど)を、時価、じゃなくて、えっと、何だろ、お任せ? お任せで購入を決めていいのか?


世界が違うなぁ、と思いつつ、はあ・・・。と空気の抜けたような声で相槌を打つ俺に、百日紅氏は続ける。


「当家に来てもいい、または、来たい、というお気持ちのある仏様に出会ったら、是非教えてくださいとお願いしてあったのです」


気持ち?


えーと。俺がお運びしたその仏像、実はリ○ちゃん人形とか、ファー○ーとかと同じように、どっか押したり引っ張っりしたら「お話」が出来るんでしょうか?


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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、元はみんな同じ<俺>。
『一年で一番長い日』本編。完結済み。関連続編有り。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』慈恩堂以外の<俺>の日常。
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