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第一話 水刃氷河VS魔道蘭②

 俺は教室に入ると、自分の席に座ると見せかけての考える人。決まったぜ。皆のバカを見るような憐れな視線が逆に辛い。やめて~、今の俺を見ないで~。

「何がしたかったのだ、氷河」

 話しかけてきたのは、魔道蘭まどうらん。黒髪の長髪で幼馴染みの可愛い少女だ。能力は『人形ドール』。人形を瞬時に作り出し出現させる能力だ。

 この学園には能力の実力学年順と成績学年順がある。蘭の実力学年順は三位で、成績学年順は二位だ。一クラス三十人で四クラスあり、合計で百二十人。俺の実力学年順は十二位だ。

「え~とだな。目立とうと思ってやったら、意外と恥ずかしかったであ~る」

「うむ? 何だその語尾」

「くっくっく。一度でいいから『であ~る』と言ってみたかったんだ」

「嘘をつくな!」

「嘘じゃありませ~ん! 本当です!」

「うむ? そうか。疑ってすまなかった」

「え? あ、うん。別にいいさ」

 謝らせた後に、実は嘘でしたっていいづらいな。済まぬ、蘭よ。

「蘭、氷河。おはよう」

「ん? ああ、おはよう」

「うむ、おはようなのだ」

 挨拶してきたのは鳳凰院明日香ほうおういんあすか。能力は『闇の(ダークネス)女王クイーン』。闇を操る能力で、学年一位の実力、そして成績もトップだ。薄紫色の長髪で美少女だ。

「考える人のポーズのまねしてたわね、氷河。ププ」

「笑うな!」

 失礼なヤツだ、まったく。

「蘭、氷河。おはようだね!」

「ああ、おはよう」

「おはようなのだ」

 先ほどと同様に挨拶してきたのは、鳳凰院(すみれ)。能力は『七色の(レインボー)フラワー』。効果の違う七色の花を操る能力であり、学年二位の実力で成績は下の方だ。肩までの長さで薄紫色の髪の美少女だ。

 菫は能力者の中では珍しくオールマイティに長けた実力者で明日香の双子の妹だ。

「お姉ちゃん」

 菫がなぜか非難するように明日香を見る。

「何? 菫」

 明日香は唇の端を吊り上げて笑っていた。これから菫が言わんとすることが分かっているかのように。

「何で先に学校に行っちゃったの? 起きたら家にお姉ちゃんがいなくて泣き喚いちゃった。私が起きるまで待っていて欲しかった」

 泣き喚いたのか。その歳で。

「それはね。菫の怒った表情が見たかったからよ。どんな表情をしても菫はすごく可愛いわね」

 そう言って明日香は菫を抱きしめた。強く強く。

「お姉ちゃんの身体温かくてやわらかいな。へへへ」

 菫は抱きしめ返す。あれ? 怒っていたんじゃなかったのか? 

 ふと、視線を横に動かす。

『あれ? 薄弱いつからそこに?』

 気付けば薄弱がいつの間にかそこに立っていた。

「蘭が氷河に話しかけた時からいた」

 さすがとしかいいようがないな。透明薄弱とうめいはくじゃく。能力は『透明ステルス』。透明になることができる能力で学年十一位の実力で成績は下の方だ。白髪の短髪で小柄で華奢な可愛い美少年だ。特技は気配を消すこと。気配を消させたら左……間違えた右に出るものはいない。教師の中でも。通り名は、『死滅の(デス・オブ・)白虎ザ・タイガー』。名の由来は戦い方が獰猛な白虎のようで畏怖の念を込め『死滅の(デス・オブ・)白虎ザ・タイガー』と呼んだ。

 薄弱は能力者の中で唯一能力を使わずに能力の実力テストで戦った。能力の実力テストとは、一年の春休み前に行われる能力を使った戦いだ。必ずしも能力を使わなければならないというわけではないが、能力を使った方が戦いを有利に進めることができる。にもかかわらず薄弱は一度も能力を使わずに戦い、学年十一位となった。薄弱曰く「だるかったから本気を出していない」らしい。薄弱を除いた二学年全員一致で「薄弱にはかなり苦戦した」という感想だ。あと「薄弱可愛い」「薄弱を抱きしめたい」「薄弱とキスしたい」「薄弱の身体からいい香りがする」という感想も全員一致だ。

