『ランクA (2)』
バレットの弾丸がワイバーンを捉えようとするが中々ワイバーンを捉えることができない。
グレータは狙撃がそれほど得意ではない。しかし、下手でもない。今回は相手が悪かったのだ。
ワイバーンは初めの一発を当てられてからは避けに専念している。それは、自分の体に浅くもない傷を作る可能性がある物を警戒してだ。だが、そのおかげで馬車からワイバーンの気がそれクレーター達の方に向いたのだ。
「あいつこっちの位置に気が付きやがった。へニオ、急いで『M240』をここに据えろ」
「了解!」
すぐさま他の隊員のへニオが土嚢に中量級汎用機関銃『M240』を据える。
『M240』は、アメリカ軍がベルギーのFN社製機関銃FN MAGを改良、採用した銃火器である。
口径7.62mm弾を使用し、口径5.56弾を使用する『M249 SAW』と比べると長距離の目標をより大きな破壊力で破壊することが可能だ。また、弾丸の重量が重いため風の影響を受けにくく、長距離射撃の命中精度が高いのも特長である。機関部とハンドガードの脇にレールシステムを採用しており、射撃補助具、照準器、暗視装置などを戦闘に応じて装備することができる。
汎用機関銃は「General Purpose Machine Gan」の英語の頭文字から「GPMG」と呼ばれることもある。
「汎用」という言葉から特徴のない印象を受けてしまうが、もう一つの訳語「多用途」の方が運用していう上で的確だと思われる。
多用途の所以は「最小限の手間で様々な用途に使える」ということである。通常は二脚を付けて軽機関銃の様に使用し、陣地防衛では三脚に載せ重機関銃のように運用することもできる。
これで防げればいいんだがそう甘くもないようだ。
ワイバーンは銃弾の雨を浴びながらもグレータ達へと向かってきた。
「グワォォォォォ!!」
「うるせえよ糞トカゲが!!」
ワイバーンがすさまじい咆哮を挙げる。
空の強者として、生物の強者として咆哮だ。
その咆哮を浴びせられながらも偵察隊からの銃撃は止むことはない。
グレータもM4カービンを手に罵声を浴びせながら応戦する。しかし、5.56mm弾ではワイバーンの鱗を貫くことはできない。しかし、痛みはなくとも感覚はある。
人でも遊戯用のBB弾を当て続けられればイライラもする。
「上空に更なる敵影!!」
「なにッ!? 馬車に行かせるな、牽制しろ!!」
更にワイバーンが上空から現れ牽制射撃を行うが初めのワイバーンにM240で集中放火を浴びせているためM4のみでは、新たに表れたワイバーンに対しての牽制射撃としては不十分だった。
新たに現れたワイバーンはM4の銃弾を受けながらも、この場を離れようとしていた馬車に襲い掛かった。
護衛の騎士は矢で牽制を行ったがショートボウの矢はワイバーンからしてみれば豆鉄砲に等しいものだった。ワイバーンに対抗するには大型弩砲のような大型の弩砲が必要不可欠である。
馬車を引いていた馬がワイバーンに食われ、そのはずみで馬車がバランスを失い横倒しになった。
◆
すでに戦闘が開始されたことを無線で聞きハンヴィーが更にスピードを上げる。
恐らく偵察部隊の火力ではワイバーンに手傷を負わせることはできても仕留めることは難しいだろう。
ワイバーンはドラゴンの亜種ではあるが鱗の硬さはドラゴンより少し落とした程度である。しかし、生半可な攻撃ではワイバーンには通じない。
50口径弾では鱗が比較的薄い腹部などならばなんとか鱗を破ることができるレベルだ。
最悪、空から歩兵携行対戦車兵器を使用し叩き落す。
歩兵携行対戦車兵器は弾頭の性質や発射機構により、無反動砲とロケットランチャーに分類される。
無反動砲は弾頭その物に推進力がなく、通常の野戦砲同様に実包の発射薬点火によるガス圧で弾頭に推進力が与えられる。無反動砲は名前の通り弾頭を発射した際の反動をほぼなくす、薬莢を多項式とした発射ガスを後方へ噴出させ反動を相殺する方式を取っている。
ロケットランチャーは、無反動砲の様に発射ガス圧を利用せず電気的あるいは雷管によってロケットモーターに点火、弾頭部その物が推進力を持って目標へ飛翔していく。
最も有名な歩兵携対戦車兵器であるソ連製『RPG-7』は、発射機の機構が無反動砲で弾頭部とロケットモーターが一体化した弾薬を用いる。弾頭が推進力を持つため、ロケットランチャーと勘違いされるが『RPG-7』の発射機自体は無反動砲に分類される。
「全員に告げる。襲われた馬車に搭乗している人物は『アルフィー・ヴェラ・フォレスター』と判明した。伯爵家フォレスター家のお偉いさんだ」
隊員全員が装着している個人用携帯無線機を通してギルドに残してきた通信兵からの情報を仲間に告げる。
「我々の目的は、ワイバーンの排除の他に『アルフィー・ヴェラ・フォレスター』の救出が正式にギルド長から出された。よって、今回は護衛対象を確保しさらに守りながらのランクAの魔物の討伐だ。すでに偵察隊が戦闘を開始した。気を引き締めろ」
今回が初任務の隊員もいる。
ようやく訓練を終え、実戦で使えるようになっていきたのだ。
現在の隊員の人数は訓練兵含めると120名弱になる。
弾薬や燃料の事を考えると大規模な部隊にしてしまうと弾薬の不足、燃料の不足が懸念される。訓練でも弾薬や燃料は使用される。弾薬と燃料はいくらあっても困らないのだ。
「ワイバーンには自動小銃の弾では効果がない、そのためキャリバーでワイバーンの動きを止め無反動砲で仕留める。何か質問はあるか」
「ミセリアです。ワイバーンが複数いた場合はどうしますか?」
ミセリアは、もともと商業都市の裏路地で暮らしていた子供だ。
この部隊には裏路地で暮らしていた子供が他にも多くいる。食べるのに困って生きていくのにやっとの子供たちだ。その子供たちの中から戦えそうな子供たちを選び訓練し、少年兵、少女兵とした。
「標的が複数の場合は、ハンヴィー1台が一方の注意を引きもう一方をハンヴィー3台で速やかに撃滅する」
『隊長、標的を視認しました。標的ワイバーンを2騎確認』
ジュンが乗っているハンヴィーの少し離れた前方を走っているハンヴィーか個人用携帯無線機から連絡が来る。
「了解。攻撃を開始しろ」
ハンヴィー4台によるワイバーン殲滅戦が開始された。
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