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第五話 薄弱に試着させちゃおう部①

「あら? 氷河君じゃない」

 東校舎四階の端にある部室に向かっていたら、背中から声をかけられた。

「輪廻先輩」

 後ろを振り向くと輪廻先輩が立っていた。

「どこに行こうとしているの?」

「部室に向かっているところだ」

 輪廻先輩の問いに俺は応えた。

「氷河君は何の部活に入っているの?」

「薄弱に試着させちゃおう部」

「何を目的とした部活なのかさっぱり分からないわ」

 輪廻先輩は怪訝そうな表情を浮かべた。いやいや、どんな部活なのかは分かるだろ。試着させちゃおうってついているんだから、試着させるのが目的ってことは分かると思う。

「薄弱を試着させる部活だ、輪廻先輩」

 俺は呆れながらも、輪廻先輩に部活について簡潔に説明する。

「説明が雑すぎてあまりピンとこないわね。暇だから、ついて行っていいかしら? ちょっと気になるし」

 輪廻先輩はそう言うと、俺の隣に並んだ。ついてくる気満々だな。

「いいけど」

 俺と輪廻先輩は四階の端まで行き、教室に入った。

「遅かったな、氷河。ん? 隣にいるのは誰だ?」

 薄弱は紙袋を部室の中心に配置された真っ白なテーブルの上に置き、椅子に座っていた。

 部室にいたのは薄弱一人だけだった。他の部員は校庭で準備が終わるのを待っているはずだ。

「私は三年生で図書委員長の死殺輪廻よ。見学しようと思って来たんだけど、構わないかしら?」

「ああ、構わない。俺は透明薄弱だ」

「よろしくね。さっき氷河君に部活名を聞いたんだけど、具体的に何をする部活なの? 部員は二人だけ?」

 輪廻先輩は不思議そうに部屋を見回しながら、聞いてきた。

「様々な衣装を薄弱に試着させる部活だ。メイド服やバニーガールといった衣装だな。薄弱を試着させた後は、校庭で適当に遊んで終わりだ。部員数は二年生全員になる」

「私は薄弱君に聞いたのに、なんで氷河君が答えるのかしら? ちょっと黙っててくれる?」

 輪廻先輩はギロリと俺を睨みつけてきた。俺は親切心で教えてあげただけなのに、なぜ睨みつけられねばならないのだろうか?

「輪廻先輩が部活内容を知りたそうだったから、教えてやったんだぞ!」

「ねえ、薄弱君。部員数は何人なの?」

「シカトかよ! それに部員数はさっき俺が言っただろ?」

「俺を含めて120人だ。119人が俺の衣装を決める。ローテーション形式でな。今日は氷河が俺の衣装担当なんだ」

 薄弱は言いながら、俺に紙袋を渡してきた。中を見ると数種類の衣装が折りたたまれて入っていた。

「120人って多いわね。他の部員はどこにいるの? ここには氷河君と薄弱君しかいないようだけど、まさか、幽霊部員?」

 輪廻先輩はハッとなっていたが、見当違いも甚だしい。

「そんなわけないだろ。幽霊部員ってのは人数合わせの要員だろ? 118人も幽霊部員は必要ない。他の者は校庭で待っている」

「そういえば氷河君、言ってたものね。校庭で適当に遊んで終わりって」

 輪廻先輩は俺の言葉を思い出したらしく、頷いていた。

「せっかくだから、輪廻先輩が薄弱の衣装を決めてくれ」

 今日の衣装担当は俺だが、ここは輪廻先輩に衣装を決めさせるべきだろう。輪廻先輩は見学者だからな。それくらいのことはさせてやるべきだ。

「え? でも、氷河君が衣装担当なんでしょ?」

「それはそうだけどよ。輪廻先輩は見学者だし、衣装担当を譲ることにしたんだ」

 俺は輪廻先輩の前に、紙袋を差し出す。輪廻先輩は戸惑いながらも、紙袋を受け取った。

「薄弱もそれでいいよな?」

「ああ、もちろんだ」

「それじゃ、遠慮なく決めさせてもらうわね」

 輪廻先輩は紙袋から衣装を取り出し、テーブルの上に並べた。

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