『硝煙』
どうも89Rです。
この作品を見ていただきありがとうございます。
休憩を50分に1回のペースで入れて歩き続けた。ひたすら歩いたことにより目的地にだいぶ近づくことができた。
日もおちそうなため道からこちらの姿が見えない位置で野宿をするため簡易型のシェルターをつくる場所を探している真っ最中である。
シェルターは若木や枝、葉、草などの容易に手に入る素材で作る。
まず、若木がほぼ平行に立ち並んでいる場所を見つけ木の間の地面を整地する。向かい合った若木の上端をまとめて結び、カマボコの形の様に半円を描く屋根の枠組みをつくりその枠に雨具をかぶせる。
付近には動物の通った跡やふん、爪などの痕跡は発見できていないのでシェルターを作るのには適している。
小枝を使い火口を燃やしながら着火する。火口の火がよく燃えたところで大きなたきつけを加えて、炎を大きくする。
暖を取りながら考える。
考えたくもないがどうやらここは異世界のようだ。
星座を使い方位を調べる事ができるがどうしても星座を見つけることができない。星座の中で大熊座とカシオペア座は北の方角を示す北極星を中心に回っており、1年を通して常に見ることができるのだがそれが確認できない。
さらに、想像以上に自分の体が軽い。
これは異常である。
武器、弾薬、食料やそのほかの持ち物が満載の背嚢を背負ってかなりの距離を特に歩いてたがそれほど疲れがない。恐らく身体能力の向上か若しくは俺がいた世界よりも重力が弱いのか。これは俺にとってプラスに働くだろう。
あと20分ほど走れば村にたどり着く距離まで迫っている。後はその村に言葉が通じる人間がいることを願うしかない。
それにしても異世界の夜空は綺麗だ。人工物の光がないぶん星がはっきりと見える。
大学に通っていたころはゆっくり夜空を見る機会なんてなかったからな。
俺の家族は心配しているだろうか・・・・・・。
妹は泣きそうだな。結構泣き虫だからな。
でも、泣かれるのはやだな。
そこで黒い煙に気が付いた。太陽の沈んだ方角からして、西の方角に黒い煙が立ち上っていた。
あれは目的地のほうである。あまりよろしくない状況であるのは明らかだ。夜にうろつくのはあまり良いことではないが仕方ない。
焚火に土を被せて火を消し、荷物をまとめすぐさま走り出す。幸い月明かりが夜道を照らしてくれているため装備品の暗視装置は使用しないですみそうだ。
走ること10分ぐらいだろうか森を抜けると草原が広がっており,その先に黒い煙が立ち込める村があった。
双眼鏡を取り出し覗き込む。 村は小高い丘の上に作られていた。
その村から誰かがこちらに近づいてくる。
双眼鏡は暗闇でも月の微かな光を倍増させしっかりと目標を視認する事ができた。
こっちに向かって来ているのは栗色の長い髪の少女とその子に似ているまだ幼さが残る少女だ。おそらく姉妹なのだろう。
姉妹は何かから必死に走って逃げている。その後ろから馬に乗った小汚い服装をし,腰に剣を吊っている男が2人を追いかけてきていた。このままだとこちらに着く前に姉妹に追いつくな。
明らかに姉妹にとっていい状況じゃない。
もう少し様子を伺うことにしよう。情報が少なすぎる。
姉妹はやはり森に着く前に馬の男達に追いつかれ囲まれる。
俺は森の林の中にうつ伏せで身を隠していた。銃の安全装置は外してあり,薬室に初弾は装填してある。後は引き金を引くだけだ。
この位置からでも姉妹と男達の会話が聞こえてくる。
「私達に近づかないで!」
