『駐屯地』
ブリューナルの首都『ルア』の1つ前の町『ケリサ』。
『ケリサ』は比較的平地となっており首都の食料となる穀物の4割を補っている重要拠点でもある。
人口5千人弱の町を高さ20メートルの城壁に覆い、兵士2千人で防衛を補っている。
城壁の近くの商業ギルドが管理している空いている土地に俺たちが駐屯地を構えて2週間が経とうとしている。
ケリサにも冒険者ギルド、商業ギルドの支部が置かれており、俺たちが駐屯することは駐屯軍の指揮官にもすでに話を付けてきている。
挨拶をしに行くのは一応、常識だと思う。
社会でもより良い人間関係を築くには挨拶は肝心だ。
傭兵でもある俺たちが挨拶に来たことに冒険者ギルド長、商人ギルド長、駐屯軍の指揮官は驚いていた。冒険者ギルド長と商人ギルド長は事前に連絡があったのでそれほど警戒されることはなかったが、駐屯軍の指揮官には俺たちが何か企んでるのではないかと疑われた。
「短い間だがこの町に居候するのだから挨拶は当然の事でしょう」と駐屯軍の司令官に言うと豪快に笑いながら「まったくその通りだ!」と背中を叩かれた。それからは、指揮官から通達があったのか特に現地の軍とも問題は起きることはなかった。それどころか酒場などで一緒に兵士どうしが酒を飲むまでに友好的な関係を築けている。
ケリサの駐屯地に到着し、正面ゲートを抜けると待機していた隊員が迎えてくれる。
駐屯地には多くのテントが張ってあり、駐屯地の周りは有刺鉄線が付いたフェンスで囲まれている。 すぐさま車輛の整備、弾薬の補給、燃料の補給が行われる。
銃座に取り付けられているM2キャリバーも一時的に取り外され、簡単な整備をしていく。
いくらタフな機関銃でも整備をしなくては誤作動も起こす。その誤作動の発生を抑えるために整備は欠かせない。
騎士がハンヴィーから降ろされ重傷者から仮設手術テントの中に運ばれていく。
アルフィー・ベラ・フォレスターは別のテントに移されて眠っている。
怪我らしい怪我を負ってないので馬車が横転した衝撃で気を失っただけのようだ。
テントの周りには自動小銃を持った兵士を歩哨として立たせている。なにが起こるかわからないため念のための護衛と彼女が目を覚ました時の連絡役だ。
使用した分の弾薬を補給し、装備を付けたまま徒歩で冒険者ギルドに報告に向かう。もちろん後ろに黒い目だし帽を被ったリルとルルが付いてくる。
『ケリサ』の冒険者ギルド長はギルド長のなかで数少ない女性が務めている。
受付のギルド職員に案内され奥の部屋に通される。
「ご苦労様、間に合ってよかったわ」
労いの言葉をかけてくれたのは女性の名前は、アヴァラ。
色素が少し抜けた茶色の髪に少し白髪が混ざり、とても優しそうにこちらに微笑んでいる。年齢は怖いので考えるのはやめよう。
女性にとって年齢を話題にされるのは大抵がタブーである。
見た目に騙されるのもよくない。優しそうに微笑んでいるが昔も今も魔物を平然と大剣で真っ二つにするほどの人物だ。
「間に合いましたが犠牲者が出ました。飛竜が街道に現れることが事態が異常です」
「そうね。冒険者達も最近はクエスト中の死亡率が急増しているわ。大移動がすでに始まっていると考えて各都市のギルドに警告しましょう」
「こちらでも街道の見回りの密度を上げます。周辺の情報を常に警戒し、最悪の事態に備えなければ」
「あなたたちが見回りに出てくれて助かるわ」
「仕事ですので」
「ふふっ、そうね」
◆
大きな屋敷の寝室で白い髪の女性が同じ髪の色の少女にある物語を聞かせていた。
私はその女性が誰か知っている。
もう会うことができなくなってしまった私の大切な人。
お母様・・・・・・。
これは私の夢なのだろうか?
お母様が話してくださるお話は、私はとても好きだった。
悪い竜に連れ去られたお姫様を何処からか現れた勇者様が救い出だしてくれるそんなお話だ。
勇者様に救い出されるお姫様に憧れた。しかし、そんな憧れも成長していくうちに少しずつ薄れていった。
私の14歳の誕生日が過ぎた頃、お母様が流行り病で亡くなった。
涙が枯れるまで泣き続けた。それからの私は必死で勉強に打ち込んだ。
お父様の助けになりたくて。
目の前が暗くなり鱗を身に纏う竜がいつの間にか私の目の前に佇んでいる。
とても大きな体。
鋭い爪と牙。
見る者を一瞬で金縛りにさせてしまう圧倒的な恐怖。
本能で勝てないと理解させられる凛然たる種族の差。
竜が口を開け、私に迫る。
このまま食べられてしまうのか・・・・・・。
死ぬのはとても怖い。
意味のない死ほど怖いものはない。
目を閉じてその時を待つが一向に痛みはない。
再び目を開けると知らない天井が広がっていた。
どうやら夢を見ていたようだ。
馬車が飛竜に襲われ馬車が大きく揺れてからの記憶がない。
テントには私一人しかおらず。ベットの脇に小さな棚とその上に木のコップと水の入った入れ物が置かれているだけだ。
飛竜に襲われて、こうして生き残っている事は奇跡に近い。
いったい誰が何のために助けてくれたのか。
テントは見るからに貴族のきらびやかなものではない。軍や商人が使うような物だろう。
天井に視線を移すと吊るされた照明器具が目につく。
これまで見たこともない初めて見る物だ。この光源はどうやってこの様に安定した火力を保っていられるのだろうか。普通の照明器具なら蝋燭を中に入れるか、油をしみこませた紐をいれておく。
寝かされていたベットから立ち上がりテントの入り口に向かう。
まずは、状況を確認しなくていけないわね。
テントを出ると辺りはすでに日は落ち、紫色の夕波が地上を包みこみ空には星が輝いていた。
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