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スプリングナイフの氷河  作者: 神通百力


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第六話 授業①

「今日の戦闘(授業)は小説の創作だ。六人一組で書いてもらう。各々がアイデアを出し、小説を創作する戦闘(授業)だ。原稿用紙は十枚ほど配っておくが、すべて使わなくてもいい。五枚なら五枚で構わない。足りなくなったら言ってくれ。それでは机をくっつけて始めてくれ」

 俺たちは飛炎先生の指示通りに机をくっつけて六人一組の班を五組作った。飛炎先生は各班に原稿用紙を十枚配った後、教卓の横に椅子を持ってきて座った。

 俺は鳳凰院明日香、魔道蘭、砂塵烈土さじんれつど樹希樹木ききじゅもく泡波波斬あわなみはざんと同じ班だ。

 明日香はカバンから鉛筆とノートを取り出した。どうやらアイデアをノートにまとめるようだ。

「アイデアがある人はいるかしら? あるなら言ってくれる? ノートにまとめるから」

 明日香は鉛筆とノートを持ち、俺たちを見渡した。

 最初に手を挙げたのは烈土だった。烈土の能力は『サンド』。砂を操る能力であり、実力学年順は九位で、成績は下の方だ。能力の砂を思わせるような明るい色合いの茶髪が特徴的だ。髪は俺と同じくらいに短かった。

「大便マンと小便マンの話はどうだ?」

「……つまらなそうな感じしかしないけれど、一応聞いておくわ。それはどういう話なのかしら?」

 明日香は冷めた目で烈土を見つめ、話の続きを促す。明日香が言ったように、烈土のアイデアはつまらなさしか感じられない。よくもまあ自信満々に手を挙げれたな。大便マンと小便マンというくらいだから、きっと下ネタ満載の話なのだろう。

「大便マンはヒロインで小便マンは敵のボスだ。大便マンの必殺技『大便シャワー』は大便をぶちまける技だから、世間からは嫌われている。最低ヒロインとして認知されている。大便マンは街の平和のために駆け付けるものの、街の景観を汚すお前なんかに守られたくないと罵倒されるヒロインなんだ」

 下ネタ満載の話ではないみたいだが、嫌われるのも致し方ないと思う。戦闘のたびに大便をぶちまけられるのなんてイヤだからな。しばらくの間は臭いが漂っているはずだ。戦闘近辺に住んでいる人はあまりの臭いにぶっ倒れるんじゃないのか? 住民を脅かすヒロインに守られたくないな。

「嫌われるのも当然ね。もし洗濯物についたりしたら、最悪だもの。そうなったら捨てるしかないわ。洗えば大便自体は落ちるでしょうけど、他人の排泄物が付着した服なんて着たくないわ」

「他人と言っても大便マンはヒロインなんだ。たとえ大便でも汚くはないだろ? それどころか神々しささえ感じられる」

「大便のどこに神々しさがあるのよ。汚さしかないわ。烈土って大便フェチだったのね。これからは砂塵烈土じゃなく、大便烈土って呼ぶことにするわ」

「頼むからやめてくれ。それに俺は大便フェチじゃない。ちょっと舞い上がってただけだ」

「まあ、そういうことにしてあげるわ。そんなことより話の続きをしてくれるかしら?」

 そんなことよりで片付けられた烈土が可哀そうだ。あやうくあだ名が大便烈土になるところだったんだからな。烈土は不服そうにしていたが、気を取り直して続きを話し始めた。

「戦闘終了後にはいつも小便マンに『あいつらの言うことなんて気にするな。お前は街の平和を守りたいんだろ? だったら自分の意思を貫け。俺はいつでもお前の相手になるぞ』と慰められているんだ」

 敵のボスに慰められるなんてヒロインとしてどうなんだ? 小便マンも敵のボスにも関わらず、ヒロイン相手に気を遣っている。敵のボスにしては良い奴すぎる。よくそれでボスになれたものだな。部下からの信頼は厚そうだけどな。

「大便マンは慰められている内に小便マンに恋をした。本名は大内便子おおうちべんこと言い、普段は大手商社でOLとして働いてる。直属の上司が小便マンであり、本名は小柳便太こやなぎべんただ。この二人はお互いの正体を知っているし、大便マンの携帯の待ち受け画面は小便マンとのツーショットだ」

 大便マンと小便マンの本名が適当過ぎないか? 名前に大便と小便が入っているじゃねえか。しかもヒロインと敵のボスが同じ職場なんて気まずくないか? お互いの正体を知らないのならまだしも、知っているみたいだし、接しづらいだろ。

「携帯の待ち受け画面にするなんてね。それほどまでに大便マンは小便マンのことが好きなのね」

「ああ、これは大便マンと小便マンの恋愛物語だ。ちなみに大便マンの操る大便は氷河のだ」

 急に俺の名前が出てきたから驚いた。俺は烈土の顔をマジマジと見つめる。

「俺の大便ってどういうことだ? 何で俺の大便を登場させるんだよ! せめて俺を登場させろよ! 何で俺の大便が友情出演してんだよ!」

 俺に対しての扱いの雑さに腹が立ち、烈土に怒鳴った。その瞬間、バチンと明日香にビンタされた。俺はなぜビンタされたのか分からず、怪訝な表情で明日香を見つめた。

「氷河、今は授業中なのよ。怒鳴ったらダメじゃない。他の皆も小説のアイデアを考えているんだから、邪魔したらダメよ。その辺ちゃんと分かっているのかしら?」

 明日香は呆れた表情でため息をつく。いきなり怒鳴った俺が悪いのかもしれないが、だからといってビンタはやりすぎじゃないか? 思いっきり叩かれたから、まだ頬のあたりがひりひりしている。ビンタは仕方ないとして、せめて手加減してほしかった。

「これが俺のアイデアだけど、明日香はどう思う?」

「氷河の大便を登場させる点は評価に値するし、ノートにまとめておくわ」

「よし! これも氷河の大便のおかげだ。ありがとう氷河」

 烈土は俺の手を握ってきたが、まったく嬉しくない。こんなにイラっときたありがとうは初めてだ。笑顔なのが余計に腹が立つ。

 明日香はスラスラとノートにアイデアを書いていくが、俺の大便を登場させた点以外に評価するところはなかったのか? 例えば大便マンと小便マンというふざけた名前の割にストーリーは真面目なのが評価に値するとか何かあるだろ。

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