「安心しなじょーちゃん,姉妹仲良く売りとばしてやるからよぉ」
「でもよ少しくらい味見していいよな」
「まあ,これだけ村から離れれば村の連中にはきづかれないだろうな」
やはりゲームや物語でよく登場する盗賊のようだ。
言葉は理解できる。どうしてなのかはわからないがありがたい。言葉が通じれば意思疎通が可能だ。相手によるが・・・・・・。
男達の顔には残忍な笑みが浮ぶ。あまり好きではない笑みである。
この世界は命は軽いようだ。まあ、元の世界でも住んでいる国によっては命は軽い。日本が平和すぎただけか。
問題は姉妹を助けるか否か。
幸いこちらの存在には気が付いていないようだしこのまま傍観者を決め込むのも選択権の一つでもある。しかし、どう考えてもこの姉妹は目的地の関係者だ。なら少しでも恩を売っておいた方が得策か。
話し合い・・・は、通じそうも無い為この案は却下。ならもう一つの案にするしかないか。
盗賊らしき男たちとそれの仲間を殺害し、村を奪還する。
どこのエクスペンダブルな奴らだ。
こちらは1人。相手はおそらく数十人以上・・・・・。
悪いことばかりだ。
溜息を突きながら林からゆっくり立ち上がり,太腿のホルスターから拳銃を抜く。
自分がこんな殺人を肯定する性格だったことに心では驚いているが頭はいたって冷静だ。
ゆっくりと姉妹を囲んでいる男達に近づいていく。俺の今の格好は背嚢を背負い外装を着ているため旅人に見えなくもない格好だ。
男達は俺に気がつき剣先を向けてくる。
姉妹は俺にすがるような目を向けてくる。
「だれだおめぇ・・・・・・」
「俺ですか? ただの旅人ですよ」
「そうか・・・・運がないな。残念だが,お前の旅もここで終わりだ。やれっ」
「これを見られちゃ生きて返すわけには行かないんでな!」
男の1人が俺にロングソードで切りかかってくる。
大振りな攻撃をかわし後ろに数歩下がる。
「おい! どうした腰抜け。もっと俺を楽しませろよ!」
男は笑っていた。
相手は抵抗もできないただの旅人だと思ったからだ。
「泣き叫んで助けてくださいってお願いすれば助けてやるかもしれねぇぜ!」
「そんなんで助けてもらえるならずいぶん安上がりだな」
「あぁ?」
「いや、盗賊はどこでも言うことは同じだなと」
「そうか・・・・・そんなに死にたいかだったら望みどうりにしてやるよ!」
男は完全に頭に血が上り,ロングソードを俺に突きたてようと突っ込んでくる。
冷静に自然な動きでMK23を片手で構える。
一切の躊躇もなく引き金を引く。
それほど苦にもならない反動を感じながら,MK23の銃口から45ACP弾が吐き出された。発射音は銃口に取り付けられた消音器により音を極限まで押さえ込まれた。銃弾は至近距離で男の頭に直撃し脳味噌をまき散らしながら後頭部に抜けていく。
男は仰け反りながら倒れる。
仲間の男は何が起こったのかわからずしばらく仲間の死体を眺めていた。
「さて,次はお前だ」
俺がそう言うと男は状況を把握し悲鳴を上げながらすぐさま村に向かって走り出す。
男はただ怖かった。
初めはただ居合わせた旅人かと思ったがそんなのは大間違いだ。
妙なくぐもった音とともに仲間の頭が吹き飛んだ。しばらく呆然としていたがそこで見てしまった。奴の『目』を―――――――。
あれは人を殺しなれた人殺しの目だった。
確かに自分達も多くの人間を殺している。だが,あんな目をしている奴は見たことがない。
『殺される』と男の本能がそう告げていた。
気がつけば悲鳴をあげながら走り出していた。
姉妹,そんなもの知るか!
