第七話 能力雪合戦①
「今日の競技は能力雪合戦だ」
学園長は校庭の真ん中で仁王立ちし、俺たちを見回した。俺たちはジャージ姿で校庭に立っている。今日の体育は三時間目と四時間目の二時間続けて行われる。
能力雪合戦は三チームに分かれて行う競技だ。一チーム十人であり、他の二チームを全滅させたチームの勝利だ。もちろんただの雪合戦ではなく、能力を使用した雪合戦である。気絶したらリタイアとなる。雪玉が当たってもリタイアにはならない。リタイアした生徒は校庭の一角に設けられたリタイアゾーンで終了まで待機する。フィールドはリタイアゾーンを除いた校庭全体だ。
「雪乃、校庭に雪を降らせてくれ」
「分かりました」
学園長の隣に立っていた雪乃先生は頷いた。雪乃先生のフルネームは雪原雪乃。能力は『雪』。雪を操る能力であり、白銀のショートカットをした女性だ。兄さんの同級生であり、俺たちAクラスの副担任だ。
「雪」
雪乃先生は両手を上空にかかげ、校庭全体に雪を降らせた。瞬く間に校庭が雪に覆われ、白銀世界へと姿を変える。校庭の温度が一気に下がった。雪に触れて温度を確認する。ちょうど良い冷たさだった。
「それじゃ、三チームに分かれろ」
学園長の指示に従い、俺たちは三チームに分かれた。グーとチョキとパーでチームを決めた。グーは菫の元に、チョキは明日香の元に、パーは狼牙の元に集合した。俺と薄弱が菫チームであり、蘭と樹木が明日香チーム、烈土と波斬が狼牙チームだ。
「五分後に開始するから、雪玉と雪豪を用意しておけ」
俺たちは五人ずつに別れて作業を分担することにした。つまり雪玉チームと雪豪チームに別れて準備を進める。他の二チームも作業を分担して準備を進めるはずだ。
俺は両手で雪をかき集め、ギュッと握りしめた。水の鎖を巻き付ければ雪玉の完成だ。水の鎖を巻き付けることで攻撃力を上げる。
十数個ほど雪玉を作り、菫たちの方を伺った。菫の側には普通の雪玉と水の鎖が巻き付けられた雪玉が置いてあった。普通の雪玉の方は分からないが、水の鎖が巻き付けられた雪玉は幻覚だろう。
薄弱の方を伺ってみる。薄弱の周りには一個も雪玉がなかった。しかし、手が忙しなく動いているところを見ると、雪玉を透明にしているのだろう。雪濠チームも順調に準備を進めていた。
俺は雪玉に水の鎖を巻き付ける作業を再開した。
☆☆
「蘭、ちょっといいかしら?」
「うむ、何だ?」
「私たちの利点は大量生産できることにあるわ。自分の分だけでなく、他のメンバーの雪玉も作ることができる。だから私たちは開始時までにできるだけ雪玉を生産し、雪濠も分厚くすること。分かったかしら?」
「うむ、了解した」
明日香は蘭に作戦を伝えた後、効率よく雪玉を生産するために、闇の影を発動した。地面が黒く染まり無数の闇の影が姿を現す。闇の影は雪をかき集め、雪玉の生産を開始した。
明日香は蘭を見た。蘭の周りには無数の人形が出現していた。人形は闇の影同様に雪玉の生産を開始し、さらに雪濠も作り始めた。
闇の影と人形の手により凄まじいスピードで雪玉が生産されていく。雪濠も分厚く仕上がっている。高さも優に二メートルは超えていた。
☆☆
烈土は十数個の雪玉を作った後、砂で覆った。砂が雪玉の水分を吸収することで固くなり重さが増し、攻撃力が増加する。その分、スピードは半減してしまうが、狼牙がいるから何も問題はない。
烈土は作業をしながら狼牙の方を伺った。狼牙は糸を雪に巻き付けていた。糸のネバネバで動けなくさせるつもりなのかもしれない。
次に波斬を伺う。波斬は雪玉を泡で覆っていた。雪濠も順調に仕上がっている。
烈土は自分の作業を再開した。
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