『村の奪還(1)』
今回の話は盗賊の殲滅戦です。
どうぞお楽しみください。
俺はバックパックの脇に固定していた狙撃銃を手にとりうつ伏せになる。
村の東側の見張りが一望できる位置につき,M110スナイパーライフルに着けられたロイポルト製の3.5×10変倍スコープで目標を捕らえる。銃を支えるハリス製のバイポッドのお陰でほとんどブレがなく狙う事が出来る。
狙撃精度の高さだけでなく,極めて堅牢な構造であることから多くの兵士から信頼れていたボルトアクションであったが,連射能力の必要な市街戦でには不向きだった。
時代が変われば戦い方も変わる。
狙撃手―――『マークスマン』にも市街戦での戦闘能力が必要だと考えられた。
マークスマンとは,選抜狙撃手のことを指しアメリカ陸軍の歩兵小隊に属している兵種である。
主として800メートル以内の標的に対して,より正確な射撃だけではなく素早い攻撃を求められ,通常の歩兵と狙撃手の中間的な存在といえる。
マークスマンは『マークスマン・ライフル』と呼ばれる小銃を使い,約500メートル以内までを弾道学的に有効射程とし高い命中精度を誇る。
息を大きく吸い込み呼吸を止める。
自身の鼓動がリズムよく聞こえてくる。
人差し指が引き金にかかり引き絞る。
高性能の消音器が銃声を抑えこむ。
銃口から飛び出した7.62ミリ弾は殺意の固まりとなり,見張りをしていた盗賊の心臓を貫通する。狙うのは命中率が極めて高い体の中心だ。
狙撃した盗賊が地面に崩れ落ちる前にすぐさま次の盗賊に狙いを定め撃つ。
わずか数秒で馬車の見張りの盗賊は5人とも見事に心臓を打ち抜かれ即死した。
狙撃銃をバックパックの脇に行動の邪魔にならないよう固定し,自動小銃を構えながら前進する。
『M4カービン』・・・・カービンとは本来歩兵用小銃より銃身が短い騎兵用小銃の事だが,現在では全長を80センチ以下の銃のことを指す。
本来のカービンは馬上での取り回しを考慮して短縮軽量化した小銃だったが,射撃時の反動と発射音が激しくなり,命中精度が掛けるという欠点があった。現在,このカービンという名称は『小型ライフル』という意味合いで使われえており,小銃を持たない下級将校や車両乗員,空挺部隊などの制限がある特殊部隊,近接戦闘が想定される兵士に多く使われている。
ライフルとはライフリング(銃身の螺旋状に刻まれた溝のこと)加工がされた銃をライフルと呼ぶ。口径7.62ミリを例にすると,溝の深さは0.1ミリあるので弾丸は7.82ミリに作られる。そして,火薬の猛烈な圧力で腔旋(ゆるやかに回転している数条の溝の事ことで)に食い込んで回転をあたえられる。
村にだいぶ近づいた。
先ほど狙撃した盗賊たちは見張りをしていた位置に倒れており胸部に穴があき,おびただしい量の血が伺える。まだ,他の盗賊には気づかれていないようだ。
馬車は3台止まっており,1台が盗賊たちの移動用だと思われる馬車ともう2台が護送車のようなもので周りを木で覆い扉には錠が掛けられている馬車だ。おそらくこれにさらった人間を入れるのだろう。
すぐさま見張りの盗賊たちの死体を馬車の下に片付ける。もちろん死体から鍵の束を拝借してだ。
護送車の中には何人か捕まっているようだが今は村の方を優先した。
村の入り口には鎧を着た兵士と盗賊の死体が複数倒れている。
状況からして村の入り口をこの鎧を着た兵士が守っていたが,盗賊たちを止めようとして突破されたようだ。警備兵がいるならまだ望みはあるな・・・・・・その証拠に村の中はまだ悲鳴や金属同士をぶつけた音が聞こえてくる。
ポケットが振動するのに気がつき中のPDAを取り出し画面を見る。
『盗賊を殲滅せよ』
その文章を読んだ瞬間,顔に笑みが浮ぶ。
これで目的がハッキリした。
今回要求されるのが速さだ。
いつまで村人達が盗賊の襲撃から耐えられるかわからな以上盗賊を殲滅しつつ住民に接触することにしかないな。
自動小銃の弾倉は全部で12個ほどで弾薬は問題ないな。
M4カービンが軍用自動小銃として今なを健在なのは何も使いやすいからだけではない。
この銃にはSOPMOD-I用M4A1キットと呼ばれるオプションが存在している。USSOCOMにより,その管轄下の部隊での運用のため開発されたものである。
M4A1キットの特徴は、ナイツアーマメントによって開発されたRISハンドガードシステム、全長が短くなり迅速に着脱可能になったM203グレネードランチャーと専用リーフサイト,KAC社サプレッサー,KAC社リアバックアップサイト,インサイトテクノロジー社AN/PEQ-2A可視/赤外線レーザーサイト,暗視装置付トリジコン社ACOGリフレックス・スコープ,M68エイムポイント社レッドドットサイトやEOTech社ホログラフィックサイトなどである。このキットはさまざまな任務に対応するため組替可能の設計で,現在は多くの部隊で使用されている。
作戦内容により銃のアクセサリーを選び作戦を円滑に進める事ができるようになったのだ。
現在,所持しているM4カービンは,暗視装置付EOTech社ホログラフィックサイトを装着しハンドガードには射撃を安定させる為グリップが着けられている。
銃声は抑える必要がないのでサプレッサーは装着していない。
M4カービンを構えながら村に侵入する。村の民家に沿って進んでいく。
村の入り口からすぐの民家で物音がしたため音を立てないように近づいていく。どうやら室内には何人か敵がいるようだ。
窓から室内を覗き込む。
さいわい室内はランプの光で薄暗いが十分,腰に剣を装備している男が3人確認することができる。
窓から全員を狙えるな。
民家の壁に張り付く。
軽く息をはき,銃を握る手に力が入る。
俺はただ冷徹に引き金を絞るだけ。
素早く窓の外からホログラフィックサイトで狙いを定め引き金を引く。
弾丸が容赦なく肉を食い破る。他の2人はいきなりの銃声に驚いたようで俺への対応が遅れる。まあ,反応したとしても結末は変わらない。死ぬのが,早いか遅いかの違いだ。
銃を横にスライドさせていきホログラフィックサイトに敵が重なった瞬間引き金をひていていく。いちいち狙っていたら遅すぎる。ただの的ならば動かないが標的は常に動く。
まずは3人・・・・・。
そのときの俺はただ正確に素早く敵を殺して動く機械だった。
次で『村の奪還編』は終わりにしたいと思っています。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。