ただ,今はこのわけのわからない奴から逃げる事を優先したのだ。
いい判断だ。だが、逃がすわけないだろ。
その昔,アメリカ陸軍は軍で使用する制式拳銃として38口径の銃弾を使用していたが1898年の米西戦争の最中に起こった蜂起の際,38ロングコルト弾の打撃力不足が判明した。だがこれには単純に狙いを外しただけという説もある。
当時のアメリカ陸軍は打撃力の強い,45口径の弾薬を求めていた。
そこで,45ロング・コルト弾を自動拳銃に適合するよう改良され,45ACP弾が開発された。その後、この実包はアメリカにおいて驚くべきほど広く普及した。
45ACP弾は,初速が亜音速のため消音器との相性が合い,9x19mmパラベラム弾などの超音速初速弾よりも発射音が小さくなる。打撃力に関しては、現在世界各国の軍隊で普及している9mmパラベラム弾より初速が遅いが運動エネルギーを大口径とより重い弾頭重量で補うことで9mmパラベラム弾と比較しても全く遜色が無くなっている。また、9mmパラベラム弾と比較しストッピングパワーが高いとよく言わている。
ストッピングパワーとは,拳銃や自動小銃などの小火器から発射された銃弾が生物に命中した際、その目標となった生物をどれほど行動不能に至らしめるかの指数的概念を表している。
人体に対し重い衝撃を与えるのに向いており殺傷力は高いが、反面防弾アーマーのように鉄製のプレートが入っているものについて物質的貫通力は.45ACP弾の方が落ちる。
この MK23に使われている銃弾はただの45ACP弾ではなく45ACP弾をさらに火薬を増量する事で強力にし『45+P』と指定されている。
MK23は単なるハンドガンではなく,サブマシンガン等に代わる攻撃力を持った『ウェポンシステム』となった。
俺は,MK23を両手で構え安定した姿勢で撃つ。拳銃の照準は逃げる男の足に向けられており見事,膝を45ACP弾が粉砕する。
男は走っていた勢いのまま地面に体を打ち付ける。
「うあゎゎゎ!! 足がぁぁぁ!」
男があまりの激痛で涙を流しながら叫び声をあげるが不思議と可哀相という感情がわかない。
姉妹の脇を通り男に近づいていく。男は痛みのなか必死に村の方角にはって移動するが容易に追いつく早さだ。俺は男に追いつくと銃弾を受けていない左足の太腿をためらいなく撃ち抜く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
男が痛みで転げまわる。
さらに俺は両肩を撃ちぬき確実に無力化していく。
「さて,痛いだろうが俺の質問に答えろ」
俺の言葉に対して男は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を必死に縦にふる。
「まずは、村にいる仲間の人数は?」
「うぁぁぁ,よ・・43人だ!」
「本当か? 他に仲間は,村にいるので全部か?」
「本当だ! 他に仲間はいない! 頼む命だけは!?」
「それは無理だ」
「!?」
銃口が男に向けられる。
男は震えながら必死に命乞いをしてくる。
「助けてくれ,お願いだぁ!! しにたくないィ!」
「心配するな痛みは一瞬だ・・・・・・」
「やめっ・・・・」
くぐもった音と同時に男の頭が真っ赤に染まる。地面に薬莢が落ち血の水溜りに浸る。とどめをささなくてもそのうち出血多量で死んだだろうが息がある内は油断しない。やるなら徹底的にだ。
すぐさま踵を返し,姉妹のもとに向かう。
「怪我はないか?」
「!!」
姉妹は震えていた。
盗賊たちと俺の存在にも・・・・・。
しかたがないか人の頭をいとも簡単に吹っ飛ばすのだから。以前のまともな俺ならば同様の反応をしただろうか。いや、あまり変わらないかもしれない。
「安心しろ。俺はお前達の敵じゃない」
「ほ,本当・・・・ですか?」
「本当だ。早く森に隠れろ奴等は俺が何とかする」
「でもっ!・・・盗賊は大勢いて貴方が1人でかなうわけありません!」
「まあ、数も大事だが。心配するな、出来る限り村人を助ける」
必ず救うなんて、安請け合いはしない。俺は正義の味方でも何でもない。
俺は姉妹の頭を優しくなでる。
殺した二人の盗賊の死体と乗り手を失った馬を森の林に隠し,盗賊の1人が持っていた短剣を姉の方に渡す。流石に銃を渡すわけにはいかないので最低限、身を守れるためにだ。
俺は拳銃の少なくなった弾倉を抜き新しい物に交換する。
抜き取った弾倉は腰のダンプポーチにしまう。
こちらの世界ではいつ補給ができるかわからないため弾倉はとっておくのだ。
「本当についてない日だ」
黒煙を上げ続ける村に姿勢を低くなるべく音をたてずに向かう。
まだ、夜は長い。
いかがでしたか。
今回は姉妹を救う話でした,次回は盗賊から村を奪還するお話になりますお楽しみに。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
次の話は一ヵ月後を予定していますので,これからも応援よろしくお願いします。




