『仕事』
長らくお待たせしました。
最近は忙しくてなかなか書けませんでしたが,ようやく出来上がったのでお楽しみください。
薄暗い森の中を数台の馬車がゆっくりと進んでいく。
馬車の中には手足を縛られ,口と目に布を巻かれた人間が乗っていた。
周りの者は全員が剣や槍,弓などで武装しており,商人には決して見えない。
彼らは町や村から人をさらい奴隷商に売ることで生計を立てている盗賊なのだ。
「今回もなかなか大量だな」
「あぁ,まったくだ。しかも,今回は上玉もいやがる。それなりの額になるぜ」
「そりゃいい! うまい酒が飲める」
「まったくだ」
盗賊たちは取引が成功してからの報酬をどうさばいていくかに思いをはせていた。
「全員,止まれ」
先頭の馬車が止まると後続の馬車も動きを止める。
「どうしたんだ?」
「木が道を塞いでるんだ」
男が指さす先には倒れた木によって道がふさがれていた。
「この前の嵐のせいだろう。仕方ない,ここで少しの休憩だ」
盗賊のリーダーの指示により,盗賊達の足は止まった。
彼らが通っている道は森に詳しいものでなければ知らない道のため人通りはほとんどない。そのおかげでこのように盗賊に使われるのだが。
「2時間交代で見張りにつけ,休憩が済んだら木を退けるぞ」
盗賊のリーダーが指示を出すと。
休息をとる者と見張りにつくものに分かれた。
「ついてねぇぜ」
「いいからしっかり見張れよ」
「わかってるよ」
若い2人の盗賊は愚痴をこぼしながらも馬車の脇に見張りとしてつく。
◆
林の中から盗賊たちの動向を伺う。
顔にはフェイスペイントをし黒やら茶色やら緑などの周りの色と同化する塗料を塗っている。
そのため完全に林に溶け込んでいるため簡単には見つかることはないだろう。
盗賊はざっと30人前後といったところの様だ。
装備は,こちらの世界では当たり前に使われているバスターソードと森や市街地でも取り回しがしやすいように少し短くした槍,弓といったなかなかの装備だ。しかも何人かはチェーンメイルを着ている。
相手がどんな装備だろうとやることは変わらないが。
「総員配置についたか?」
『こちらアルファいつでも行けます』
『こちらブラボー配置につきました』
『こちらチャーリーこっちもオケーです』
無線のスイッチを入れ仲間に連絡をとる。
この世界の連絡手段は,人による伝令か手紙しかない。
しかし,無線にはほとんどのタイムラグがなく相手に情報を伝えられ連携をとることができる。
改めて通信機器のありがたみがわかる。
俺がこの世界に来てすでに半年が経とうとしていた。
村を奪還してからは,こちらの世界についてとにかく学んだ。
世界情勢,文字,歴史,文化,種族・・・・・・・。
半年間はとても有意義な日々だった。
そして,思っていた以上にこの世界はファンタジーだ。
まず,魔王が存在していたらしい現在は魔王は勇者によって滅ぼされて存在はしない。しかし,ゲームに登場するトロルやゴブリン。挙句の果てにはドラゴンはいるそうだ。
次に,大昔は魔法も存在したらしいが現在はもう魔法を使える者はいない。
その代わりに,魔法を使うことができる『魔装』と言われる装備が存在する。
魔装がどのように作られたのかは知られていないが,その圧倒的な力故に一撃の攻撃で国を滅ぼすことができる魔装まで存在する。
戦略兵器並みだな。
この世界で元の世界に帰る方法を探していくために,傭兵になることを選んだ。
そして,現在は冒険者ギルドに所属している。
『冒険者ギルド』
RPGではお約束のごとく出てくる組織である。
日本で言うハロー〇ークの様な企業である。
ランクがF~Sまで存在しており,ランクに合った仕事を紹介してくれる。
登録が必要になるが後は特には問題はない。
町や国の首都には必ずギルドに関係する組織は存在する。
冒険者ギルドに所属している組織は,冒険者に対して割引などの優遇処置がもれなくついてくる。
主に仕事には,魔物,盗賊の討伐。遺跡や特殊な地域の調査。人物,施設の護衛など様々な仕事が存在する。
今回請け負っている仕事は,その中の盗賊の討伐に入る。
「チャーリー,見張りを狙撃しろ」
無線機に告げると視線の先の2人の見張りは胸と頭に7.56ミリ弾を1発ずつくらい倒れる。
他の見張りと休んでいる盗賊は誰も気づく者はいない。
チャーリーが行ったのは,中距離による狙撃だ。
サイレンサーを装着した狙撃銃の銃声は,敵に聞こえることはなく見張りを排除することができた。
見張りを片づけたチャーリーはすぐさま移動を開始した。
狙撃は同じ場所から撃っていればいずればれる。
今回は必要ないかもしれないがいい経験になるため行っている。
「アルファ,ブラボー前進。敵戦力を削れ」
『『了解』』
今回の作戦に当たっては全員の銃には音を抑えるためサイレンサーが装着されている。
銃声で馬が驚き無駄に人質に被害が及ばないようにするためだ。
この世界の馬は銃声に慣れておらず暴れる可能性が高いのだ。
そうすれば無駄に被害が出てしまう恐れがあるからだ。
人攫いの被害にあった人を助けることも今回の目的でもある。
北と南から盗賊たちを追い詰めるように敵の戦力を削っている。
ようやく盗賊が異変に気付いて来たようだ。
そのころにはすでに15名弱まで数を減らしていた。
槍を構えてこちら側に向かってくる盗賊を冷静にアイアンサイトに捉え引き金を絞る。
銃口から飛び出した弾丸は,盗賊の頭部を粉砕し後方に抜ける。盗賊の死体は状態を大きくのけぞりながら地面に倒れる。
他の場所でも盗賊たちを圧倒的暴力が襲う。
銃の利点は,訓練が短期間で済むことが上げられる。銃の種類にもよるが,日々鍬を持って生活していた農民が銃を持つことでひと月では一兵士として敵騎士を殺せるようになる。
さらには,殺しの簡易化だ。
引き金を引くだけで敵の命を絶つことで罪悪感を軽くできる。
『オールクリア!』
よし訓練道理しっかり動けているな。
実戦でしか養えないものもある。
「リース,人質の容体を確認しろ。必要ならハンヴィーで移送する」
『了解しました』
さて後処理もあるがひとまず家に帰るか。
「全員,撤収だ」
俺たちの家に――――――。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。