第六話 授業⑤
「何を恥ずかしがっているのよ?」
明日香は呆れたように俺を見てくる。約束通り、俺は明日香と一緒に風呂に入っていた。もちろん蘭も一緒だ。
「しかし、広い風呂だよな」
俺は恥ずかしさを紛らわすために、辺りを見渡した。三人も入っているのに、まだまだ余裕がある。あと十人以上は入れそうな広さだ。明日香の家は金持ちだけあって、風呂も豪華だ。浴槽とタイルは大理石でできている。もし転んだりしたら危ないな。
「うむ、広すぎて何だかそわそわするのだ」
「そう? 私はしないけど? ところで氷河は何で下半身を隠しているのかしら? 私は堂々と見せてあげているのに、情けないわね」
「う、うるさい」
俺と蘭はタオルを巻いているが、明日香は巻いていなかった。恥ずかしげもなく、裸をさらしている。どこに視線を向けたらいいか分からない。
何とはなしにお湯を見つめていると、何かが光った気がした。すぐに顔を上げて辺りを見渡すも、何が光ったかは分からなかった。
「何をキョロキョロと見渡しているのよ、氷河?」
「今、何か光らなかったか?」
「気のせいよ。ねえ、蘭?」
「う、うむ、そう……だな」
どことなく蘭は歯切れが悪かった。いったいどうしたのだろうか? やっぱり何か光っていたのか?
「蘭、いったい何がひか――」
「氷河、背中を洗ってあげるから、湯船から出てくれる?」
蘭に聞こうとしたが、明日香に遮られた。俺は仕方なく、湯船から出た。
明日香は手に石鹸をつけて俺の背中を洗い始めた。まさか直接手で洗ってくれるとは思わなかった。明日香の手の温もりが背中に伝わる。なんかドキドキしてきた。
「あら、顔が赤くなってるじゃない。照れちゃって、かわいいところもあるのね」
明日香は俺の耳を甘噛みしてきた。
とても恥ずかしいが、裸の付き合いも悪くはないな。
感想頂けると幸いです。