第一話 水刃氷河VS魔道蘭③
「……べ……こ……。……て……在……。……い……す」
声が小さすぎて何言ってんのか分からない。聞き耳を立てると、
「すべてを壊す。すべての存在消す。全員殺す」
((あぁ……享年十六歳。俺(私)たちの存在は消滅する(予測)))
「この三つの文章を、俺が今考えた小説『おやつはいかが?』に組み込みたいな。フフ」
((まさかの小説の話でした!!!))
「っておい!! 小説の話かよ。薄弱が世界を消滅させるのかと思っちまった」
「びっくりさせてしまったことを本当にすまないと思う」
「二十四時間頑張ってる人か!」
「いや、パウダーだ」
「ジャ○クさん粉になっちゃった!」
とそこへ明日香が、
「二人で何をバカなこと言ってるのよ! ちょっと黙ってて氷河。薄弱に聞きたいことあるから」
「……はい」
思いっきり睨まれてしまい、俺は黙った。
「薄弱。さっき言ってた小説のタイトルにその三つの文章は合わないんじゃないかしら」
物分りの良くない生徒を諭す女性教師と言った表情で明日香は言った。
「そんなことない。『おやつはいかが?』はグロテスクなシーンと暴力シーンがあるから三つの文章は合うはず」
((予想外っっ!! メルヘンなタイトルなのに、まさかのR15指定!?))
「可愛くあどけない顔して恐ろしいことを考えるわね、薄弱」
自分の身体を両手で抱きしめ、明日香は言った。
「明日香には言われたくないな。『血塗れメイドの殺戮劇』というタイトルの小説を書いた明日香にはな」
「褒めても何もでないわよ」
「褒めてないんだが」
「褒めなさいよ。でないとアナタの家族が……フフ」
「何だ!? 俺の家族に何する気だ?」
慌てた表情で薄弱が言った。
「別に何もしないわ。ただ、私、薄弱にチョメチョメされたんですって言うだけよ」
「チョメチョメって何だ? 俺を変態にする気か?」
「何言ってんの。薄弱は変態じゃない」
「……あう」
あうって可愛いすぎるだろ!
薄弱は浴衣やメイド服といった類の物を集めるのが趣味だからな。変態といえなくもないか。
その時、ガチャッガチャッと音がして教室の引き戸が開いた。
「諸君、おはよう」
教室に入ってきたのは飛炎先生だった。
「お、そうだ。薄弱、これをやろう」
「これは原稿用紙? なぜこれを?」
いぶかしげな表情で薄弱は言った。
「『おやつはいかが?』というタイトルの小説を書くんだろ」
「! なぜそれを?」
「盗み聞きしてたから」
「盗み聞き……だと?」
飛炎先生、それは教師としてどうかと思いますが。
「それでは、戦闘(授業)を始める」
飛炎先生はなぜか授業を戦闘と言う。ちなみに飛炎先生は国語の先生だ。
「さて、突然だがテストをする」
『テスト!? 聞いてない!』
「そりゃそうだろう。言ってねえんだから」
飛炎先生はニヤリと笑うと、テスト用紙を配り始めた。
「それでは、テスト開始!!」
この文を読み後の問題に答えなさい
私は嬉しさに胸を弾ませながら、学校からの帰り道を歩いていた。
今日、学校で大好きな男の子に告白をした。
ドキドキしながら返事を待っていると、なんと相手も私のことが前から好きだったことが判明した。
OKを貰い私たちは付き合うことになった。
〔①〕、数日が経ったある日のこと、彼は交通事故に遭い亡くなった。
〔②〕と彼女は嘆き、毎晩悲しみに明け暮れた。
ある晩のこと、彼女は夢を見た。
彼が出てきて、ある言葉を投げかけた。
「僕は、死んでしまったけど、君の心の中に居続ける。これからもずっと一緒だよ」
彼はスッと消え、私は目が覚めた。
ありがとう。
私を見守っていてね。
問い一 〔①〕に入る言葉は何か次から答えよ。
①それから②それゆえ③なぜ④なんで
問い二 〔②〕に入る言葉は何か次から答えよ。
①どうして②なにゆえ③ばかな④なに
問い三 私は、嬉しさで胸を弾ませ……とありますが彼女は、なぜ嬉しさで胸を弾ませていたのでしょうか。
~から。で終わるように答えなさい。
問い四 毎晩悲しみに明け暮れた……とありますが彼女はなぜ、毎晩悲しみに明け暮れたのでしょうか。
~から。で終わるように答えなさい。
なるほど、こういう問題か。問い一はえっと①か? 問い二はう~ん、これも①か? 問い三は、相手も自分のことが好きだと分かって付き合うことになったから、多分これだ。問い四は彼が交通事故に遭い亡くなったから、えっと……?
「テスト終了! 一番後ろの奴集めて来い」
テストが回収された。
「後の時間は、自由だ」
『フリーダムですね!!』
「そうだが、英語で言う必要あるか?」
『ないですね!!』
「チームワークがあってよろしい」
『あざーす!!』
クラス全員が立ち上がって、斜め四十五度の角度で頭を下げた。
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