『薄弱に試着させちゃおう部』に薄弱を含めた二学年全員が所属している。薄弱がいないと成り立たない部だからな。青銅学園設立史上最大の部の人数である。

「薄弱。上目遣いで、唇に手をやってくれないかしら」

「ん? 分かった。えっとこれでいいか? 明日香」

 薄弱が、ぷっくりとした可愛い唇に手をやり、上目遣いで明日香を見上げた。可愛い可愛い可愛いカワカワ可愛い可愛いよ~~~~~~~薄弱! アイラブユー薄弱!!! 俺は別にホモというわけじゃないけど、薄弱はマジで可愛い。

「ああ、可愛いわ~薄弱。ハァハァハァハァハァハァハァ」

「わ~、お姉ちゃんが危ない人になってるよ~! その表情が素敵過ぎて私もおかしくなっちゃいそうだよ! お姉ちゃん大好き!」

 おまえはもうおかしくなっているぞ、菫よ。

「どうしたお前らだぜ!」

『狼牙!』

 少しばかりおかしな喋り方をしたのは獣神狼牙じゅうじんろうが。能力は『ビースト』。自分の姿を多種多様な獣に変えることができる能力で、学年十位の実力、成績は下の方だ。特徴はオレンジ髪のトンガリ頭。

 何があったかを狼牙に説明した。

「なるほどなだぜ! 明日香!」

 狼牙が明日香の肩に手をやり、揺さぶった。

「はっ! 私としたことが、取り乱してしまったわ」

 明日香が、胸に手をやり、深呼吸した。

「うむ。大丈夫か」

 蘭が明日香に声をかけた。

「ええ。大丈夫よ蘭」

「えっと、このポーズ解いていいか」

 薄弱が明日香に言った。

「いいわよ。ねぇ、薄弱。私の専属メイドやらない?」

「メイド? 専属の執事がいるだろう。女琉めるさんが」

 明日香と菫の家は金持ちで、二人はいわゆるお嬢様である。

 金成かなり女琉さんは、鳳凰院家専属の女性執事だ。

「執事であって、メイドではないでしょ」

「うっ。それはそうだが。メイドは男がやるものではないと思う」

「あら、それは偏見と言うものよ。私は、どんな職業にも男女の差別はないと思うわ。それでもダージリンはメイドは男がやるものでは無いと言うの?」

 薄弱は俯き、ゆっくりと口を開く。

「……すまない。俺が間違ってた明日……え? ダージリン? それってもしかして茶湯の水色は透明度の高い琥珀色をしていてストレートティーに相応しく、刺激的な渋味と世界最高と言われるほどの特徴的な香気を持ち、とくに高度の低い水を使用すると良く香りが出ると言われており、ウバやキーマンと並ぶ三大銘茶のひとつであるあのダージリンか?」

「紅茶の種類って言えば良かったんじゃない? まあ、そのダージリンだけど。別段興味あるってわけじゃないのに説明されても困るわ。はっきり言って時間の無駄だわ」

 明日香は額に右手をやり、首を振る。

「……空が青いな。と俺は、至極当然で当たり前のことを当たり前に思った。雨と曇りと夜の時は、青色ではないが……」

「何で、小説の地の文のようなことを言ったのかしら」

 明日香はキッと薄弱を睨む。

「……グス」

((泣いた!))

「……お姉ちゃん。薄弱泣いちゃったよ」

「……ちょっと、やりすぎたかしら」

「……ちょっとどころじゃねえだろう」

「……その通りだぜ!」

「……うむ、どうするのだ」

「……どうするって言われても困るわ」

「……薄弱が何かブツブツ言ってんだぜ!」

 皆でヒソヒソ小声で話しながら、ふと薄弱の方を見ると、確かに狼牙が言うようにブツブツ言ってる。

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