『帝都 監獄街』
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銃声が鳴り響き、人型の的に穴が開く。
屋外に作られた射撃場では銃を持った少年、少女たちが的に銃口を向けて引き金を引く。
子供たちが使っている自動小銃は、5.56mm×45弾を使用しているので比較的発砲時の反動が小さいので子供でも撃つことができる。
ここは、身寄りのない子供たちを集めた訓練キャンプだ。各地にここと同じように訓練キャンプは存在する。しかし、各地につくられている訓練キャンプは大人を中心としたものだ。子供を中心としたキャンプはここだけだ。そのため多くの少年、少女が日々訓練に明け暮れる。
初めの内は訓練が辛くて夜、泣いている子供もいるが1月も過ぎれば訓練にも慣れ、人型の的を撃つのにも慣れてくる。
「訓練は順調か?」
「はい、どの訓練生も物覚えがいいです。これなら次の作戦までに何名か参加させることもできます」
確かに彼ら、彼女らは物覚えがいい。銃の分解、整備、地図の読み方。それに午後には座学も行っており読み書きや、計算なども教えている。
「しかし、いいんですか?」
「なにがだ」
「なにがだって・・・わかって言ってるでしょう。隊長のことを最近じゃ子供で人殺しをさせる悪魔なんていう連中もいるんですよ」
隊員の言葉に力が籠る。
確かに自分が最近、少年兵、少女兵を作戦に参加させることで俺への悪評が付くようになっている。勇者召喚賛成派が流しているのかもしれないが、悪評で子供たちが生きていく力を身に着けられるなら安いものだ。
「それで、強くなる子供たちがいるならそれでいい。汚れることを恐れてたら何もできないさ」
「同感です。できることもしないで文句だけを口にするようなクズにはなりたくない。ですが女性隊員の一部がその噂を流している勢力の建物を吹き飛ばしました」
思わず頭を押さえてしまう。確かに、悪評を聞いた隊員がその勢力の場所に戦車と完全武装で出撃しようとしているのは止めたがどうやら完全に阻止できなかったようだ。女性隊員からの慕っている気持ちは理解している。どこぞの鈍感主人公とは違い、しっかり彼女たちの気持ちに気が付いている。だが、誰と恋愛関係を持とうとも考えていない。それに、ハーレムは俺には荷が重すぎる。複数の女性と関係を持とうとなると胃が確実に崩壊する。
取りあえず発破を実行した一部の部隊に関しては頭を冷やすために特別訓練メニューを課すことで収拾をつけよう。
「市街戦が予想される。状況判断、近接戦闘、近接格闘に優れている子供たちを選抜してくれ」
「了解です」
◆
鉄錆と硝煙のにおいでいっぱいの路地に立ちつくし大きな溜息を吐き出す。
目の前に広がるのは血だまりに横たわるかつて人であったもの。
『M4カービン』の派生型でもある『M4コマンドー』から残弾が少なくなった弾倉を抜き、マガジンポーチから新たに取り出した弾倉を装填する。
『M4コマンドー』は『M4カービン』の銃身を約7.6cm短くし携行性を高めたモデルである。ストックを縮めれば全長がわずか700mmのサブマシンガン並みの大きさになるが、拳銃弾を使用するサブマシンガンよりも威力があり射程も長い。しかし、銃身を短くすることでデメリットもある。
具体的に上げるなら威力の低下と作動方式の信頼性の低下である。本来『M4コマンドー』に使用されている弾丸はもっと長い銃身から発射されることを前提に設計されているためだ。威力低下の問題は至近距離での戦闘するといった限定することで、作動方式は各部品の大きさ、形状の見直しで改善が図られている。
「リヤ、すぐに移動するぞ」
「わかりました」
「各部隊は集合地点に移動しろ、最後まで気を抜くな」
無線で他の部隊に指示を出して住民が集まる前に路地を後にする。
俺たちは世界で大移動の影響を受けても国力が上位にある『ダスラ帝国』の首都『カニーサ』に潜入している。潜入目的として帝国での今後の活動拠点の確保と情勢調査である。
首都『カニーサ』には貴族が多く住む“上層区”、一般市民が住む“中層区”。そして、部隊の仮拠点を置いている“下層区”――――通称『牢獄街』に別れている。
“下層区”――――『牢獄街』は峻厳な崖壁により周囲から隔絶された、文字通り都市の下だ。無秩序状態に近い『牢獄街』で規律を作り、事実上『牢獄街』トップの組織の依頼で現在は動いている。
その組織の名前は『ネイサン』。
『牢獄街』でこれほど力を持った組織は存在しない。さらにその力は上層区、中層区にもその力は及ぶ。
その組織のトップが俺たちの噂を聞いて依頼をしてきた。
『牢獄街』で最近出回っている薬物の出所、それに関係している人間を潰す。
『ネイサン』はブラックな組織ではあるが薬物などの物は扱っていない。先代からの決まりだそうだ。
『牢獄街』で薬なんかをばら撒けばいつかは『牢獄街』全てが詰んじまうだから俺たちは薬は捌かない。
彼らにも彼らなりの矜持があるのだ。
集合地点に到着し各部隊の戦果、状況などの報告を聞いて待機を命じる。
『ネイサン』の頭がいる場所に向かう為、消費した弾薬などを補給し入り口に向かう。
「リヤ、待機を命じたはずだが」
「護衛です」
後ろから同じく補給を済ませたリヤが付いてくる。
銃を持っていなければ微笑ましくはある。
これまでの経験上、護衛が付かなかった移動はない。訓練キャンプにいたときからだ。しかも、揃って女性隊員が護衛についてくる。これは、俺に知らない女性が近寄らないようにしているのだろう。
この街では、強盗、掏摸、恐喝、殺人などは日常茶飯事。路地裏に死体が転がっているのも当たり前。つまり危険極まりない街なのだ。
さらにこれから向かう場所も要因の一つなのだろう。
これから向かう『ネイサン』のリーダーがいるところは何を隠そう“高級娼館”だ。
俺的には子供たちの教育には悪いと思っているが、銃を持って殺しをやらせている為どの口がいうのかという思いもある。
「わかった。だが、殴りかかってきたからといって撃ち殺すなよ」
「・・・・・・わかっています」
今の間は大丈夫ではない気がするが、しかたない。
時間に遅れるのもまずいので扉から出て歩き出す。分厚い雲がかかった空は自分の心配な気持ちをそのまま表しているようだ。
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