『僅かな希望』
ようやく続きができました。
長らくお待たせしまして申し訳ありません。
どうぞお楽しみください。
救急バックパックから包帯を取出し村人に巻いていく。
今回の盗賊による村の襲撃は怪我人は多く,死傷者も多数出ている。この世界では人が当たり前のように死ぬ。
実際,元の世界でもそうだったが目を背けていただけだ・・・・・・。
包帯などは村のはずれに投下されていた金属の箱に十分すぎるほど詰め込まれていた。ついでに追加の装備も。
今回もPDAに位置が示され向かってみると箱があるという状態だ。
これを投下する奴らは俺に何をさせたいんだ。
包帯の他にも抗生物質なども入っていたのでとても助かる。怪我をして手当てをしても体の抵抗力が落ちて傷口から侵入した細菌などで熱を出しさらに状態を悪化することになるからだ。
抗生物質さえ飲んでおけばひとまずは安心だ。
「ジュンさん,ここにお湯を置いておきますね」
「すまない,ファルさん」
この子は妹と逃げていた時に森の手前で助けた少女だ。
この村の村長のお孫さんで森に,妹のリィ二ちゃんと薬草を取りに行っている時に村の異変に気づき村に戻った際,盗賊に運悪く出くわして森まで逃げてきたそうだ。
村には村の代表として村長1人がいるらしい。
この国は5つの領地が合わさった『ブリューゲル皇国』を呼ばれており,この大陸では最大勢力の3国家の1つだという。
ブリューゲル皇国は,はるか昔に一頭の黒龍がこの世界に現れ建国されたそうだ。
人々の争いが絶えない時代であったが,強大な力を持った黒龍により争いの時代に終止符が打たれた。
黒龍はこの国を作りこの国でもっとも美しく,強さを併せ持つ5人の女性に自らの血肉から作られた武器を渡しこの国を守る剣とした。
その黒龍は人の姿を取ることができ,黒髪で黒い瞳を持った青年の姿をしていたと伝承では伝わっていると村長のカルティルさんから聞くことができた。
この村の村長はカティルという年配の老婆だ。この老婆はこのあたりの唯一の医者で村人や他村からも信頼されている。
この世界の文明レベルは武器や防具,住居などを見ると中世ヨーロッパレベルだと思われる。
なぜ言葉が通じるかはいまだにわからないがコミュニケーションが取れることは大きな武器になる。
カティルさんの協力もありようやく最後の怪我人の手当てをし建物から出る。
建物は換気はしているが充分ではない。
新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。
盗賊の襲撃から半日,村の損害は住宅の全焼をいれてもなかなかひどいものだった。
村に警備兵が駐屯していたため村の全滅は免れたが,今残っている兵士は4名ほどで残りの6名は村人を避難させている際に盗賊との戦闘で死亡した。
警備兵がいるということはこの領地はそれなりに豊かで民のことを第一に考えていると思われる。
『国』とは『民』・・・・・・・これを軽く考えれば国は簡単に滅んでしまう。
これは俺の考えだが正しいのかなんてわからない。
村人の応急処置が終わっても休む暇はない。
遺体の処理が残っている。
こちらの世界でも宗教の違いで遺体の埋葬は違ってくる。
ある国では土葬をし,日本では火葬をする。
こちらでは土葬が一般的らしい。
盗賊の遺体は使えそうな武器,防具は回収し大きな穴を掘り一か所にまとめて村のはずれに埋めた。
「このたびは助けていただきありがとうございました」
村長であるカティルさんの家でお礼を言われ今後のことについての話をした。
「いえ偶然近くを通っただけですので」
「それでもあなた様はこの村をお救いになった。それに加え孫たちを助けてくださった。感謝してもしきれません。今後につきましてはこの村でしばし休んでいってくださいませんか? このような村ですが恩人のジュン様をもてなすくらいはできます。それにあと半日もすれば使いを出したものが近くの町から駐屯兵を連れてくると思いますゆえ」
「そうですか,それではお言葉に甘えさせていただきます。それと,盗賊につかまっていた人たちをこの村で保護してもらえないでしょうか?」
命が助かりはしたが彼らの愛する者たちは盗賊に殺され希望を失っている。そこに,新たに生きる希望を与えてあげたい。
正義感で動いているのではない。自分が勝手に助けた挙句そのまま放り出すのが嫌いなだけだ。
「わかりました。あの方たちはこの村で責任をもって保護します」
「ありがとうございます」
ひとまずこれで奴隷になりかけた人たちのこれからは決まったが,まだ気がかりなことがある。
「それと聞きたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「この村のあの建物は元からあそこにあったのですか?」
「あの建物でございますか?」
俺が言っているのは村人たちが立て籠もっていた建物のことだ。
あれは船舶の艦橋そのものだ。ツタが張っている部分やところどころ錆びてはいるがまぎれもない。
さらにただの船舶ではない。明らかに軍で使われていた物だ。
俺の目線の先にはツタがはって使えるかわからないCIWSが備え付けられている。
CIWSは艦船を目標とするミサイル,航空機を至近距離で迎撃するために生まれた個艦防御システムの艦載兵器の総称だ。
日本語では『近接防御火器システム』などと呼ばれている。
「あの建物は私の幼いころから存在していました。だれが何のためにあれを作ったのかわまったくわかりません」
「・・・そうですか」
カティルさんとの話が終わりやっとひと段落だ。
元の世界の船がるということはこの世界に来たのは俺だけじゃないということになる。もしかしたら俺と同じでこっちに来ている人間もいるかもしれない。少しだが希望が出てきた。
後で船の中を調べてみようなにかわかることがあるかもしれないな。
そういえば,よく考えてみたら寝てないな俺・・・・・・。
いろいろありすぎて忘れていた。
いかがでしたか?
村を救った主人公。
そこで彼は古びた船を見つける・・・・・。
いったいこの船はなぜこの世界にあるのだろうか。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
次回の投稿は一か月先を予定していますが,それよりも早い投稿になるかもしれません。ご了承ください。