第五話 薄弱に試着させちゃおう部⑥
輪廻先輩は自分に何が起きたのか理解できていないだろうな。俺は戦いを傍観していたから、輪廻先輩と薄弱に何が起きたのかは分かっている。
輪廻先輩が赤色の花による破壊を防いでいる間に、菫は藍色の花による幻影を発動した。幻覚で赤色の花による破壊を見えなくしたのだ。
菫はタイミングを見計らい、赤色の花による破壊を放った。赤色の花による破壊はゴゴゴ、と轟音を立てて突き進み、輪廻先輩と薄弱の上半身を吹き飛ばした。肉片と血液が飛び散り、地面を真っ赤に染めていた。
俺たちは校庭の中心に移動した。
「輪廻先輩と薄弱は死亡したから、私たちの勝ちだね」
「うむ、輪廻先輩はまさか後輩に殺される羽目になるとは思ってもみなかっただろうな」
菫と蘭はハイタッチを交わしていた。
「黄色の花による治療」
菫は黄色の花を出現させた。黄色の花は輪廻先輩と薄弱を囲んで付着した。みるみるうちに失われた上半身が再生していく。
「……何が起こったの?」
輪廻先輩は自分に何が起きたのか分かっていない様子だった。それも無理からぬことだろう。攻撃が見えていなかったのだから。
「藍色の花による幻影で、赤色の花による破壊を見えなくしたうえで放ったんだよ。それを食らった輪廻先輩と薄弱の上半身は吹き飛んで死んだんだよね。戦闘続行は不可能だから、勝負は私たちの勝ちだよ。輪廻先輩は負けたんだよ」
「え? 私って死んだの? というか遊びで先輩を殺すのってどうなのよ? それに私は生きているわ。まさか死人を生き返らせる技を持っているの?」
輪廻先輩は自分が死んだことに驚いていたが、すぐに非難するかのように菫をギロリと睨み付けた。菫はその表情に怯んでいたが、輪廻先輩の口元は緩んでいるし、さほど怒ってはいないだろうな。
「うん、持っているよ。黄色の花による治療と言ってね、怪我を治したり死人を生き返らせることができるんだよね」
「それで私を生き返らせたってわけね。図書委員長としては圧倒的な実力を見せたうえで勝ちたかったところだけど、完敗ね。二人とも強いわ。氷河君が相手だったら、私の圧勝だったけどね」
輪廻先輩は菫と蘭を褒め称えるかのように、ハグを交わした。どうも輪廻先輩は俺のことを甘く見ているようだ。
「おいおい、まったくもって輪廻先輩の言うとおりだ。今の戦いを見てたら、俺では勝てそうもない」
「……認めてどうするのよ。そんなのやってみないと分からないじゃない」
「輪廻先輩の言うとおりだぜ! もっと自分に自信を持てだぜ!」
狼牙が俺の肩を叩きながらそう言った。
「容姿には自信があるんだけどな」
「それには自信を持つなよだぜ!」
「どういう意味だ! 俺が不細工だとでも言いてえのか!」
俺は狼牙に掴みかかろうとした。しかし、明日香に股間を蹴られてしまい、掴みかかれなかった。
男の急所を蹴るとは何て奴だ。だが、明日香に股間を蹴られるのも悪くない……なんてことはない。めちゃくちゃ痛い。
「……私は氷河君の容姿は嫌いじゃないけどね。なかなかイケてるんじゃないかしら」
「……輪廻先輩!」
俺はあまりの嬉しさに輪廻先輩にキスをしようとしたが、頬を殴られた。
「調子に乗らない! キスなんてしないわよ! その代わりまた私を部活に誘ってくれる?」
「もちろんだ、輪廻先輩」
「ありがとう、氷河君」
輪廻先輩は満面の笑みを浮かべた。その直後、風が吹いて輪廻先輩のスカートがめくれ上がり、トランクスが露わになった。そういや輪廻先輩は薄弱のトランクスを穿いていたな。
戦いの最中に薄弱が純白の下着を穿いているのを見てたのに、すっかり忘れてたわ。
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