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『戦姫』

お待たせいたしました。

お楽しみください。

 各地の国境で『勇者召喚』賛成派の国が反対派の国に侵略を開始した。相手の言い分はこうだ『我々が人類の為に尽力しているのにそれに協力しないことは人類への裏切りである』ということだ。

 国境を侵す理由はいくらでもある。


 その国境の一部の防衛を担当しているのが俺たちの部隊である。




 鎧を着た兵士たちが雄叫びを上げながら重装甲兵が持つ大楯を正面に押し出し、槍や剣、斧などを持って突撃してくる。

 

 敵が突撃してくるところには有刺鉄線などの障害物を設置し、そこかしこに入念に偽装された機関銃陣地、迫撃砲陣地が備えられている。


 これを戦争と言っていいのだろうか?

 ただ突撃してくる人間()をただ一方的に撃つ。射撃訓練もいいところだ。


 正直に言って虐殺以外のなにものでもない。


「まだ、撃つな」


 相手がこちらのキルゾーンに入るのをただ眺める。

 学習能力の乏しい奴はこの世の中長生きできない。


「撃てぇ!」


 機関銃、迫撃砲によって敵兵士が肉塊に成り果てるのを目の当たりにしても心はいたって平穏である。

 やがて鳴り響いていた機関銃、迫撃砲の砲撃が止む。

 目の前には文字通りの地獄が広がっている。戦争というものは人間をどこまでも残酷な行為をさせる。狂わなくては戦争はやってられないか。

 各陣地の被害状況の報告を聞きながら空を見る。


 なんでこんな天気のいい日に戦争をしなきゃならないのか・・・・・。


  



 ◆





 豪華な部屋のフカフカのソファーに腰を据えて紅茶を飲む。

 ほのかな渋みの中にある微かな甘味が絶妙なバランスで口の中に広がる。


「それで、この依頼を受けてくれるのか?」

「こちらからの要望としては、報酬の半額を初めにいただきます。さらに、こちらの部隊の指揮系統は別にしていただきたい」


 目の前には灰色の長い髪の美少女が俺と同じように紅茶を飲んでいる。

 やはり迷彩服の男が紅茶を飲むよりも彼女のような女性が飲む方が絵になる。

 彼女こそが、5人の戦姫の一角を担うブリューナルの戦姫『イナンナ・エア・イシュタル』。さらに大口のスポンサーの1人でもある。


「それでかまわない。正規軍を動かすよりも金はかからないし、お前たちの兵士とうちでは戦術が違いすぎるからな。それに、口調はもう少し砕けても構わない。ここには私たちしかいないのだからな」

「いえ、仕事なのでそうゆうわけにもいきません」

「まったくお堅いな」


 この世界の戦術は、まず散開させた弓兵が矢を放ちながら、盾を持った重装甲兵を連ねて城壁として足並みをそろえて前進し、主力同士の戦闘を開始する。

 俺たちの戦術はまず敵のあらゆる情報を集めて戦わずに済むなら戦闘を回避する。しかし、どうしても戦闘を回避することができなければ一方的な戦闘が開始されるだけだ。


 今回の依頼は国境線での防衛である。

 大移動以降になって大量発生した魔物から、人類の生活圏を守るためブリューナルも軍隊をそれぞれの町に駐屯させ魔物から防衛を行っているが元々それほどの兵士がいる国でもないためどうしても国境線の兵士を回すしかなくなってしまう。

 国境線が手薄になることをいいことに他国が進行してくる可能性が高くなったのだ。

 大移動による被害が他国に比べれば少ないブリューナルの土地は喉から手が出るほど欲している。


「さて、これで仕事の話は終わりだ。ところでこの後、夕食を一緒にどうだ」

「部下の分も用意してくれるならかまわないよ」

「いいだろう。すぐにしたくさせよう」


 使用人たちがすぐさま行動を開始する。



 今日、護衛で連れてきた子供たちにもいい経験だろう。

 多くの事を見て、聞いて、体験する。そうすることで彼ら、彼女らの将来の選択権を与えるのも一つの手である。戦争だけでなく戦争が終わった後のことも考えなくてはいけない。終わりがない戦争はないのだから。


「そうだ言い忘れていた。フィーがこれとは別件でジュンに依頼があるそうだ」


 フィーとは、アルフィー・ヴェラ・フォレスターに近しいものが使う愛称である。

 俺もフィーと呼んでいいといわれたが、フィーのことを愛称で呼ぶとある人物の機嫌が物凄く悪くなる。


 ある人物の名前は―———『リア』という。

 特殊な少数山岳民族からの入隊者であり、現在は俺の護衛を務めている。


 彼女の部族は、白い髪が特徴的だ。この世界の人間は過酷な環境で生活しているためなのか身体能力は元の世界の人間よりも高い。だが、彼女の部族はそれを大きく上回る身体能力を持っている。そのせいで、彼女たちが暮らしていた国から脅威とされ軍隊による進行を受けたのだ。


 情報部の知らせてくれた情報により彼女の部族が全滅する前にヘリによる強襲をし救出することができたのだが。どうゆうわけか部族長、彼女の祖父はこちらの指揮下に入りたいという申し出があった。


族長曰く、『大きな力があった我々はこれまでいかなる勢力にも属すことはなかった。しかし、今の世は我々の力を脅威とし取り込むか滅ぼすかするだろう。どちらにも部族に未来はない・・・・・・。我らも生き方を変えねばならない。それに部族を救ってくれた恩もある』だそうだ。


 元々何人かスカウトできないかと思っていたのでこちらとしてはスムーズに話が進んで助かったのだが。


 部隊の活動が活発になるにつれて古参の隊員、ザックや双子のリル,ルルなどを部隊長にし中隊を編成、それぞれの作戦地域に展開中である。

 編成としては各人に中隊————120人前後を任せている。多くても大隊、連隊規模の400~500人ほどだ。


「別件となるとフルストの国境を片付けてからになる。生憎空いている部隊がない」

「わかった。別件の方はフィーと調整をしてくれ。さて、どうやら準備が整ったようだ。移動しよう」


 この後の夕食では、普段食べることのない高級料理が並び連れてきていた子供たちは喜んでお代わりがなくなるまで食べた。食べ盛りなのはいいことだ。そろそろ体格がよくなってきた子の服を新調しなければならないな。 


 

ご意見やご感想があればよろしくお願いします。

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