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プロローグ : 消失と喪失

それは、突然だった。


登校中の小学生が、通勤ラッシュの電車が、


ごみ捨てをしている主婦が、


大地そのものが、


消えた。


分かることは、


被害は東京都全区であるということ。


首都という軸が消えてしまったことで、


全てのインフラが停止。


陸の孤島と化した。


この情報が日本中に行き渡るのに、実に1週間を要した。


2015年10月4日


人を撃ち、死体を漁り、その物資で人を撃つ。


「まずい、リロードしなきゃ」


すると、バタバタと音がした。恐らく1階に居る。


耳を澄まし、僕は静かにSG(ショットガン)を構える。


キィィ…


ドアの開く音がする、近いぞ。


……


「ヤクモ!!宿題は!!」


うるさいやつだ。シカトを決め込む。


しかし、この一瞬のスキが命取りであった。


次に画面を見た時には、僕はデスボックスだった。


なんとも言えない腹立たしさである。


どこにぶつければいいのか分からず、少しだけ机に平手打ちをした。


このまま素直に宿題をするのは心が受け付けないのでふて寝した。


枕に顔を(うず)めて、思い出す。


今日の夜は親だけで出かけるとか言ってたな。


脳の回路が、分かりやすく繋がった。


思わず笑みがこぼれ、枕にもっと顔を埋める。


「行ってらっしゃい」


「おばあちゃんの言うこと聞くのよ。」


「はーい」


もちろん宿題はやってない。


でも、それを(とが)める邪魔者はいない。


やりたい放題である。


毎日こんな生活なら、いいのに。僕はその時そう思った。


一日、三日、一週間…。


両親は二度と戻ってこなかった。


僕は後に、東京へ両親が行ったことを知る。


そして、僕がねだったプレゼントを買いに行ったことも。


2026年10月8日


市橋ヤクモは、埼玉にいた。


「あの、まだっすか?」


「んー?見てわかんないわけ?今食べてるよね?」


佐藤ミコは呆れたように言う。


「そんなんだから、モテないんだわ。」


ヤクモは、気にする素振りすら見せずに携帯をいじっている。


東京消滅から、11年。


各国からの援助により、日本という形を保てていた。


裏を返せば、補助なしでは歩けないほど弱体化していた。


そんな中で民間の企業や組織等が見かねて、元東京都跡地の調査に乗り出した。


ヤクモとミコもその調査員として、派遣されていた。


「おっし、んじゃ行くかぁ」


ヤクモは軽トラに揺られながら、備品の整理を始める。


「ミコさん、シューズ持ってきました?」


「当たり前でしょ。何言ってんの」


「いや、ここにないんですけど。」


「ふーん。」


ヤクモは、それ以上の追求はしなかった。


そうこうしているうちに、元東京都と埼玉の県境にたどり着く。


「やっぱ、何度見ても信じられんなあ。」


そこには、果てしなく広がる大穴があった。


その異常さは、人々の視線を膠着(こうちゃく)させる。


「つかシューズ忘れて、どうするつもりですか。」


「どうするもこうするも…あ。」


ミコは何かを思い出して、軽トラの背後に回る。


「こーれ、忘れてたー。」


手に持っているのは、ボロボロの靴だ。


「お兄のお下がり、汚いから封印してたんだったわ。」


「それ、ちゃんと動くんですか?」


ミコは、それを履くと横にあるボタンをいじる。


「ん、燃料が足りないだけで他はいけそう」


「よくそんな古いタイプのシューズ持ってましたね。手動式とか今だとプレミアですよ」


「お兄のだからね。」


ミコの顔が一瞬曇った気がした。


僕はミコさんのプライベートは何も知らない。


ミコさんにも僕のことは教えてない。


東京消滅以降、行方不明者は約1600万人。


そして、関連の事故も含めると1700万人にも及ぶ。


誰が、どんな心の傷を負っているかわからない。


消滅以降、過干渉は自然と避けられる風潮にあった。


「じゃあ俺、先に行ってますね。」


そういうと、ヤクモは靴のつま先を地面に「コンコン」とした。


すると靴の底から、風が起こりヤクモは浮いていた。


この靴は、世間ではシューズと呼ばれ主に東京跡地の調査に使われる。


元々は、地方の企業が娯楽用に開発が進められていたのだが


2015年東京消失以降に、調査用として本格的に開発されたのが始まりである。


佐藤ミコが履いているのは、初期型で靴の側面部に制御ボタンが付けられており


燃料を必要とするタイプである。


先ほどのヤクモのシューズは、現在流通している一般型で


制御ボタンなどは付いておらず、足の動作によるコントロールが必要とされる。


また、動力は太陽光であり半永久的な運用が可能である。


ヤクモは、器用に宙を舞って下降を始める。


ミコも遅れて、ヤクモについて行く。

シリーズ物です。

元々構想はあったものの、終着点を考えないままに書き進めてしまったので、

何話で終わるかは作者の私も想像がつきません...。

うまくまとめられるといいなって思います。

まだ初期段階なので、不定期の更新にはなってしまいますが

気に入ってもらえると幸いです。

ここまで読んでいただき、感謝します。

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